第5話 手編みのマフラー

☆市原祐大(いちはらゆうだい)サイド☆


うーん...。

年頃の女子を扱うのは大変難しい。

思いながら俺は外に出て来てから近所の本屋に向かった。

ライトノベルを探している。

だけどそのついでと思って俺は恋愛の本を探す。

何をしているんだか俺は。


まさか義妹との恋愛模様の為に買うなんて思わなかった。

すると背後から「おやおやおやおやおやおや?」と言われた。

ウザすぎる。

ついそいつにチョップしてしまった。


「いちる。煩い」

「ほげぇ!だって珍しいじゃないかぁ。君が恋愛の本なんて」

「まあ確かにな。途轍もなく珍しいかもな」

「ああ。すっごく珍しいと思うよ。だってありえない感じだ」


同級生のバイト書店員の松本いちる(まつもといちる)は物珍しい感じで俺に向いてくる。

童顔の女子高生。

彼氏が居るので羨ましいとも言える存在かもしれない。

そんな彼氏とはうまくいっている感じではある様だ。

またそれも羨ましい。


「神田さんとの?」

「...ああ。いちるには言ってなかったか。実はな振られた」

「え!?あれほど上手くいっていたのにまたどうして?」

「よく分からん。だけど振られたから出直す為にな」

「...そうか。それで何で恋愛の書物を?」

「...えっとな...うん。良いじゃないか。色々あっても」


「いやいやそうやって誤魔化さない」といちるは言ってくる。

「もしや新しい彼女か!」と言う感じでも。

俺は「いや。あのな」と言いながら(・∀・)ニヤニヤするいちるを見る。

書店員がずばずば人の心に入らないでほしい。


「じゃあまさか...許嫁!」

「...いちる。...何でも良いだろ」

「い、許嫁なの?!それって結構凄い!」

「ラブコメの読み過ぎだ!!!!!」


そしてウザい!

思いながらいちるを見る。

するといちるの頭の上にはたきが飛んできた。

それから「あう!」といちるが言う。

「お姉ちゃん。迷惑を掛けない」と冷静な声が飛んでくる。


「やあ。なちるちゃん」

「はい。昨日ぶりです」


松本なちる(まつもとなちる)ちゃん。

高校1年生で15歳。

冷静でありいちるとは真逆の存在である。

姉妹で親父さんの書店を手伝っているのだ。


「えー!だってなちるだって興味あるでしょ!?」

「無いって言ったら嘘になるけど。だけど今はお兄さんは言いたくない感じだから」

「えー!!!?!」


煩いしウザい。

思いながら俺は苦笑いを浮かべる。

すると「お兄さん。...振られたんですね。神田さんに」と少しだけ真剣な顔をになってから俺を見る。

「まあな」と俺は返事をした。

それから「多分...俺の人生にあてられたんだろ」と答える。


「そうですか...」

「そうだな。良い女性だったんだけどな」

「...まあでも次がありますよ。きっとチャンスはめぐる筈ですから」

「そうだな。なちるちゃん有難う」


「そだよね!!!!!」と人が居るにも関わらず目を輝かせて大声を出すいちる。

煩いんだが。

思いながら居るとなちるちゃんが「仕事して。お姉ちゃん」と退避させた。

そして俺となちるちゃんだけになる。


「まあお兄さんは良い人ですから。チャンスは巡るでしょう」

「そうだな。勇気がもらえたよ」

「あはは」


そしてなちるちゃんは「じゃあ仕事に戻ります」とはたきを持ってから去って行く。

俺はその姿を見ながら「ああ」と返事をしながら見送る。

それから恋愛の本を買ってから。

ラノベを数冊買ってそのまま書店を後にする為に2人に挨拶してから外に出た。

今は3月だがまだ肌寒い。


「...そうか。...チャンスはまだある、か」


そう思いながら俺はレジ袋を持ったまま歩き出す。

そしてポケットに手を突っ込んで歩いていると「お兄ちゃん」と声がした。

顔を上げるとマフラーを巻いて武装した七が居た。

笑みを浮かべて立っている。


「何だお前。どうしたんだ?」

「勿論。お兄ちゃんをお出迎え」

「いやそれ待ちきれなかっただけだろ。どんだけ~」

「良いじゃない。どっちでも...あ。お兄ちゃん。こっち来て」


俺は「?」を浮かべて歩いてから七に近付く。

すると七は何かを取り出した。

「はい」と渡してくる。

それはマフラーであった。

ただし市販のものではない感じだ。

所々が下手になっている。


「これはまさか」

「ちくちくして作りました」

「...お前って奴は。...ありがとうな」

「うん。だけど初めて糸を紡いだから勘弁して。幾ら家事に慣れているとはいえ」

「何の記念日だ?」

「お兄ちゃんとの再会記念日」


「そうか」と返事しながら俺はその手編みのマフラーを巻いてみる。

これはまあ何というかクソ暖かいもんだ。

それも心が温まる。

思いながら俺は七の頬に手を添える。


「暖かいよ」

「ふあ?い、いきなり何を」

「...いや。つい、な。ゴメン」


「も、もうお兄ちゃん。触るならきょかを取りなさい...」と言いながら慌ててカァッと赤くなる七。

俺は「可愛いもんだ」と思いながらその姿を見る。

そして俺達はそのまま帰宅した。

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