第12話
会長と会うのは久しぶりだな。
変わっては無いと思うが。
俺 八神大地は『Arrogance』の情報を伝えるために、ダンジョン協会にやってきていた。
今は応接室で、ダンジョン協会の会長を待っている。
しばらくした後、2人の気配がした。
1人は鈴木さん。
もう1人は、まぁあの人だろうな。
「八神さん。開けますよ」
扉が開かれ現れたのは鈴木さんと、左腕がなく、右目が無い強者特有のオーラを放っているスーツ姿の爺さんが入ってきた。
「鈴木から聞いた時は驚いたぞ。まさか貴様がこの場所に来るとはな。久しぶりだな、
『修羅』」
「ああ、………会長も変わってなくてよかったです」
ダンジョン協会の会長である『西園寺金時』だ。
名前だけでも只者では無いとわかるのだが、
それもそのはず、長年日本のダンジョンを攻略し続けてきた第一線の実力者だ。
Sランクの中でも一目置かれる存在だったがモンスターとの死闘で左腕と右目を失くしたらしい。世界各国が治療を試みたが何かの呪いにかかっていることがわかり、直すことができなかったため探索者を引退し、前から勧誘されていたダンジョン協会の会長になったわけだ。
「早速で悪いがそのモンスターについて報告させてほしい」
「はい、まずは………」
俺は、ダンジョンの中層に行って『Arrogance』と戦ったこと、そして、『Arrogance』にやられた人たちのこと。
一応自分の左腕が吹き飛ばされたことも話した。
「…なるほどな。しかし、『Arrogance』か…、ドイツ語で傲慢という意味だったか?」
「そうです」
「そう、七つの大罪の一つである傲慢。やはり、『奴』とも関わっているのか…」
「奴とは?」
そう聞くと、西園寺は左腕を憎々しげに見ながら口を開いた。
「…かつての俺ですら退かせることしかできなかった正真正銘の化け物だ。奴はその時『Greed』と名乗っていた。おそらくお前と戦った奴も」
「…同じ七つの大罪の『傲慢』、と言ったところでしょうかね」
「……ハア。やってられんわ」
そういうと会長は紙タバコを出して火をつけて吸い始めた。辺りに煙の匂いが広がる。
「だが、奴は自分こそが最狂と言っていたな。最も強いじゃなくて最も狂っているのほうだぞ?でも二番目に強いとは言っていた。もしかしたら他の奴らはそこまで強く無いのか?いや、お前から左腕を持っていける奴がいる時点で油断はできないな」
「まぁ現時点で注意すべき相手は『Arrogance』と『Greed』ですかね」
「そうだ。そして、『Arrogance』の固有スキル『傲慢』。相手のスキルをコピーできる、か。確か『Greed』は相手の力を奪う能力だ。
実際に俺の左腕と右目は奴に奪われたままだからな」
「でもまあ一応分身体を倒したのでしばらくは出てこないと思いますよ」
「…まぁそうだな。まぁ今回はよくやった。生きて帰ってきただけでもすごいぞ。しばらくはゆっくり休め」
「…まぁ流石にゆっくりしますよ。今さら副作用が来たので」
そういうと俺は震えている手を見せた。
「……ああ、リミッター解除か。そこまでも使わせたのか。ますます厄介だな」
「課題は山積みですね」
「本当に、胃に穴が開きそうだ」
ハア、と俺と会長は同時に溜息を吐いたのだった。
◇◆◇◆◇◆
「また情報提供をよろしく頼む」
「もちろんです。会長も体調管理はしっかりしてくださいね」
「善処する」
こうして、俺は会長と別れ、応接室を出た。
「あ!八神さん!終わりましたか?」
扉を開けたら鈴木さんが待っていた。おそらく俺が話終わるまで待っていたのだろう。
受付に行くまでの間、俺と鈴木さんは談笑し続けた。
「にしても左腕大丈夫ですか?吹き飛んだって聞きましたけど」
「…まぁ事前に用意してあった『ハイポーション』を使って再生させました。流石に治癒能力では治せませんから」
「まぁ確かにそういうスキルを持っているなら別ですけど色々とデメリットも多いですからね」
そう、一時期俺も再生系のスキルを取ろうか迷っていた時期があった。しかし、メリットばかりを注視しすぎてデメリットを見ていなかったのだ。その時は鈴木さんに紹介したが
「え?再生系のスキル?いや、絶対やめた方がいいですよ」
と、デメリットも教えてくれたので今でも感謝している。
ちなみにどういうデメリットかというと
・中途半端に再生させると不恰好になる
・再生させるときに使う魔力が半端じゃない
と言ったように高ランク探索者ほど使わないスキルだ。何故使わないかって?ダンジョンからドロップされるポーションがあるからだ。値段は張るが自分の命に関わることをやっているので安い方だ。
寧ろ、高ランクの探索者、熟練の探索者ほどポーションの重要性を理解しているので理解していない人から死んでいく。
「まぁ、あとは八神さんが再生系のスキルを使うと多分魔力が枯渇するんですよね」
俺の戦い方は大太刀を使った近接戦闘なのだが魔力を中心に戦っているので再生に魔力を使ったら枯渇して動けなくなってしまう恐れもあるから再生系のスキルは俺には不向きだった。
「今日はゆっくりと休んでくださいね!」
「はい、今度また食べに行きましょう!ではまた」
「はい、待ってます」
まずはたっぷりと寝て、ダンジョンでスキルの強化をしていくか。
あ、明日大学で小テストあるじゃん。
……田中に後で過去問送ってもらお。一応毎年度似てる問題らしいから。
『Arrogance』といい小テストといい課題が山積みだ。
—————————
お待たせしました。待たせてしまい申し訳ございません!
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また、星が来たら3日以内に次話投稿します。
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