第65話 「責任の取り方は知っているのであろうな?」
話が思わぬ方向に向かっていると察し、間髪入れずリルアがこの場から離脱を図ろうと、「──お、お二人が目覚めたのでし、知らせてきますね!」と言い足早に退室しようと急ぐ。
そう……。足早に、急いで……。
そしてこれは当然の流れができ、引き金を引くことになる……。
リルアにとっての初めてが──奪われる瞬間がぐんっと近づいたのだ。
急いで出ようとしたリルアは立ち上がる時に倒した椅子に足を取られてしまった。
焦りとは様々な場所に影響を及ぼす。
リルアは顔面を、床へとものすごい勢いで打ち付けようとしていたのだ。
──当然、流れは流れ……。逆らうことなど出来ようはずもない。
アイルはリルアを支える為に手を伸ばす。
反射的に──つまりは、咄嗟と急いでが混ざり合う。
そこには同じく倒れた椅子がある……流れが出来上がってしまった。
大きな音を立て二人は重なるように倒れてしまった。
流石と言うべきかアイルはリルアを抱きかかえるように倒れ込む。
リルアは仰向けの状態で倒れて顔面強打は避けられた。
背中もアイルの腕に支えられてダメージはほぼない。しかし、唇へのダメージは甚大であった。
アイルとリルアの唇は繋がっていた。
アイルは咄嗟に顔を離し起き上がった。──これも悪かった。
リルアの背中に回していた手をすぐに解くが、解いた後に置いた場所が悪かったのだ。
リルアの程よい胸はアイルの恰好の手の置き場所となっていた。
リルアは完全に固まって目がぐるぐるしている。漏れる声は、「──はぅはぁう……は、はうぅ……」そしてこれを見たユイ、メシア二人は同時に叫ぶ──
「「──あーーーーーっ!!!!!!」」
そしてこの時アイルは、弁明に尽力しようとするがあまり、リルアの胸から手を離す事をすっかり忘れていた。それだけのフィット感があったのだろう。
だが、タイミングの悪さは前回に続くものであり今も例外ではないのだ。
扉が開く音が聞こえたと思うと、何かが落ちる音と、水が床一面に広がった。
そちらに目を向けると、ウォーターポットと思える銀の入れ物が転がっていた。
その横には、長い金髪を後ろで束ねたいかにも威厳のありそうな男が立っている。
ユイとメシアを助けてくれた男であり、リルアの父親でもある──エンツィオである。
そしてその背後にミリーザ。しかも何故かその隣には大臣の部下の女性シャールがついて来ていた。
「あ、あの……何でここに……?」
完全にリルアを押し倒しているとしか見えない状態。側から見れば、襲っていると思われても仕方がない……。
アイルの、動揺を隠しきれない言葉にミリーザは腕を組みながら「──ん〜……」と唸っている。
シャールは……「──この変態……少年を捕らえましょう……」
そしてエンツィオはゆっくり近づき座り込むと、アイルの肩を手でがっしりと掴み怖い笑顔で言う。
「──アイルと言ったか……。ちゃんと責任の取り方は知っているのであろうな?」
「──あの……これは違うんです……。リルアを助けようとしてですね……」
メシアとユイは言わなくていい言葉を言う。
「──でもチューはやりすぎですね……」
「初めてを奪っちゃったもんね……アイル君……まぁ私も初めてあげたけど……」
「ちょっ! メシア!? 先輩!?」
エンツィオは青スジを浮かべながらアイルの肩を掴む手に力が入る。
「──そうかそうか……。よもや責任を取らないと言うまいなぁ!」
アイルは諦めることにした。
これ以上言葉を重ねると深刻度が増してしまうという判断だ。
「おい貴様ー! いい加減リルアの胸から手を離さぬかーー!!」
エンツィオに殴り飛ばされていた。
「やっぱり
最後にシャールの言葉が響いた。
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