第2話 人間の部下

「朝のニュースです」

テレビでは、ニュースがやっていた。

「…」

ハルマが死んでから一週間。優しい王になるとは言ったが、まず王のなり方がわからない。ああいうのって家柄とかで決まるんじゃないのか?

「今日のゲストは東京の王、グンヤ・シャラク様です!」

「っつ!?」

日本?東京ってどこだ?それより王だって言ったか?

「どうも。グンヤ・シャラクです」

テレビには銀髪でサングラスの成金の様な奴が写っていた。

「グンヤ様は何故王様になられたのですか?」

「はい。私は、前王に託されたのです。東京の王になってくれと」

「託された…俺と同じだ」

「その後私は部下を集め、私は王になりました。王になるにはまず部下を、そして部下に憧れさせる力を」

「部下…」

「日本には、王が47人おります。もし皆様が王になりたければ、信じられる部下を集める事です」

「ありがとうございます!それでは次の質も」

テレビを切った。

「部下か…部下」

部下と言っても、自分を支えてくれる様な奴はいない。

「どうするか……あ!」

卵を焼いているのを忘れていた。フライパンを見ると黒い何かがそこにはあった。俺は黒い何かを牛乳で流し込んだ。

「部下ねぇ…」

「ピンポーン!」

チャイムの音がする。誰か来た様だ。俺は人間の可能性も感じつつ。少しドスの効いた声で聞く。

「誰だ?」

「た…」

「た?」

「助けてぇぇぇぇぇぇ!!」

扉の前には美少女がいた。だが、見慣れない身体。羽が無い。天使では無い様だ。

「あんた…人間だろ?帰ってくれ」

「助けて…助けてください!!追われてるんです!!」

「追ってる立場が何言ってんだ。忙しいんだよ。帰ってくれ」

「お願いします…もう嫌なんです」

扉の外の人間は、確かに泣いていた。

「…わかった」

「へ…?」

部下。その言葉が頭に浮かんだ。天使ではない人間だ。しかし、女。使えるかもしれない。

「俺の部下になれ。そしたら助けてやる」

「部下…?分かりました!何のかは分かりませんが、あいつから逃げられるならなんでもやります」

言質は取った。だが一足遅かった様だ。

「おいおい…何天使に助けて貰おうとしてんだ?」

扉を軽く開けた時、美少女の前に若い男がいた。

「ひっ…私は嫌なんです。好きな人以外にあんな事するなんて!」

「あ?人間でもな、奴隷ならな。上級国民を満足させるくらいしか生きてる理由がねぇんだよ。股も開かねぇ奴隷はさっさと死にやがれ!!」

男が銃を出す。

「お…お願いします!助けて…部下に部下になりますから!」

「…その言葉忘れんじゃねぇぞ!」

「あ?天使が何の様だ?」

女の前に出る。つまり男の前。前は惜しみなく使ったが、本来こいつは一週間に一回の特別な技。天聖技能。一人の天使に一つずつ与えられる天使の技。羽と天使の持つ元々の魔力を発する天使の技。

「天聖の銃弾!!」

指から銃弾が発射され、相手の銃がある、右腕を撃ち抜いた。

「ぎゃあぁぁぁ!!腕っ腕がぁ!」

「心臓を撃たれたくなかったらとっととどっかに行っちまえ!」

「くっそ!クジラ様にチクってやる!!」

泣きながら男は逃げていった。クジラ?魚の?。俺が悩んでいると後ろで気絶している人間を見つけた。

「…とりあえず部屋に運ばないとな」

王を目指して第一歩、部下を一人手に入れた。人間だけどな。



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