第17話新たな旅の幕開け

「おっねがい!しまぁす!」

トニーに頭を無理やり下げられつつ、俺もそれに続いて挨拶をした。


「まあまあ、そんなに頭下げるとかいらないよ!」


「ほらな!トニー、さっさと頭上げろや!」


「お前が言うことじゃねえぞそれ」


「ほら、とりあえず本部を案内するからついてきて!」


「あーい」


にしてもあいつ、身長たっか!


その男の背中を追い、城内へと入っていく。城内の前の広い野原の上では、他の団員たちが魔法の練習をしていた。


「さ、ついた。ここだよ!」


「でっけえー」


レンガか何かで作られた大きな城が空の青さに踏み込んでいる。いいやそれは城じゃない。今見上げているのは、恐らく塔だろう。


「この塔と城内は組織本部兼団員宿舎となっている。ほとんどの団員は毎日ここで寝泊まりをしているというわけだ!ちなみに、何かあったときはもちろんここで泊まることは出来ないから気をつけるんだよ。」


男が人差し指を立て、怪しい顔でそう言った。


「なにか、ってなんですか?」


トニーも俺と同じことをどうやら疑問に思っていたらしい。てか、誰でもそんなこと言われれば怖くもなるし気になる。


「俺たちの目的、それはトリックスターとアサシンの排除だ。」


「えっ!?トリックスター!?」

「アサシンですか!?!?」


「え、なんでそっちに反応すんだよ!」


「そうさ、アサシンだよ。あの、ローカル・サンダーランドが所属するね!」


「いやトニー!そっちも重要かもしれないけどさ、まずはトリックスターをぶっ壊してやりてえよ!」


「君はどっちかって言うとトリックスターなんだね」


「あ、そういえば君たち名前は?…俺はスキャロップス!この組織の案内役の1人だ!」


「トニーです!」


「えっと、グラハム・サンダーランドです」


「おっけー!んじゃ次の場所行くよ!」


「ういっすー」


「返事…!ほらいくぞ!」


なんかトニー大人っぽくなったなぁ。ニュートンやレーファンが居なくなったからかな。…ニュートン、無事で居てくれよ


サササッ


うん?今のなんだ?


城内の廊下、この時間はいつも魔法の練習をしているのか、俺たち以外に誰も廊下を渡るものは居なかった。


とは言っても、俺はまだ団員になったばっかりだ。この時間にも廊下を使っている団員はいるのではないか?でもだとしたら、なんであんなにコソコソと移動してるんだろう。


廊下の曲がり角を黒い素早いものが通っていくのを偶然に発見した。だが、そんな得体の知れないものを追いかけている暇はない。トニーは廊下を全力で走ってスキャロップスについていってる。


「はやく来い!サンダーランド!」


「わかったって。」


 ◆

「ここが、主に集会で使われている教会だ!どうだ?綺麗だろう!」


「ピカピカしてる!」


ニュートンの裁判が行われたあの教会とは違うきらめきを放っていた。


「天井や窓はエメラルドで作られていて、太陽などの光で照らされると、その光が教会中を閃くんだ!」


「かっけえええ!」


下手したらダイヤの図書館よりも豪華なのではないかと思わせる程の輝きをこの教会は表現している。


「とまあ、だいたい説明は終わりだ!何か質問ある?」


そう聞かれると、トニーが思い出したかのように突然教会の真ん中に飾られている写真を指差した。


「あの写真、誰ですか?」


「おお!いい質問だね!あの写真は、このオーガニゼーションの創設者でリーダーの、ヨーゼフ・キャラスフェインガーだ!」


「ひぇー」


教会の真ん中にドカンと目立つ位置に、大きな額縁の中に写真が入れられている。


「しかし、今は生きておられない。トリックスターによって殺されたんだ」


「え?そんな…」


「だからトリックスターを追ってるんですね」


「トニー、敬語じゃなくていいよ。もう仲間なんだから!」


「え?いいの?ありがとう!」


ガチャンッ!


「あ、ビーク!」


俺たちが同時に振り返ると、教会のドアを開けて入ってくる男がいた。今度は比較的小柄な男で、服はスキャロップスと同じのを着ていた。


「よっ、あ、新しい団員かな?よろしく!俺はブロード・ビーク!」


「おっすー。」

「馬鹿っ!」


「こりゃまた賑やかな団員だなwところでスキャロップス…班は決まったか?」


「まだだけど…」


「おいおい、まさか忘れてたってんじゃねえよな?決闘だぜ?早めに班を決めとくことだな!」


「決闘???」


「それじゃあな!」


ビークはさっきの足取りとは違い、楽しそうにスキップをしながらまたドアを開けて教会を飛び出していった。


「なんかあったの?」


「ああ、あったとも。あいつが俺と勝負してえって言ったんだ!戦闘スキルはどっちのが上かってな!」


「それで決闘?」


「それだけではないぞ?勝ったら報酬があるんだよ!この組織の中のどっかに隠されていると言われている数々の伝説や、武器。その一つ、またの名を、天叢雲剣あめのむらくものつるぎ!」


「ああ知ってる!ある国の伝説の剣だっけ?確か、草薙剣くさなぎのつるぎ。」


「トニーすげえな。俺全く知らん…」


「んで…その一緒に戦ってくれる班員が全然見つからなくってよぉ…困ってるんだ。」


「サンダーランド、やるぞ。」


「は?えっ!?」


「サンダーランド、ありがとうな!」


「言ってない言ってない!」

「んじゃ俺もついていく!」


「え?まじ?助かる!それじゃあこれで班員は3人だ!必ず勝つぞーッ!」

「取りに行こう3人で!草薙剣を!」


スキャロップスが天を指差すと、エメラルドの光が閃き、教会中が照らされた。

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