短編小説集 共同作品

るり

「 これからも 」

【設定】


  沙柚 (サユ)

  凌介 (リョウスケ)


中学時代

 沙柚は凌介が好きだった

 凌介は沙柚が若干苦手だった


同窓会

 沙柚は今でも凌介が好き

 凌介は沙柚に一目惚れ



START!





中学の同窓会。


懐かしい顔がたくさん集まる。


そこにはずっと好きな君もいた。


「沙柚~っ!久しぶりっ!」


そう言って後ろから友人が声をかけてきた。


「久しぶりっ!元気してた~?」


そう言って、思い出話や最近の話に花を咲かせる。


周りも仲が良かった子同士で集まってそれぞれが楽しげに話す。


5年ぶりに合う仲間はあの頃より少し大人びていて、雰囲気が変わっている人もいた。


そんな中、私の視線は彼に惹きつけられる。


私がこの5年、ずっと好きでいた彼。


彼のために、この5年間垢抜けようと努力してきた。


彼も、中学時代の面影を残しながらも、顔が大人びていた。


それでも、あの頃と変わらない笑顔、話し方、仕草、そのすべてが当時の私の気持ちを思い出させる。








5年前、私は凌介に恋をしていた。


だけど、私じゃ凌介に釣り合わない。


そう自覚していた。


きっと、凌介は私のことを好きにはならない。


心の何処かでそう思っていた。







中学の同窓会。


懐かしいメンツで集まり、思い出話をする


そんな中、中学時代に本当にいたのか、というぐらい綺麗な人がいた。


彼女を一度みてしまえば、自分の目は他のものを捉えることもなく、惹きつけられてしまう。


友人の話を聞くのもままならず、席を外した。


そして、彼女により近いところへ移動した。






「沙柚ほんと変わったね~っ!」


「だよね、めっちゃ綺麗になった!」


「ほんとに沙柚か~?笑」


友人に中学時代と比べられ、軽くいじられながらも褒められる。


これまでの5年間の努力が少しだけ報われた気がした。


そんな事を話していると、例の彼がこちらに近い席へ来た。


更に見惚れてしまう。






彼女の友人等との会話を聞いている限り、

あの綺麗だと思った人は沙柚らしい。


俺は正直、沙柚のことは何とも…、いや苦手だった。


なんとなくだが、苦手意識を持っていた。


だが、今となっては、垢抜けて、以前より大人っぽく、綺麗になっている。


そんな沙柚に俺はきっと一目惚れをしてしまったのだろう。


あんなに苦手意識があった沙柚にここまで一目惚れをしてしまうなんて思ってもいなかった。


きっと、5年前では考えられなかっただろう。


そんな事を考えながら彼女のことを見つめていると、視線に気づいたのか、こちらに振り向いて少しだけ微笑んだ。


その姿、表情に、俺は堕とされてしまったようだ。







友人と話しているとどこからか視線が痛いと感じる。


振り返ってみると、彼が私のことを見つめていた。


私は彼に向かって微笑んだ。


すると、彼は少し照れたような表情になった。


それを見て私は少しの期待をもつ。


" 好きになってくれるんじゃないか "


