第8話 6ヵ月の空白

☆来栖七(くるすなな)サイド☆


私には大きな夢がある。

その夢を1人で叶えるつもりで居た。

するとその事を話したお兄ちゃんが協力してくれると言った。

私はただ嬉しくなる。

やる気が出た。


翌日になって私は通学路でお兄ちゃんと別れて中学校に行く。

今日からこの中学校。

転校した学校に初登校だ。


期待と不安を交えながら私は校舎に入る。

すると私の容姿を見てから「すっげぇ可愛い...」と男子達が言ってくる。

女子達はジト目で私を見る。

私だって好き好んでこんな容姿で居る訳じゃないのだが。

思いながら複雑な思いを抱きながら職員室に向かう。


「ああ。市原さん。こんにちは」


ドアを開けると目の前の担任になる男の先生。

永山敏郎(ながやまとしろう)先生が居た。

丸眼鏡を掛けている30代ぐらいのスーツの男性。

私は「私は学校に通って良いんですかね?」とふと聞いてしまう。


「...君の事は聞いたよ。...前の学校で半年間、不登校だったんだよね?」

「...頭が良すぎるせいです」

「...僕は...君のその才能はまさに天才だと思う。学校に来ちゃいけないと思ったりもするだろう。だけど僕にとっては君は大切な生徒だ。だから君を守るのは義務なんだ。...君が学校に来てくれる。それが...僕にとっては幸せだ。...君の才能が...活かせる様に徹底的に頑張るよ」


永山先生はそう言いながら私を見てくる。

私は衝撃を受けた。

何故ならそんな事を言われたのは初めてだから。

涙が自然と浮かぶ。


「...大変だったね。...僕のクラスメイトは...優しい方だと思うけど。それでも何かあったら言いなさい」

「...永山先生。有難う御座います」

「...大丈夫かな」

「...はい。勇気が持てました」


そして永山先生を見る。

永山先生は「じゃあ行こうか。そろそろホームルームの時間だね」と笑みを浮かべてくる。

私はその姿を見ながら「はい」と返事をする。

それから教室に向かうと永山先生が「じゃあここで待っててね」と廊下で待機を指示してくる。

耳を澄ますと教室から「はいはい。もうみんな察していると思うけど転校生の紹介だ。みんな優しく接する様に」と聞こえてきた。


「じゃあ入ってくれるかな。市原さん」

「は...はい」

「緊張するかな。大丈夫かな?」

「い、いえ」


それから私は一歩ずつ教室に入る。

視線が滅茶苦茶に気になる。

だけど一歩を踏み出さないと。

そう思いながら壇上に上がってから目の前を見る。


「市原七です」

「...はい。良く出来ました。という事で市原七さんだ。みんな仲良くしてね」

「「「「「はい!」」」」」

「...市原さん。何かあったら言ってね」

「...はい。有難う御座います。永山先生」


そして永山先生は笑みを浮かべたまま「えっと。じゃあ...市原さんの席は」と探し始める。

するとゆっくりと女子が手を挙げた。

その女子は可愛い顔をしている。

お姫様の様に見える。


だが違和感があった。

何故なら似つかわしくないイヤホンを着けていたから、だ。

「え?」と声が出た。

何でイヤホンを着けているのかと思ったが直ぐに察した。


「お。じゃあ大滝さんの横で良いかな」

「はい」


彼女は大きい音が苦手なんだなと。

そう察する事が出来た。

ノイズキャンセリングイヤホン。

そう思える。

私は大滝さんの横に腰掛ける。


「宜しく。大滝さん」

「...宜しくお願いします」

「大滝...何て言うの?」

「大滝千代(おおたきちよ)です」

「...そっか。千代さんか。良い名前だね」


そんな会話をしながら私は千代さんを見てから前を見る。

すると永山先生はニコッとしながら「じゃあホームルームを始めます。金田さん...」

そう言いながら永山先生は読み上げていく。

その姿を見ながら私は千代さんを見る。

千代さんはイヤホンを触りながら私の視線に目を逸らした。


仲良くなれるだろうか。

思いながら私は外を見る。

そしてホームルームが終わった。



興味を持ったクラスメイトに質問攻めにあっていた。

その事に私は苦笑いで応えながらだったが楽しい。

彼、彼女達は純粋に聞いてきているから、だ。

私はゆっくり応えながらクラスメイトを見ていた。

そして落ち着いてきた頃に横の千代さんを見る。


「大滝さん」

「...?...何?」

「その。...仲良くしてね」

「...う、うん。だけど...私はこんなだから」

「うん。でも関係ないよ。...私は仲良くしたい」

「...」


千代さんは「そうだね」とだけ言ってから沈黙して何も言わなくなった。

私は「?」と思いながらだったが。

千代さんと喋れたことが何よりも良かったと思った。

そして私は教科書を出す。


しかしこのクラスにはこういう人も居るんだな。

そう思いながら私は授業を受ける準備をする。

すると横の千代さんが「あれ。ノート忘れた...」と呟く。

私は「ルーズリーフだけど貸そうか?」と声を掛ける。


「え...でも迷惑じゃ」

「そんな事ない。困ったときはお互い様だから」

「...あ、有難う」


そして千代さんはルーズリーフを私から受け取る。

それから私に笑みを浮かべた。

私はその姿に頭を下げて(可愛いな)と思いながら前を見た。

何だか今日は良い日になりそうだな。

そう考えながら。

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