そういえば
遠隔クソアマを圧倒的実力で黙らせた次の日から遠隔クソアマは俺の隣に座って打つ際にその台について調べてから座るようになった。前回のクソ台との対戦がよっぽど応えたのであろう。かわいそうに。
遠隔クソアマはやはりというか、並以上の台だとバグった引きでアホみたいにメダルを出してドル箱にカチモリをしていた。15回ぐらい並び打ちしているが、その中でフリーズを5回も引いている。まじで遠隔だろ。
☆☆☆☆☆☆
俺が遠隔クソアマに勝った日から一週間ほど後に、いつも通り仕事終わりにダシマッセ倶楽部に向かうと、やはりいつものように遠隔クソアマがカチモリしたドル箱を数段積んでいた。が、何か怯えてるような様子である。近づいて様子を見に行こうとすると。
ガァン!!!
遠隔クソアマの台の隣から鈍い打撃音が聞こえた。そこにはいかにも現場で働いていますよって感じの若いにいちゃんが台に向けて拳を突き立てていた。
「クソがっ!!」
その後そいつはポケットからタバコを取り出してふかし始めた。確かこのホールは電子タバコ以外は禁止だったはずだが。とりあえず店員を呼ぼう。俺がその場から一旦離れ、店員を呼ぼうとすると、俺の裾をグッとと引っ張られる感じがした。引っ張られる方向を見ると遠隔クソアマが俺の方を向きながら助けを求むような顔をしていた。
なんやかんやで俺も男だし逃げたらまじで軽蔑されそうだからここは俺が一旦注意するとしよう。俺は遠隔クソアマの台の呼び出しボタンを押した後で若いにいちゃんの肩を叩いた。
「ここ、紙タバコNGだし、台パンするのやめたほうがいいですよ。」
「あぁ!?てめえ調子に乗ってんじゃねえぞ!」
沸点低すぎだろ。
「ですけど、ルールはルールですので。」
「確かにそうかも知れねえな。俺が悪かったよ。」
若いにいちゃんは手を差し出してきた。やはり話せばわかるのか、俺も右手を差し出そうとしたその時、俺の手にタバコの吸い殻を擦り付けてきた。
「あつっ!!?」
俺は熱さに驚いた束の間、腹に鈍い衝撃が走った。俺の腹には若いにいちゃんの右足がめり込んでいた。
「グッ。」
腹を抑えて思わず引き下がる。晩飯食ってなくてよかった。食ってたら多分吐いてた。若いにいちゃんはすぐさま右腕を振り上げ、追撃しようとしてくる。やべえかも。
「お客さん!!何してるんですか!!」
痛みに我慢しようとした瞬間数人の店員が若いにいちゃんを取り囲み、押さえ込んだ。
「お兄さん、大丈夫ですか?すみません、すぐに助けに行けなくて、1人じゃ怖かったもので。かっこよかったですよ。」
前を見ると、若いアイドル店員がいるわけもなく、50歳ぐらいの可愛らしい感じのおばちゃんが、俺のことを褒めてくれていた。若い店員なんていないよ。過疎店だもん。
その後若いにいちゃんは出禁になり、俺は、大事にしたくないので、警察沙汰にはせず、店長が朝から収穫したという野菜を手に入れる事で一件落着となった。
遠隔クソアマはというと、自分を助けたせいでこうなったのではないかと、俺にぶんぶん頭を下げていたが、焼肉を奢ることでチャラということになり、俺を無理やり自身の車に乗せ、焼肉屋へと向かっていった。
☆☆☆
ジュー ジュー ジュー
肉は好きである。勝利の味がするから。パチンカーは爆勝ちした際には大体豪遊する。トータルで負けていたとしてもだ、ある人は焼肉をくらい、ある人は寿司を食う。またある人は繁華街へ向かい、しっぽりとする。俺の場合は肉が好きなため勝った際には焼き肉に向かうため、体が勝利の味として覚えている。
遠隔クソアマはというと、ビールをアホみたいに飲んでいた。よほど酒が好きなのだろうか、俺はというと明日仕事があるため、烏龍茶をちびちび飲んでいる。とはいえ、平日の夜にこのペースで飲んでこいつは大丈夫なのだろうか?
「おい、明日仕事は大丈夫なのか?」
遠隔クソアマは親指をグッと立てて財布から紙切れを取り出した。
ビッッ!
そしてこちらに向かってフリスビーの要領で投げた。危うく顔に当たるところだったがなんとか受け止める。これが目押しの力である。
「うわっと!なんだよあぶねえなあ。てか、なに笑ってんだよ。」
俺の反応をみてゲラゲラ笑う遠隔クソアマの態度に俺は少々イラつきながらも、紙を見てみた。
「ホワイトカンパニー 副社長 柊 暦っ!!!?だって!?」
ホワイトカンパニーというと、日本一ホワイトな会社でテレワークかつ、年間休日がとんでもない日数であるにも関わらず、高い給料、これは社員がえげつないほど優秀なため、回っているらしく、日本一入りたい会社と言われている。また、同時にその高い競争倍率から日本一入りにくい会社とも言われている。そこの副社長ともなればもしかしたらとんでもないやつなんじゃ・・・。
遠隔クソアマの方を見ているとドヤ顔で頭をトントンしている。確かになんだか他のやつとは違う雰囲気を醸し出している気がした。
まあこいつは金持ちだろうからどんだけ高いもんくっても大丈夫だろう。ドヤ顔してるの腹立つし高いやつ食いまくろ。
俺はタッチパネルで超特上牛カルビを3人前頼んだ。それを焼いて食うと、口の中でとろけた。めちゃくちゃ美味い。
遠隔クソアマはビールを飲みながら高い肉を食う俺を何故か嬉しそうに見ていた。
「お前はなんか食わないのか?」
遠隔クソアマは嬉しそうな顔をしていたのに何故かムッとして名刺を指差した。
「どうしたんだよ。」
遠隔クソアマは再び名刺の自分の名前の欄をトントンと指差した。
「柊さん?」
遠隔クソアマは首を振る
「暦さん?」
遠隔クソアマは嬉しそうな顔でコクコクと頷いたそしてビールのジャッキを手に取りこちらの烏龍茶にガンと当ててから飲み干した。
「なんだよ。」
その後ベロベロによった遠隔クソアマ、いや、暦にしなだれかかられながら店を後にした。料金は俺の財布から出しておいた。奢りって言ったのに。ちなみに代金払わん3万を超していた。あのカルビが高かったのであろう。痛い出費である。
その後タクシーを呼び出して暦をのせようとすると、離れたくないといってジタバタ抵抗していたが、無理矢理乗せておれもパチンコ屋まで行き、タクシーで帰ることにした。
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