第54話 エミラの余裕
ドーラを吸収したエミラの姿は変化していた。
昔ユイに抉られ回復不能となった右目は見開かれ、銀色に変化している。
金髪は漆黒に変わり、爪は鋭く尖り、額からは2本の細く長い漆黒の角が生えていた。
そしてその背中には魔符が翼の様に形取っている。
その姿に変化したエミラは、先ほどからずっと空中を浮遊している〈血の剣〉に、命令を下し降下させる!
「──!?
ユイは咄嗟に聖鐘を展開しそれを防いでいる。
──だが数本、エミラの魔力を上乗せ強化された剣は、聖鐘を突き抜けユイの右肩に刺さり、左太腿の肉を抉り、右足甲を貫き床に縫い付けていた。
これに声にならない苦悶の表情を浮かべている。
大量に血が流れるが、辛うじて回復能力を強化しなんとか
「あら〜。痛そうねェ〜。早く死んだほうがいいんじゃないの?」
「──残念だけど……死ぬ気なんて、ないわ……」
「でもユイ。あなたなら分かるでしょォ? 今のあなたの力では私に勝てないってことくらい」
エミラの言っていることはほぼ間違いはないだろう。
『倒す』とは言ったが、現状のユイの力では時間稼ぎはできても勝つことはまず無理なのだ。
(──倒すとは言ったものの……力が足りない。アイル君が居れば打開できたかもしれない……。でも今はそんなこと言ってられない……あの黒い壁が何かのきっかけで消えてくれれば……)
ユイは打開策を模索しているが、やはり難しい。
それでも何もしないという選択肢はないのだ。
(せめて、打開策が見つかるまで時間を稼ぐしかないようね……)
そう判断すると、止血及びある程度の回復を終えた魔法を解き戦闘態勢に入った。
「諦めが悪いわねェ。ならもっと面白いものを見せてあげるわァァ。あなたドーラに
「そうね……。それがどうかしたのかしら……? それとも何? 自分にはもう効かないとでも言いたいのかしら?」
ユイの返しに口角を上げ、不気味な笑みを浮かべると続けて言った。
「フフッ……。『面白いもの』と言ったはずよ」
言い終わると、エミラは両腕を広げユイが予想もしていなかった言葉を言った。
「──
「────!!!?」
エミラが発した後、その後方には聖槍というには不気味な真紅の槍が複数現れていた。
一つひとつゆっくりと回転しユイに狙いを定めていた。
「──なんであなたが
ユイの驚きの声にエミラは気持ちよさそうに答えていた。
「いいわァその表情! 困惑! 驚愕!! 焦燥ォーー!!!! 気持ちいいわぁ〜」
エミラはますます不気味な表情を作りユイの感情に歓喜している。
「私はねェ〜。ユイ……オマエに!! この目を貫かれた時から……あなたの魔法と魔力をず〜〜〜〜ッと! 解析していたのォ〜! 大変だったわァァア天才聖女の力を解くには……。でもようやく魔力の波長と構成を読み解くことができたの……フフッ。だからあなたの魔法は全て真似してあげるわァァァァアアア」
その優越感に浸るエミラは余裕の表情を見せていた。
だが、ユイもこれに負けない。
「──そう……。でも、あなたが解析したのは10歳の時の私でしょ? その程度でこんなに喜んで……可愛いわね……ふふふ」
ユイはわざと面白がるように微笑みながら返している。
感情に酔っているエミラは、ユイのこの表情に明確に不愉快な感情を露わにし声を上げた!
「──ユイ! オマエェ!! そんな表情を出来ないようにしてやる!」
「なら私も新しい魔法を見せてあげるわ」
「フッ! 所詮解析した力だ! やってみなさイッ!!」
感情を露わにしながらも、未だに余裕を見せている。
「──じゃあ、遠慮なくやらせてもらうわ……〈
ユイの両手は白い光に包まれ光が消えると、その両手に二振りの淡い青の日本刀が出現していた。
エミラはこれまで聞きなれないユイの魔法名に眉を
「──なんだ……その
「──私が転生した場所の日本というところには、三種の神器というものがあるの……。これはそのうちの一つ……。
ユイが言い終わる頃に、既にエミラの頭上後方に控えていた〈
そして──
「──じゃァその剣の力でどこまで耐えられるかしラ?」
これと同時にユイ目掛け落とされた!
──だが、エミラの想像を超えることを起こしていた。
降り注ぐ〈
それを目の前でやられた先程まで悦に浸っていたエミラの表情は不快の色を強めていた。しかし、これに核心をつく言葉を言った。
「──それはよほど魔力を凝縮しいるみたいネ……。でもそれだけの魔力は長続きはしないでしょォ?」
核心をつかれたユイだが、強い意志は揺るがない。
「──確かにそうね。でもなんとか時間稼ぎはしてみせるわ……!」
「──サァって、どこまで保つものかしラァ?」
ユイの魔法に虚をつかれながらも、その余裕は消えていない。
だがこの緊張感を破るように声が響いた。
《──この黒い壁! 邪魔ですよ……っとぉ!!》
轟音と共に黒い壁は崩れ去り、アイルとユイを隔てていたものが消滅していた。
その向こうに見えたのは、アイルの他にもう一人────
床につきそうな純白の髪に純白の龍のツノ。
白い尻尾に、所々白鱗に覆われた体。
そこには【
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