第三十九話 記憶
胎児の記憶は多分音の記憶だろうか?血液の流れる音、母親と自分の心臓の鼓動、母親の声も聞こえただろう。無響室では人によっては自分の血液の流れる音がものすごく大きく聞こえて怖くなって部屋を飛び出す人がいるそうだ。
耳たぶを手のひらで折って聞いてみると「どくどく」と血液の流れる音が聞こえる。これがリズムの原点かもしれない。“Heart Beat” というではないか。
台所から聞こえる包丁の「とんとんとんとん」お湯の沸く「シュー」お味噌を混ぜる「カシャカシャカシャ」みんなリズムだ。
すごく静かな環境では「サー」とか「ジー」とか聞こえる。本当はずっと聞こえているのに、普段はマスキングされているらしい。
実は人は太古のアメーバーの頃からの記憶を持っているらしいとある方がおっしゃった。
マイルスが子供の頃、みんな寝静まった夜中に波の音が聞こえてきた。海までかなり遠かったけど静かな夜には波音が聞こえてきた。雨の音や風の音、鳥の羽音、草を踏む音。焚火や雷鳴の音、川の流れる音、水滴の落ちる音マイルスはこんな音を使った Healing Musicを作ってみた。
中でも焚火の音は圧巻で、太古からの記憶が刻まれていると思った。
楽曲という意味では形を成さない Healing Music だが音の力という意味では大きい事をマイルスは改めて感じた。
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