クソ台の貫禄

 ついに遠隔クソアマとクソ台であるリブイン奈落との対決が始まった。開始して3G遠隔クソアマは強レア役である奈落目を引き、当たるチャンスであるチャンスゾーンの前兆に差し掛かっている。


 (やっぱりこいつの引きはバグってやがる。)


 その後さも当然というようにチャンスゾーンに当選し、40パーで当たるという状況まで来た。遠隔クソアマは何が起こっているか余りわかっていない様子だったが、とりあえず俺に台を見るように指を刺していた。一方俺は見事2回目の当たりを手に入れて順調に出玉を伸ばしている所だ。


 「このチャンスゾーンは40パーだしお前だったら当てれるだろう。リプレイがチャンスだぞ。」


 俺が遠隔クソアマに状況を説明すると、遠隔クソアマは自身の腕をバシバシと叩き自信満々という顔をした。


 

 「レバーで砲撃を放て!!!!でデュデュデューン!!」


 やはりというべきか遠隔クソアマは大当たりを仕留めた。ゲーム数を見るとたった45ゲームだった。


 「・・・。」


 遠隔クソアマは誇らしげな顔をしながらゲーム数を指差しこちらを見ていた。流石のヒキである。


 「なかなかやるじゃねーか!じゃあ後は伸ばすだけだな!今日は一緒に勝とうぜ!」


 遠隔クソアマは珍しく自分を褒めている俺に一瞬びっくりしたが、凛々しい顔でコクコクと頷いた。


 数十分後・・・


 遠隔クソアマは唖然とした顔をしていた。リザルトに出ていたのは265枚の文字、つまりしょぼい連チャン、シャボ連、ゴミである。


 そう、このリブイン奈落めちゃくちゃ継続しにくいのだ。ラッシュ中にポイントを1000ポイント貯めれば継続するのだが、それがまじでたまらない、一応ポイントを上乗せする特化ゾーンもあるにはあるが、なかなか入らないし、入ってもポイントがそれほど入らない。これは、このスロットの天井を浅くし、マイルドにしてしまったがための弊害である。

 遠隔クソアマはバグった引きで強レア役を引きまくっていたが、煩わしい連続演出が出るだけで継続をすることはなかった。


 恐らく遠隔クソアマはこんなショボ連をしたことがなかったのだろう。数秒ぐらい唖然とした顔を続けたままだった。


 「お疲れさん。まあ、お前の分は俺が伸ばしてやるよ笑」


 一方俺の台は目立った展開はないものの、ここぞと言う時にレア役を引くことができたため、順調にモンスター達を狩ることができ、表記2000枚にまで到達していた。後もう少しで完走だ。


 遠隔クソアマは俺の方を向きムッとした顔をして自身の台で遊戯を再開した。その時、


 プチュン!!


 遠隔クソアマの台が突如フリーズしてプレミアキャラである主人公の母のリイザが現れ、最初に上乗せをした状態からラッシュが始まることが確定した。確率74000分の1だぞ、なんでバグった引きだ。


 遠隔クソアマは何が起こったのかわからない様子だったが、多分エグいやつを引いたことが分かっていたようで、ドヤ顔をしてボーナス確定の画面のまま離席をした。いわゆるドヤ離席ってやつだ。他の客にうざがられるやつだ。二度とすんなハゲ。


 数分後遠隔クソアマが戻ってきてこの前と同じようにエナジードリンクと水を差し出してきた。こいつは自分がめちゃくちゃいいトリガーを引くとよくジュースを奢ってくれる。ありがたいが腹が立つので複雑な気持ちである。


 「ありがとう、今度こそは伸ばそうぜ。」


 俺はエナジードリンクを受け取り、遠隔クソアマがドヤ顔をしながら頷いている様子を見届けた後に自分の台に戻った。


 しばらくたった後、またもや遠隔クソアマは唖然とした顔をしていた。遠隔クソアマの画面を見て見るとそこにはリザルト画面に書かれている564という数字があった。そう、この台はクソ台であるため、フリーズを引いてラッシュを有利に進める恩恵を手に入れても元がゴミなのでろくにメダルが出ないのだ。さすがクソ台、貫禄が違う。


 「お疲れさん笑俺の画面見て笑じゃあな。」


 遠隔クソアマと同じタイミングでラッシュが終わった俺の画面には虹色の文字で3400と書かれた数字があり、馬鹿出ししていたことを示していた。俺は遠隔クソアマに見せつけるようにカチモリをして店員を呼んだ。


 (いやはや投資3000円で回収が68000円とはこれは普通に勝ちだな。)


 多めの特殊景品を受け取った俺は換金所に向かうべく階段を登ろうとした。


 ドンッ!!!


