第14話


今日は昨日言っていたとおりにダンジョン協会の訓練場にやってきた。

相変わらず今日も混んでいるな…。


中に入っていつも通りに鈴木さんがいるカウンターへ行く。


「鈴木さん。おはようございます」

「おおー!八神さん!疲れはもう取れましたか?」

「ええ、お陰様で体調はすっかり良くなりましたよ。筋肉痛も治りました」

「それはよかったです!それで今日は何を…?」

「今日はスキルの訓練をしようと思いましてね。今のうちに対策を練らないといけませんから」

「なるほど、確かにそうですね、では訓練場は攻撃メインってことですか?」

「まあ、はい。でもなるべく壊さないようにはしますので」

「ほ、よかった、では思う存分訓練してってください」


ダンジョン協会の地下は空間が広くなる魔法がかけられているのでスキルを訓練することができる。

ちなみにここには何度も言っているのだが本当に馬鹿みたいに広いな。第1階層とほとんど変わらない広さらしいからな。

ここなら思う存分訓練ができる。

まずは



素振り1000回だ。



え、地味じゃないかって?いやいや、ランニングする時もいきなり走るよりも少し歩いてからはしったり、少しずつペースを上げていってるだろう?基礎を疎かにした時点で死ぬからな。それにただ1000回ブンブン振っているわけじゃない。一つ一つの動作を正確に素早く、そして1番重要なのは思いを込めることだ。馬鹿にされるかもしれないがその方が剣を極めている気がするんだ。一つ一つの動作を無駄にせず剣を振っていく。100回を超えたあたりから周囲の音が無となり、500を超えたあたりから世界に自分しかいないような感覚に陥ってきた。

(659、660…)


だがこのままではダメだ。もっと正確に、だが欲張らず、冷静に

ブォン、ブォン、ブォン、ブォン…

俺の頭の中では剣を振る音と、剣を振るカウント数しか聞こえなくなっていた。

息が苦しくなっていくが整えてまた振る。


(998、999、1000…)



終わったと同時に床に座り込んだ。自分の体を見ると汗だくになっている。あらかじめ用意しておいた冷たい水と冷やしたタオルで顔を拭くと、生き返ったかのような感覚になった。


「ああああ〜」


そしてあらかじめ買っておいた500mlの天然水(110円)を少しずつ飲んでいく。


ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ…



胃の中に冷たい水が入り込んでいく感覚がする。体全体に染み渡っていくのを感じた。


「ふうううううう」


これだけで帰りたいと思ってしまうが今回はスキルの訓練をやりにきたのでスキルを強化していく。今日はスキル 『身体強化』を強化していこうと考えている。

『身体強化』のスキルを強化するといっても運動能力を高くしていくというわけではなく、今回は、今まで目を向けてこなかった弱点『身体強化』のスキルの持続力を高めていこうと思う。

『身体強化』はひたすら魔力を使うので魔力切れの心配もあり、長い間使い続けすぎると筋肉繊維が壊れていき筋肉痛や肉離れが起こってしまう。戦闘中に筋肉痛や肉離れが起こりでもしたら死ぬ確率が一気に高くなってしまうので探索者は長い間は使わないようにして、とどめを指すときや急所を狙う時だけ使うといった使い方をしている。なりたての探索者は『身体強化』に頼りすぎて筋肉痛ならまだしも肉離れ、魔力切れで体が動かなくなりそのまま殺されるといったことが多くある。

今回は筋肉痛、肉離れが起きると予想されるのであらかじめ用意しておいた『魔力ポーション』と残っていた『ポーション』を使ってひたすら『身体強化』を行っていく。


はっきりいってさっきの素振りの方が何百倍もいい。だけど強くなるにはそれなりの努力が必要だと学んできたからな…


やりたくないけどやるしかないか




◇◆◇◆◇◆



‥…………………………………。


今、何時間たったんだ?

既に魔力ポーションも回復ポーションもほとんど使い果たし残り両方一本ずつになった。お腹はタプタプと音がしており気を抜けば吐きそうだ。何回も筋肉繊維がちぎれる感覚がし、肉離れも起こり激痛が何度も走ったが、Sランクまで上がってきたプライドで耐え、ポーションをがぶ飲みしていったことで筋肉繊維が修復されて太くなっていくのを感じる。魔力も回復していくのを感じるが飲むという行為が嫌になるのは久しぶりだな。

あと一本だ…!!


