番外編 《お姉様大好きリーセア来る!?》⑬
シャルの笑顔に慌てるリーセア。
「それとフェピちゃん。あと、お姉様が暴走した時と、しそうな時に、ヌメちゃんを呼んでその舌でお姉様の体を拘束する様に伝えておいてね」
「了解した。我が主人」
シャルの言葉に了承したことを伝えるフェピちゃんという精霊王。
「──シャル!? ヌメちゃんとはまさかヌメカエルのことなのか!?」
「え? そだよぉ〜」
これに超絶嫌な顔を見せるリーセア。
ユイ先輩もミヤさんも青い顔をしている。
俺はそのヌメカエルの名前を聞き過去の記憶から掘り起こす。
確か──、大きさは20センチ程のカエルだった。しかもそのカエルの体からは、とてつもないネバネバの体液を放出する。だがそんなことはどうでもいい。
なぜなら、そのカエルのネバネバの体液はこの上なく異臭を放つのだ。
その体液を浴びれば、一週間は臭いが取れない。
これは、女性ならずとも男性からも嫌われている。
シャルはこのカエルの舌でリーセア拘束しようと言っているのだ。
そしてシャルは不適な笑みを浮かべ言う。
「ヌメちゃんの体液を浴びてユイさん達に抱きついたりでもしたら、きっと嫌われますねえ〜?」
なるほど、そう言うことか。
──つまり、ユイ先輩達が青い顔をするほど嫌な臭いを纏い、抱きついたりでもしようものなら、間違いなく嫌われる。
これはリーセアにとってあってはならないことだ。
このことを考えると、拘束をされようものならユイ先輩達に近づくことはおろか、抱きつくなど出来ようはずがないのだ。
「シャル……、私に酷いとは思ったりしないの!?」
「リーセアお姉様がやってることの方がよほど酷いと思いますよ……」
リーセアは頭を抱え、「──ああぁぁぁぁ……」などと叫んでいる。この妹シャルは、肉体的にと言うよりも、精神的ダメージを与える方が得意らしい……。
しかし、【精霊王】とはとんでもないものを従えるものだ。感心する。
メシアとシャルは親友と言っていた。
もし仮にこの二人が帝位、王位を継ぐ様なことになれば龍の力を操り、ホワイトドラゴンを従える【女帝メシア・ライテルーザ】と精霊王を従える精霊魔法の使い手【女王シャルティナ・
物理にも精神にもダメージを与えることのできる最強の王になるだろう。
まぁしかし、シャルに至ってはリーセアがいるのでどうなるかは分からない。だけど、リーセアは恐らくだが、王にはなりたくないのではと思えてします。
そう考えると、二人が最強の王になる可能性は十分あると言える。
「さて、話も一通り終わったことだ。皆、心置きなく歓談しながら楽しんでくれ!」
ミリーザさんの声に会食が始まったのだった。
※ ※ ※
──結局リーセアは終始立ったままだった。よほど痛かったのだろうと思える。まぁ、仕方ないよな。
自業自得というものだ。
それと気になったのは、ユイ先輩達だ。
ユイ先輩、メシア、シャルが何かを話している。
これにミヤさんは呆れ顔で眺めていた。
俺は多少気になりながらも用意された食事を堪能した。
そして会食も終わり、それぞれあてがわれた部屋に戻ることになった。
この際にも、ユイ先輩が自分達の部屋へ俺を引き込もうと腕を引っ張ってはいたが、メシアに阻まれた。
そしてまたしても睨み合い……。
しかし最終的にはユイ先輩はミヤさんに、メシアはミリーザさんに連れて行かれてしまった。
その光景を見送りながら、俺と剣崎先輩は部屋へ向かった。少しして部屋の前までたどり着いた。明かりを消した部屋からなぜか漏れる明かり。不思議に思いながらも扉を開けて中へと足を踏み入れる────。
だが、再びおかしなことがある。
なぜだろう、部屋に充満する紅茶の匂い。
そして──、部屋を見る。
すると、端に置かれた椅子に腰掛け紅茶を口にしている紅藤色の髪の少女の姿が見える。
そしてその横にはフェピちゃんこと【精霊王フェピリト】が座っている。
「──あ、お待ちしておりました。アイルさん」
「──え……? なんでいるんだシャル?」
「聞きたいことがありまして……。あと因みに、私はお姉様とは違い、きちんと許可をもらい待たせて頂きましたので……」
「な、何を……聞きたいんだよ?」
「メシアちゃんとユイさんに二股をかけてるのですか?」
──ん? んんんんッ!?
なんでそんな話になっている!?
「あの……シャル? なんでどうしてそういう話になってるんだ……?」
「会食の時、二人がアイルさんの事について話していましたし、二人とも初めてをあげたとか、揉まれたとか言っていました……で、どうなのでしょうか?」
言葉の端々に圧を感じる。
隣に座るフェピちゃんも目つきを鋭くし、立ち上がっている。
「事と次第によっては……ね……?」
この子凄く面倒臭いかもしれない……。
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