第6話 小説
☆来栖七(くるすなな)サイド☆
お兄ちゃんの為に編み物の練習をしまくった。
何故ならお兄ちゃんと暖かくなりたいのもあるが。
電気代を勿体無くしたくない為だ。
だからこそ私は編み物を練習したのである。
「それにしても本当に暖かいな。これ」
「そうでしょ?練習の成果だよ。褒めて」
「ああ。俺には勿体無いぐらい上出来な編み物だ」
「ふふん。でしょ?」
「...お前ってさ。他に何が出来るんだ?」
帰って来るとお兄ちゃんにそう言われた。
私は考えながら「うーん。殆どできるよ。編み物もそうだけど」と答える。
するとお兄ちゃんは驚きながら「相当に鍛えたんだな。昔は家事とかもそうだけど何も出来なかったくせに」と言ってくる。
「そうだね。...全部お兄ちゃんの花嫁になる為に修行した」
「...成程な」
「そうそう。...で。お兄ちゃんは何を買いに行ったの?」
「ああ。...趣味の小説の為の参考書とか。ラノベだけどな」
「え?お兄ちゃん小説書けるの?」
「まあ2年前から始めたばっかりだけどな」
「ほほう」
私は興味津々にお兄ちゃんを見る。
それは見せてほしいという懇願である。
するとお兄ちゃんは困惑しながらも「ふむ」と言った。
「社会情勢とか書いてあるけど分かるかな」と呟きつつ立ち上がりながらタブレットを持って来てパスワードを入れつつお兄ちゃんは自らのアカウントにアクセスする。
「ほほう。これがお兄ちゃんのアカウント?」
「そう。...とは言ってもフォロワー数もそうでもないんだけどな」
「そうかな?書けるだけ凄いんじゃないかな」
「そうか?」
「うん」
そう言いながら私はタブレットを受け取る。
それから20作品ぐらいある小説項目にランダムにアクセスして読み始めた。
そして数分してから「難しいなぁ」と額に?を浮かべて言った。
読んでいたのは社会情勢の話だ。
お兄ちゃんは苦笑いを浮かべながら私を見る。
「それは分からんだろ。...エッセイじゃなくて小説の作品を読んだら」
「そうなの?どんな小説を書いているの?」
「俺は異世界転生ものだな」
「面白そうだね」
「いやいや。フォロワーも50000文字で10人ぐらいしか居ないから」
「うん。でもさっきも言ったけどフォロワー関係ないよ。自分が描きたいものを描けば良いと思うから。フォロワーなんて。私もSNSやってブログ書いているけど何も。10人も付けば凄いと思う」
「お前ブログやっているのか?」
「ネコネコって名前のブログ」
「へぇ。凄いじゃないか」とお兄ちゃんはニコッとしながら私を見る。
ブログをやっていて初めて褒められた気がした。
私は嬉しくなってお兄ちゃんにタブレットでネコネコを見せる。
そこには風景の写真とかが飾られており文章が打たれている。
「ああ。お前らしいな」
「そうかな?」
「...フォロワーは居ないのか?」
「居ても居なくても同じような感じだから。...でもたまにコメントが来るね」
「それだけでも凄いじゃないか。アクセスカウンターも1000人行っているし」
「そうかな。えへへ」
お兄ちゃんに褒められて私は嬉しくなる。
そうしているとお兄ちゃんが手を伸ばしているのに気が付いた。
私は「?」を浮かべながらお兄ちゃんを見る。
するとお兄ちゃんは手を引っ込める。
そしてカァッと赤面した。
「ど、どうしたの?お兄ちゃん」
「何でも、ない」
「...???」
何で赤くなっているのか。
そして手を引っ込めたのか分からなかった。
私は手に持っているタブレットを見る。
それから「お兄ちゃん」と聞く。
「...私も小説が書きたいな」
「え?お前が?」
「そう。私も描きたい」
「...そうか。描きたい思いを表現するのは良いと思うぞ。教えてやろう」
「わーい」
そして私は使っているスペックはそこそこのパソコンを持って来る。
このパソコンは売りに出しても売れないぐらいのパソコンだろうけどでも文章を打つには性能はバッチリ。
そしてこれは何よりも大切なパソコンだ。
何故ならお父さんが...使っていたものだから。
「...親父さんの形見か」
「そう。お父さんの形見みたいなものだね」
「...」
「...あ。お兄ちゃん。そんなに複雑に思わないで。私は平気だから。お兄ちゃんが居るから」
私は笑顔になりながらウィンドウズを起動する。
それから小説のサイトにアクセスする。
そして会員登録の方法とか教えてもらい。
いざ書いてみる。
が。
「...うーん。何も浮かばないや」
「...じゃあ身の回りの話でも書いたらどうだ?」
「それってもしかしてお兄ちゃんとの?」
「そうだな。ありのままを表現しろ。大切だぞ」
目を閉じる。
それからありのままを文章に表現して500文字で投稿した。
フォロワーが1人付いた。
私はまさかの展開に目を輝かせてお兄ちゃんを見る。
お兄ちゃんは笑みを浮かべて私の頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「ふにゅう」
「あ」
「...お兄ちゃん。何でもかんでも女子に触れるのは良くないよ。まあでも恋人だから許しちゃう」
「...はは」
そしてお兄ちゃんは恥じらう。
私も恥じらってしまった。
それからクスクスと笑い合う。
本当に幸せな時間だった。
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