Under・King
ベニテングダケ
第1話 王様の夢
「いてぇっっっ!」
頭部に激痛が走る。
「その目を止めろってんだ!!いいか!?次に俺らが来るまでにそのガキを殺さなかったら次は目をやるからなっ!!」
汚らしいジジイが、路地を出る。俺の腕には涙を抑える少年がいた。
「…クソがっ…大丈夫か?」
「う…ん。お兄ちゃんは?」
「俺は大丈夫だ!強いからな!!」
少年は安心したのか、笑顔が戻る。
「ほら、あいつらに見つかると酷い目に合わされる。さっさと行け」
「うん…ありがとう!」
少年は走る。
西暦31500年、天と地に分かれていた世界は一変した。天に地が移動し、人間が上に住み始める。俺ら天使は下に行く。天に人間が住み始めた事により、人間は自分が王だと名乗る様になった。天に住む、天使達は、まるで人間の奴隷のように扱われ、天使達は絶望し、笑顔が消えていった。
人間の多くは傲慢に、しかし一部は、一部だけは、天使の味方をしていた。
路地を通り、家に着く。玄関を開けると一人の人間がいた。
「おかえりリスタ!…!?また怪我してるじゃあないか。あいつらにやられたのか?」
「悪いハルマ。救急箱借りて良いか?」
「おぉ…それより大丈夫か?俺があいつらに言ってやろうか」
「それハルマの立場が危うくなるだろ。良いよ。それより今日の晩飯はなんだ?」
「…。あぁ今日はハンバーグだ!」
ハルマは、台所へ向かう。彼はハルマ・タキ。俺に唯一優しくしてくれる人間だ。地から追放され、天に降りた人間で、俺とは子供の頃からの仲だ。
「ほら!ハンバーグ!チーズinだ!!」
二人で食事をする。俺達は、二人でずっと暮らしてる。俺は毎日毎日地から来た人間に殴られ蹴られ、でもハルマと暮らせるなら俺は、幸せだ。風呂に入って、布団に入って。
「おやすみリスタ」
「おやすみハルマ」
俺は幸せだ。ハルマは、いつも俺に幸せをくれる。夢の中でもハルマに会う。俺には、ハルマしかいないんだ。
朝起きたら、ハルマがいなかった。
「ハルマ?どこ行ったんだ?」
ゴミ出しの日じゃない。買い物もハルマは夜に行く。嫌な予感がし、外に出る。
「ハルマ!?どこに行った!!」
いない。ハルマが。どこだ。
「ハルマッ…!ハルマ!!」
路地を抜ける。ハルマがいた。ハルマだ。
「ハルマ…!お前勝手に…!」
ハルマが倒れた。血を吐いて。
「ハルマ…?」
「おいおい天使に味方する人間がいると思ったらクソリスタのお友達かぁ?」
クソジジイが、煽る、ハルマが抱きしめていた子供は泣きながら逃げる。ハルマが支えを無くし、完全に倒れる。俺はハルマに駆け寄る。
「リ…スタ?」
「ハルマ?おい…なんで血。なんで」
「リスタ…」
ジジイが、笑いながら俺に喋りかける。
「ハハッ…お前に…いや糞天使に味方する人間なんだぞ?殺すに決まってるだろ」
小さいナイフを振り回す。それでも人にとっては立派な凶器。
「じゃあな!今度あのガキを殺してなかったらおめぇも殺すからな」
クソジジイが帰る。だが今はハルマだ。
「ハルマ…帰るぞ。治療。治療だ」
「リスタ…。馬鹿、治んねぇよ…」
「うるさい。治さないと…ハルマが」
俺はハルマを背負おうとする。
「リスタ…俺言ってなかったよな。家族の事」
「ハルマの家族…?」
「あぁ…俺の兄ちゃん…王様だったんだ。まだ、天と地が移動する前。優しい王様だった」
「王様…?今の王様はハルマの兄貴なのか?」
「違う…殺されたんだ。今の王に。天と地が移動した時に」
「…なんで今そんな話をするんだ…?」
「……夢だったんだ。王様になりたかった。優しい王様に。差別をしない王様に」
「…」
差別をしない王様。俺にとってはもう。
「リスタ…」
「なんだ…?ハルマ」
「王様になってくれ。この暗い暗い天で、全てを統べる優しい王様に」
「…夢を引き継げって?」
「…あぁ…だから俺の名をやる…リスタ・タキ。名乗れこの名を」
「……ハルマ…受け継いだよ。お前の夢」
「…」
ハルマは冷たくなっていた。王様になる。だがその前に。俺はあいつを殺さねばならない。
「この力を使うのは久しぶりだな」
ジジイに狙いを定める。
「BURST…天聖の銃弾」
俺の指の先端から、波動が出る。そしてジジイの心臓を貫く。
「あ?」
ジジイが倒れる。ハルマは俺に夢を引き継く為にここまで生きたのに、こいつは、すぐに死ぬんだな。
「ハルマ…俺は王になるよ。優しい王様に」
世界を統べる王様に。この天の王様に。
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