ゴク ゴク   ゴク


「おぇ、うっぷ…」


あ〜苦しい。でもこれで終わりだ。


また意識を『身体強化』に向けていく。


苦しすぎて一秒一秒が一分にも一時間に感じていく。

(そろそろ魔力切れを起こすな)


魔力が切れたら終わりだ。


あと30秒ぐらいか。


(まだあと20秒もあるのか)


もうたったか?


(あと10秒ぐらいか)


すると突然頭がくらっとして地面に倒れ込んだ。


「うっ、や…やっと終わった」



改めて自分の体を確認してみるとやはり前よりも筋肉が太く、固くなっているのを感じる。それに若干だが『身体強化』のスキルの持続力も増えてきていた。だがおすすめはしない。はっきりいって狂気の沙汰じゃない。我ながらよくできたなと思った。


「ふう、これで今日は休んで明日はまたダンジョンにいって確認だな」


あ、やばい。吐きそう




◇◆◇◆◇◆




……これはすごい。



後日、『身体強化』のスキルがどれくらい長く持続させることが出来るかを行ったが以前よりも格段に伸びている。


「「キシャーー!!!」」



51階層のボス 『キングオーク』の雑兵である『ハイオーク』を蹴散らしていく。キングオークは前に戦った『レッドドラゴン』ほどの強さではないので油断しなければ負けないのだが、雑兵であるハイオークが100体ほどいるのでめんどくさい相手なのだ。


ボスを倒せば『ハイオーク』達は消滅するのでなるべくボスを早く倒していたが今回は『身体強化』のスキルの持続力の成長を確かめているので『ハイオーク』も相手しているのだ。

次々と血走った目で殺しにかかってくる『ハイオーク』を顔面に蹴りを喰らわして頭を吹き飛ばしたり『身体強化』で一瞬で近づいては足を掴んで振り回したりしている。


「ゴガア!」

「ゴキュ!」

「ゴハア!」


いつもならばここら辺で魔力がピンチになっていた頃だがまだまだ魔力が残っていて体に異常もない。


「ニンゲン!シネ!」


半分ほど『ハイオーク』を蹴散らしたところで玉座に踏ん反り返っていた『キングオーク』が側にいた『オークジュネラル』と共に突っ込んできた。『キングオーク』は雷を見に纏い、目にも止まらぬ速さで突進してき、『オークジュネラル』は呪文の説唱をしてきた。

『オークキング』の突進を右に避けた先にはおそらく『オークジュネラル』が説唱したであろうオーク特有のユニーク魔法が飛んできた。


「『ソルスチール』」


「『桜吹雪』」


『ジュネラルオーク』が放った魔法『ソルスチール』は読んで字の如く魂を奪うという魔法だ。といっても10数秒意識がなくなるだけなのだがその間にやられている。つまり食らったらほぼ終わりなのだ。だが前にもいったと思うが魔法は魔法で打ち消せる。


「ナニ?!」

「…?!」

「少しは楽しめたぞ、お礼に死ね」


横に一線目にも止まらぬ速さで両方ともの首を切った。



「な………ニガ」

「……」


切られた瞬間はなんともなかったが『オークキング』と『オークジュネラル』の首がずれていき、ズドオオンという音を上げて首が落ちると共に体が倒れていき消滅した。



さてと、『鑑定』




『オークジュネラルの皮』

オークジュネラルを倒すとドロップする皮。

『ハイオーク』よりも頑丈で並の鍛治氏では加工することができない。


加工した時の効果 一回だけ致死の攻撃が来た時に身代わりになってくれる。所有者の体力を回復していく。精神が安定していく。



『オークジュネラルの睾丸』

オークジュネラルを討伐した時にドロップする。金持ちの家には必ずあるほど精力材で人気である。また、少し高いが栄養ドリンクにもごく少々成分が入っていて飲むと2日は元気になるらしい。



『オークジュネラルの魔剣』

オークジュネラルを倒すと一定確率で手に入る魔剣。元々は遥か昔に連れ去ってきた人間の鍛治氏が作り出した普通の剣だったがその所有者の憎しみが募っていき魔剣になった。

効果  ダメージを与えたら確定で流血する。

    ダメージを与えると相手の精神が弱いと崩壊、多少強くても発狂する。


    名前は自分で命名可能。




『オークキングの冠』

オークキングを討伐するとドロップする冠。純金でできており宝石が散りばめられており希少価値は高いが効果は何もない。


『オークキングの皮』

オークキングを討伐するとドロップする皮。

加工した防具では並の攻撃では気付けることはできないが火魔法には弱い。


加工した時の効果  『オークキング』より弱いモンスターの動きを一瞬だけ止めることができる。

精神を奮い立たせる。




え?これだけ?キングなのにこれだけ?



地上に出て食堂いこ、

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