ってね。


叶うことのない期待が膨らんでいく。


そして私は、友達との話を抜け、彼に近付いた。


「凌介くん、だよね?久しぶり」







俺は彼女に微笑まれて、少しだけほんの少しだけ、照れてしまった。


そんなことを思っていると、彼女が友達との話を抜け、こちらへ向かってきた。


そして俺は彼女に声をかけられた。


「凌介くんだよね?久しぶり」


その言葉に一瞬驚いてしまった。


まさか、自分のことを覚えててくれているなんて思ってもいなかった。


中学時代より綺麗になった姿に見惚れて、つい返そうと思っていた言葉を忘れてしまう。


「凌介くん?あれ、違ったかな…、」


と困惑している彼女を見て、慌てて言葉を返す。


「いや、凌介であってる。久しぶりだね」


そういうと、彼女はほっとした表情を見せる。


「合ってて良かった。なんか、凌介くんかっこよくなった?」


そう聞かれますます気持ちが高ぶる。


「そうかな?多分、沙柚さんのほうが綺麗になってる。」


そう言うと彼女は少し頬を赤らめた。


「ありがと。頑張ったかいがあったかも、」


最後の方はあまり聞こえなかったが、彼女の反応を見る限り嬉しそうだった。






「沙柚さんのほうが綺麗になってる」


その一言だけでも、彼から言われるだけでも、私の気持ちは高ぶっていく。


彼に認められただけでも満足だ。


自分の努力を好きな人に認めてもらえるだけでもどれだけ嬉しいことだろう。


こんな一言だけでも、彼に対する好きの気持ちが高まる。


やっぱり、まだ好きなんだな、と自分でも改めて自覚する。


彼は、私のことをどう思っているのだろうか


叶うことなら、好きになってほしい。








その後、彼女と色々話していれば、同窓会も終りが近づいた。


「もうすぐ終わっちゃうね、なんか短く感じちゃった」


そう言って少し寂しげに話す彼女。


「そうだね。話してたらすごい短く感じる。」


きっと俺は、彼女と話していることが一番楽しかったのだろう。


そして俺は、彼女に言った。


「あのさ、この後時間ある?」








「あのさ、この後時間ある?」


突然彼に聞かれた。


「うん、大丈夫だよ」


特に予定もなかったため、そう答えた。


「じゃあさ、ちょっと話さない?」


私は彼と話せるだけでも嬉しかった。


だから、私は彼の問いにしっかりと頷いた。


頷いた私を見て、彼は何かを決心したような表情になった。







同窓会は終わり、今俺は彼女と二人きりだ。


正直、今の沙柚に惚れてしまった。


当たって砕けろの精神で自分の気持ちを伝えようと思っている。


今は、同窓会で話していたことの続きを話している。


いつ伝えるかタイミングを見計らっている。


そして、話が切れたとき


「あのさ、沙柚さん、俺さ、」


緊張もあって少し途切れながらも話し出す。


「うん」


と、彼女は話を聞こうとしてくれる。


「俺さ、今日の沙柚さん見て、一目惚れした。」


そう言うと彼女は驚いた。







彼から突然の告白。


私はすごく驚いた。


だって、まさか彼が私に一目惚れしたなんて。


叶うはずがないと思っていたものが今叶うものになろうとしている


でも、よく考えてみる。


凌介くんはそう言うけど、本当にいいのだろうか。


自分より良い人はもっと沢山いるんじゃないか。


そう思って彼に聞いてみる。


「凌介くんは、本当にそれでいいの?」


そう聞くと彼はなんでそんなことを聞くのとでも言いたそうな顔で私を見る。


「凌介くんには私よりもっと良い人がいると想う。」


そう言うと彼は、


「沙柚さんだからいいのかも。」


そう言った。


私はそう言われたのが不思議でしばらく脳内で考えた。


「中学の時は、沙柚さんのこと、なんとも思わなかった。逆に、苦手意識持っていたかな。」


そう言われ、私は目を逸らす。


やっぱり私じゃ、とマイナスな思考が働く。


「でもさ、今日再会して、この5年間ですごく変わった。俺が、苦手意識を持っていた頃とは全く違う。今まで努力したんだなってすごい思った。」


マイナスな思考が一気に変わるような言葉。


今までの努力が無駄ではなかったんだと感じる。


「だからこそ、沙柚さんがいいと思った。」


そんな彼の真っ直ぐな言葉に私は心を動かされる。


「私でいいの?」


まだ心の何処かで疑うような気持ちがある。


だけど、


「沙柚さんだからいいの。」


彼のその言葉に安心する。


「ありがとう」


そう言って私は微笑む。


「だからさ、よかったら俺と」


少しためてから


「付き合ってくれませんか」


彼は私にそう言ってくれた。







あの日、沙柚に告白してから俺の隣にはずっと沙柚がいる。


俺の告白に対し、彼女は


「はい、よろしくお願いします」


と微笑みながら答えてくれた。


中学時代にはなんとも思ってもいなかった相手と、ここまでの関係になるとは思っていなかった。


あとから判明したのが、彼女はずっと俺のことが好きだったそう。








一つの努力が実を結び、私達の関係はまた動き始めた。


あのときの気持ちは長い年月を経て実った。


私達の未来はまだまだこれから。


たくさん喧嘩して、たくさん泣いて、そんなことを乗り越えるからこそきっと、いい関係になる。


あのときの思いを更に大きく、長く続くように







     『これからも』

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