第67話 準魔王と地球
「ひとまずフィアーラがどこにいるのかを知る必要があるわね……」
そう話しをまとめている時、医療室の扉が開いた。
そこには細長い男と、その男とは対象的な筋肉がよくついている事が分かる女性が入ってきた。
────◇───🔹───◇────
ユイは扉に視線を向けると、目覚めて初めて無事を確認できた女性に対して嬉しそうに声を上げる。
「ミーヤセルカお姉様! 無事でよかった! ……とスタル無事だったの……」
続けてアイルは言った。
「剣崎先輩、ミヤさん。見回りの方は大丈夫でしたか?」
スタルはアイルに手を上げ、「──問題ない」と返すと、ユイに向け不服を言った。
「ユイ……僕とミヤへの対応が違いすぎないか……?」
「アンタは相変わらず細かいねー! 無事だったんだからいいだろうに!」
ミヤはスタルの頭を小突ながら言っている。
ミリーザは二人に視線を向けると口を開いた。
「お前達がここへ来たということは、これまでの話に何かあるのか?」
このミリーザの言い方に、アイルは疑問を浮かべると──。
「これまでの話って言っても、二人はいなかったので聞いてないはずですが……」
これに答えたのはエンツィオだ。
「スタル殿とミヤ殿には我々がここに来る前にリルとルルを通して、話が聞けるように遠隔魔法を使っていた。なので、今までの話は分かるはずだ」
エンツィオの説明に、「──まぁそういうことだ」と言いスタルが続ける。
「さっきの話のことだがお前達、僕が地球からこのリスティラードに来た理由を覚えているか?」
ユイとアイルは「覚えている」と言い頷き、ユイが続けた。
「確か、地球に魔物が
これにスタルは頷くと、両腕を組み「──あと一つ忘れているだろう?」と言葉を重ね言った。
「僕は地球に【準魔王】が来たと言っただろう?」
スタルの言葉に気付き、アイルとユイは顔を見合わせ話がつながった事を確認した。
気配が消えた【符魔法】と【死魂魔法】、それを取り込んだと思われる居場所が全く分からない準魔王フィアーラ。
地球が次元を上げるにつれ、リスティラードと地球を繋いでいる
そして時間軸の誤差による存在する時間の違い。
スタルは頷き続ける。
「──お前達の察しの通り、地球でその猛威を振るっているのは準魔王フィアーラだ……。運が良ければ、地球に来る事を阻止できると考えていたが……やはり無理だったか……」
フィアーラの存在を聞き、アイルとユイは地球で起こっているであろうことの重大さがようやく理解できたのだ。
「でも何でフィアーラは地球に……?」
「
スタルの説明にアイルは、ドーラの言ったことを思い出す。『──これは世界が動き始めるぞ……!』これが実際に起こってしまったということである。
エミラから【禁忌魔法】の譲渡を受けたフィアーラは、空間魔法の使い手であるアイル・シシリスと天才聖女──ユイ・サンクトゥリアが、新たな力を得るきっかけとなった転生世界へ興味を持った。
そして、以前から度々確認されていた、
そして、出現する場所に目安をつけることができた。
結果、新たな力を得るためにフィアーラは次元を渡ったのだ。
そのフィアーラは、地球の魔力を取り込み、どんどん力を増していった。
そしてその存在を地球に知らしめた。
フィアーラが次元を超えたことで、魔物達も活性化し地球の現状は様変わりしたのだ。
「フィアーラは太平洋のど真ん中──、その空中に浮くように、このリスティラードの中央にある【魔災大戦】の舞台となった、〈
スタルの説明はアイル達に焦りを生ませていた。
言う通りなら、準魔王に対応する力を持たない人間の行く末は明白であった。
「それなら早く地球に戻らないと……! 友人もいる!」
「残念ながら……小鳥遊、すぐには戻れないのだ……。フィアーラは自身が次元を渡った時、このリスティラードに存在する
「!? じゃあ地球に戻れないんですか!?」
「『すぐには』と言ったはずだ……。それに、フィアーラに塞がれたことで、魔力要因も以前に増して全く足りていない。メシア皇女の力を借りても、
これを聞いていたメシアの母ミリーザは「──メシアも来てもらうというのはどういうことなのだ?」と当然の疑問を聞いた。
スタルはミリーザに向くと、以前アイル達に話した話をそのまま伝えたのだった。
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