 直後背中に軽い衝撃が走った。後ろを見て見ると遠隔クソアマが少ない特殊景品を持ちながら頭突きしてきていた。


 「なんでだよ、お前の引きが弱いんじゃないか?俺に当たるな。」


 遠隔クソアマはムスッとした顔で自身の携帯を見せつけた。そこにはリブイン奈落に対する散々な評価の数々が載せられているサイトが表されていた。レビューの☆の平均は5個中驚異の1.3個だ。


 「台のことを知らないお前が悪い勝ったからいいやんけ。出玉の勝負は俺の勝ちだ。お疲れさん。」


 遠隔クソアマは怒りと悔しい感情が混ざった顔をしている。再び俺に向かって頭突きをしてくる。


 ドンッ!!


 「いてえ!」


 とはいえ。やっと勝つことができた。遠隔クソアマに。ありがとうリブイン奈落お前がクソ台で助かった。


 その後遠隔クソアマの攻撃を回避しながら換金所での換金を終えた俺は車に乗り帰ろうとしたが、袖をクイクイと引っ張られた。


 「ん?」


 後ろを見るとやはり遠隔クソアマでパチンコ屋の前に出ているホットドックの屋台を指差していた。


 「奢れってことか?」


 遠隔クソアマは当然と言った顔でコクコクと頷いていた。頭突きを喰らわせた相手に飯を奢らせるとはなんという暴虐無尽具合だ、とはいえ俺も小腹が空いている。


 「まあ勝ったし奢ってやるよ。」


 遠隔クソアマはムフーと満足げな顔をしてそのまま袖を引きながら屋台に歩いていった。


 「はいいらっしゃい。なにが欲しいですか?」


 「チーズドッグひとつと、お前は?」


 遠隔クソアマはメニュー表にあるホットドッグを指差しコンコンと叩いた。

 

 「あとホットドッグひとつお願いします。」


 「はいよ。600円ね。」


 「ありがとうございます。」


 俺はチーズドッグを受け取った。遠隔クソアマも店主からホットドッグをまるで自分が買ったかのように貰っていた。まあいいけど。


 チーズドッグを一口食べてみると。まあまあ美味かった。まあまあパチンコ屋の屋台の味って感じだ。


 「うまいか?」


 遠隔クソアマもなんともいえない普通の顔をしている。その後俺のチーズドッグを奪い取り口に入れ半分ほど頬張っていった。


 「あっ!てめえまじでふざけんな返せ!」


 チーズドッグを遠隔クソアマから奪い取った俺はお返しに遠隔クソアマのホットドッグを奪おうとしたが、もうすでになくなっていた。なんていう早食いだ。遠隔クソアマはチーズドッグをモゴモゴ頬張りながら満足そうな顔をしている。


 「てか、それ俺の口ついてるけどそう言うの大丈夫な感じ?」


 遠隔クソアマの顔は特に変わらず無表情でチーズドッグを頬張りながらコクコクと頷いた。


 俺が恥ずかしいことを言ったみたいで微妙な空気になってしまった。そういやこいつの顔よく見ると整っていて綺麗だよな・・・。なんやかんやで俺のこと気にかけてくれるし感情も案外豊かでいい奴なのかも。


 チーズドッグを飲み込んだ遠隔クソアマはチーズドッグとホットドッグの串を俺のポケットにぶち込んでダッシュで帰って行った。やはり遠隔クソアマは遠隔クソアマだった。さっきの自分が考えていたことを無かったことにしたい。


 「お前まじでふざけんな!!」


 イタズラが成功して子供のような笑顔をした遠目からみた遠隔クソアマの顔は夕方のせいか少しオレンジ色になっていた気がした。


 

 


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 


 

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