第57話 《宙剣》
「よ〜クやったわねェ。メヴィウス。これで皇族の生き血と、大量の魔力を得ることができタ。これで【死魂魔法】の封印が解けるわァァ」
エミラはそう言うと、アイルとユイに狂気の表情を見せたのだった。
──── ◇ ─── 🔹 ─── ◇ ────
「くそヴァンパイアが! 最初からこれが狙いだったのか!!」
「──エミラッ!!」
アイルは叫びユイも続けた。
だが当然気にする様子もなく淡々と返す。
「分かってタことでしょォォ? 私の狙いは【死魂魔法】ヨ? そこで『あなた達も殺そうかしら』と思ってたのよヨ?」
──言う通り、エミラは最初から【死魂魔法】を狙っていた。
その途中でユイの存在に気づきユイも殺そうと考えていたのだ。
そのついでにアイルも。
「さて、私は【死魂魔法】を頂くわね……」
そう言うと、封印を解除するという役目を終え、扉の下の血溜まりに横たわっているメシアに向けて「──邪魔ネ。コレ」と言うとアイル達の方へと瀕死のメシアを蹴り飛ばしていた。
「メシア!」
アイルはそう言うと蹴り飛ばされたメシアを抱く様に受け止めていた。
ユイもすぐにアイルとメシアの場所まで移動した。
「──メシアちゃん! メシアちゃん!」
ユイは必死に声をかけるが当然反応はない。
血色はどんどん悪くなり呼吸も浅くその死が迫っていることが分かる。
ユイはすぐに回復魔法をかけるが、この瀕死の重症に対して圧倒的に魔力が足りていない。
アイルは空間魔法を調整し止血にあたっているが治せるわけではない。
この光景を面白がる様にメヴィウスは眺め、エミラの指示を待った。
エミラはゆっくりと扉を開けその中へと進む途中、メヴィウスに命令を下す。
「──メヴィウス。ユイ以外片付けなさい。ユイはトドメをさせればいいから、その四肢くらいは切り落としても構わないワ」
「仰せのままに……」
扉の中に入るエミラを見送ると、アイルとユイ、そして白のドレスが血に染まり倒れたままのメシア目掛けメヴィウスは一直線に迫ってきた。
その背後両手には黒の剣を展開し、それら全てを振り下ろそうと目の前に迫っていた。
そしてその刃に切り伏せられようとした時──
「──メシアお姉様!」
純白のスカートを靡かせた少女──、リルアはメヴィウスの顔面を全力で蹴り飛ばしていた。
強烈な蹴りをくらったメヴィウスは凄まじい音と共に、エミラの入った扉のすぐ横の壁に叩きつけられていた。
「──!? な゛んだ貴様ヴァァアアア!」
「黙れ! ヴァンパイア! よくもお姉様を!!」
リルアの目は怒りに満ちていた。
それを制したユイはリルアに言った。
「なんでリルアちゃんが!?」
「──私とメシアお姉様の間には魔力の絆があります……。それで、メシアお姉様の魔力が急激に減少したことが分かって……。来たらお姉様がこんなになっててッ──!」
メシアの表情はますます怒りに満ち始め、今にもメヴィウスに攻撃を仕掛けようとしていた。
だがユイは正確に現状を把握していた。
今しなければいけない優先順位を。
「リルアちゃん! 今の私では回復させるのに魔力が全く足りないの! 怒りは分かるけど、お願い! リルアちゃんがメシアちゃんを回復させて!」
これに怒りを抑えつつ頷くと、ユイに言われた通りメシアの回復を全力で行い始めた。
「お姉様は私がなんとかします! だからあのヴァンパイアとエミラを倒して下さい……!」
「ああ!」
「分かってるわ!」
アイルとユイはメヴィウスに向き直ると戦闘態勢を取った。
だがここで、アイルはユイに言った。
「──ユイ先輩! あのヴァンパイアは俺が倒します。メシアをあんな状態にした奴はぶっ潰します……。大きい空間魔法はあと2回しか使えませんが、それでもアイツは潰します。残り1回はエミラに取っておきます。なので、今はユイ先輩の魔力は温存して下さい」
そう言いユイとメシアの前に立つと、メヴィウスを正面に捉えていた。
メヴィウスは爪先に漆黒を纏わせ、漆黒の爪刃に変化させ、アイルに狙いを定めふみきった!
「消えろォォオオオ人間!!!!」
アイルは左指を──パチンッと鳴らすと同時に──静かに言った。
「──
その瞬間────!
空間に突如と3本の剣が現れた。
2メートル程の半透明の剣は、迫って来ていたメヴィウスを突き刺し、空宙に縫い止めていた。
その勢いと行動をキャンセルされたメヴィウスは、一切の身動きを封じられていたのだ。
抜け出そうともがいてはいるが、その場からは離れることは叶わないでいる。
「なんだ! なんダ!! これはァァァ! なぜ一切動かない!!!」
これに怒りの表情を見せながらも冷静に返した。
「──それはこの空間で創り上げたこの空間の剣だ……。これを解くには相応の魔力が必要になる。エミラに喚び出されたお前には無理だ……」
「巫山戯るナ! こんな! 人間の魔法でェェェ!」
そう叫び散らしているが、全く抜け出せる気配がない。
アイルはそれに冷めた視線を向けるとメヴィウスが最期となる言葉を言った。
「──喰い尽くせ……【
アイルの言葉により、メヴィウスの背後の空間にぼやけた大きな扉が現れていた。
───── ◇ ──── ◇ ──── ◇ ─────
メシアの
温かい目で見ていただけたらと思います。
近況ノートに移ります。
↓
https://kakuyomu.jp/users/Hakuairu/news/16818093086248307848
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