第10話 松本いちるという人間

☆市原祐大(いちはらゆうだい)サイド☆


許嫁がどうのこうのとの話にはなっているが。

どっちにせよ勉強はしなくてはならない。

思いながら俺は隙間時間で高校にて勉強をしていると「祐大!」と声がした。

顔を上げて俺はジト目になる。


「お前煩いぞ。どうしたんだ。いちる」

「そうだね!このラノベ面白いんやで!」

「...お前な。俺はラノベもそうだが今は勉強...」

「勉強ばっかりじゃつまんないでしょ」

「...」


コイツ。

思いながらいちるを見る。

松本いちるとは友人であり...こうしてクラスメイトである。

俺は苦笑いを浮かべながらいちるを見る。

全くこの野郎め。


「天才なお前とは違うっての」

「天才って。私だって本を読んでいるよ?」

「アホかテメェは!そんなんで成績優秀とか言うなら全国の高校生に謝れ!失礼だろ!」

「私は失礼とか思ってませーん」

「...この野郎」


そう。

何はともあれ松本いちるは天才だ。

どこが天才かといえば。


総合得点が平均の上の上をいっている。

学年1位である。

俺は必死に勉強して学年10位だ。


そんな彼女にある日、聞いてみた事がある。

「勉強法は?」と。

よほど勉強しているのだろうと思ったのが運の尽きだった。

これは高校1年生の時の話だけど。


『勉強法?食って寝て教科書を捲る』


そう言われたのが今でも忘れられない。

正直そんなもんで学年1位とかが信じられなかった。

だから俺はいつかいちるに勝つつもりで勉強をやってきて早1年6カ月。

勝ち目は何時も無かった。


「まあまあ。君はそんなのでも優秀じゃん」

「お前に言われたくない...最悪だ」

「まあ...勝たなくとも私は...」

「...?...何だよ」

「何でもないよ。祐大。あはは」


赤くなって俺を見ながら後頭部を掻く少女。

正直この少女は美少女である。

だからいちいちの行動が華になる。


困ったもんだ。

そう思いながら居るとクラスメイトが「また夫婦喧嘩か?」とツッコミを入れた。

俺は「違うわアホンダラ」とツッコミを入れる。


「全くな。...んで何でお前は赤面しているんだよ」

「え!?そ、そんな事はないよ!?」

「熱でも有るのか?」

「な、ないよ!?」

「うーぬ?」


俺は「?」を浮かべながらいちるを見る。

それから椅子に腰掛けた。

「俺は勉強すっから」と言いながら。

するといちるは「教えたげようか?」と言ってくる。

余裕だなコイツ。


「なら関数教えてくれや」

「そうだね。...んじゃ先ずはこっちからだね」

「...そうだな。...ん!?」


横にいちるが来た。

そして鼻腔をくすぐる女子の香りってか香水をつけている!?

俺は真っ赤になりながら「お前...こ、香水着けた?」と聞いてみる。

すると「ふぁ?それは校則で禁止でしょ?あ、シャンプー変えた」とニコッとするいちる。

俺は「そ、そうか」と心臓を落ち着かせた。


「え。もしかして私、臭い!?」

「い、いや。すまん。...少しだけ良い香りだと思った」

「ふぁ?METOO案件?」

「何でそうなるんだよ」

「だってせくはらっぽい」

「お前な!」

「...まあ祐大が嫌じゃ無いなら」

「あ?何つった」

「何でもない。せくはら」


何だよ!セクハラセクハラうるせぇなコイツ。

思いながら赤くなっているいちるを見ながら「予鈴が鳴りそうだ。次の時間頼むわ」といちるに頼む。

するといちるは「あ、うん...」と随分としおらしくなった。

何だコイツ?


「お前何?何かあったの?」

「何でもない。せくはら」

「お前という奴は。何でもセクハラ言うな!」

「そうかな?でも気に入ったよ」

「...」


この野郎は...。

思いながら俺は盛大に溜息を吐く。

そして俺は次の時間の教科書を出しながら手を振って去って行くいちるを見る。

俺は肘をついて顎を手に乗せた。

溜息が出てしまった。



次の時間の休み時間になってから俺は大欠伸をする。

だから古典は嫌いだ。

退屈だっつーの。

思いながら立ち上がった。

それからトイレに行こうとするといちるが「連れしょん連れしょん♪」と言う。

おまぁえぇ!!!!?


「教室が凍るだろ!女子が連れしょん言うな!?」

「え?何で?」

「逆に何で!?」

「良いじゃん。だって祐大だし。通じるでしょ?」

「通じるとかそういう問題か!!!!!主は中学生のままだな!本当に!」


「うーん?そうかなぁ?」と言ういちる。

( ゚Д゚)という感じでだ。

この野郎という奴は。


自分で全て(せくはら)とか言っておいてこれは如何なものか。

思いながら居ると「神田さん...とはどうなるんだろうね」と言ってきた。

俺は「!」と思いながら考える。


「...さあな。接しずらい。それに居るの他校だしな」

「...上手くいくと良いけどね。関係性が」

「...」

「まあ私はどっちでも良いけど」

「...?...おい。それはどういう意味だ」

「ヘ。あ、な、何でもない!!!!!」


んだよコイツ。

マジにおかしい。

今日に限ってマジにおかしい。

思いながら俺は別れて男子トイレに入る。

そして溜息をまた吐いた。


どうしていちるはあんな事を。

そんな事を考えながら用を足した。

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