第2話 痛み
☆来栖七(くるすなな)サイド☆
私がお兄ちゃんと出会ったのは7年以上前だ。
出会った当初は私はお兄ちゃんの事はただの優しい近所のお兄ちゃんとしか思ってなかった。
だけど私が...お父さんを職場の過労死で失ってから。
私はお兄ちゃんが必死に私を守ってくれるその姿に惚れた。
それから私はお兄ちゃんが好きになった。
いつか私はお兄ちゃんの花嫁に。
そう思いながら私は頑張って花嫁修業をした。
それから私はお兄ちゃんを傍で支えれるまでになった。
そしたらお母さんが再婚する事になった。
その相手が何故か偶然にお兄ちゃんの一家だったのだ。
私はあまりの事に吐く息も熱くなり。
心臓がバクバクと波打った。
それから私は待ちきれず先にお兄ちゃんの家に行ってから家事をしていた。
これまで秘密にしていたが待ちきれなかった。
それからお母さんは仕事に行き。
今に至る。
「しかし親父のやつ。お前の一家と再婚するとはな」
「あはは。これも運命だって思うよ。きっとね」
「まあそうなんだけどな」
私はお兄ちゃんを見る。
お兄ちゃんは変わらずな感じで柔和に私を見てくる。
その事に胸が高鳴り家事をする。
お兄ちゃんは勉強をしていた。
「...」
「...」
どうしよう。
お兄ちゃんが格好良くなっていた。
私は目を回しながら隠れながら赤面する。
どうしようもないぐらいに嬉しい。
思いながら居ると「七」と声がした。
「ひゃい!?」
「...お、おう。どうした?」
「え?だって名前を呼んだよね?」
「まあそうだけどそんな反応をされるって思わなかった」
「あ、あはは。私も緊張しているの」
「そ、そうか」
お兄ちゃんは赤くなりながら頬を掻く。
それからまた沈黙が流れた。
するとお兄ちゃんは「なあ。...お前は本当に今日の為に準備していたのか?」と聞いてくる。
私は「うん」と返事をしながら家事をする。
「今日の為に全部学んできた。...お嫁さんになるぐらいなら全てをってね」
「そ、そうか。こっぱずかしいんだが」
「私は恥ずかしくないよ。だってお兄ちゃんの為に頑張っていたから」
「...」
黙ってしまうお兄ちゃん。
私はその姿を見ながら堪らず駆け寄る。
それからお兄ちゃんの横に腰掛ける。
「お兄ちゃん。もしかして叔母さんの事?」と聞く。
すると「そうだな。俺みたいなのが幸せになって良いのかなって思ってな」と答えてくる。
「...母親すら守れなかった様な男がな」
「...」
「...ごめんな。お前の前では暗い話をしないつもりだったから」
「ううん。気にしないで。お兄ちゃん」
「...」
私はモジモジしながら「ねえ。これからはお兄ちゃんの痛みを半分ちょうだい。一緒に痛みを分かち合いたいな」と柔和になる。
それから私は肩をお兄ちゃんの肩に傾ける。
お兄ちゃんはその事にドキッとした様に真っ赤になる。
「お、おい」と言いながら。
「私ね。...覚悟できてるから。...全ての覚悟」
「...全ての覚悟?」
「そう。私ね。...お兄ちゃんの痛みも全部私と共有するって決めてる」
「...ならそれをしてくれるならお前の痛みもくれ」
その予想外の言葉に私は「え?」と話す。
お兄ちゃんは笑みを浮かべながら「大吉さんを失った痛みもくれ。俺は...お前の感情も背負いたい」と言ってくる。
私は自然と涙が浮かんだ。
そして「そ、それは良いよ」とごしごしと涙を拭く。
「いや駄目だ。これはお前の兄貴になった俺の覚悟だ」
「...!...あ、あはは。本当にお兄ちゃんは優しいね。何も変わって無いや。...嬉しいなぁ...涙が止まらないや。...私は情けないなぁ」
「情けない?俺はお前より年上だ。そしてお前はまだか弱い乙女だ。だったら守る必要性があるだけだ。...七の事は昔から大切に思っているから。あの時みたいに後悔はしない様にしたい」
「...あれは私も悪かったから」
「俺のせいだよ。...俺が...俺のせいで全て失った」
そう言いながらお兄ちゃんは歯を食いしばる。
その姿を見ながら私は赤面しながら息を吐いた。
それから震える手でお兄ちゃんの手を握る。
お兄ちゃんは慌てて「ちょ」と言うが。
私はその手を握らずには居られなかった。
当然だが男の子の手を握るのは初めて。
お兄ちゃんはごつごつして大きな手をしている。
男の子の手だなって思う。
考えながら私は優しくお兄ちゃんの手を握りしめた。
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