第53話 エミラとドーラの融合
「──たくっ! 何なんだよあの動きは! 大きさの割には素速過ぎんだろ!」
アイルは〈
当たれば恐らく継続的なダメージをもらう。致命傷は避けられない。
だが、そのブレスばかりに意識を取られると、両側に10本ずつ連なっているあの刃の餌食になってしまう。
繰り出されるスピードは速く〈創造錬金〉で創り上げた〈
つまりダメージを与えることができていないのだ。
(それにしてもあの刃の強度も尋常じゃねーな……。光剣でも斬りきれねー……)
「クククッ。アイル・シシリス! どうしたァ? 空間魔法でも使ってみろヨ!」
死蛇神の後方に控えるドーラは、アイルに向け挑発してくる。
その理由は分かっている。アイルはこれに乗ることはない。
ドーラもそれを理解しているからなのだろう。
挑発に乗ってこないアイルに対して少しの焦りも怒りも見せない。
(多分、空間魔法を使わせて消耗させることが目的だろーな……。確実にエミラに大きなダメージを与える手段の一つを封じようってことか……。それに、挑発に乗ってこないのを分かってやがる。ユイ先輩がエミラに負けるまでの時間稼ぎの様にも感じる……。裏を返せば俺とユイ先輩を共闘させると危険だと言っているのと同じだ。だけど、さっきの
アイルは必死に思考を巡らせている。
だが、この現状。自分の攻撃魔法を考えると、どうにも空間魔法を使わなければ打開できそうになかった。
しかし使用すれば、エミラに勝てる可能性を下げる結果は目に見えている。
(──くそっ! ユイ先輩は大丈夫なのかよ……!)
アイルと死蛇神の戦い。ドーラの思惑。
これらは
※ ※ ※
ユイとエミラの戦いは、エミラから先手を取っていた。
エミラは不適な笑みを浮かべると、自らの血魔法で100本以上の〈血の剣〉を創り出し空中に浮遊させている。
その数の多さに驚くユイであったが、これが符魔法との融合だと気付いた。
これ程の数になるとエミラの血液だけでは限界がある。恐らく多くは〈血の剣〉を魔符で創り上げていると。
(──符魔法で複製? ……かしら。でも何で? 本体のドーラはこの黒い壁の向こうに実体で存在している。なのになぜ符魔法を行使できるの……)
ユイの表情から読み取ったのか、疑問に答えるかの様にエミラは口を緩ませ言った。
「あなたの疑問は分かるわァ。なぜドーラが実体として存在しているにも関わらず、私が符魔法を行使できるのか? でしょ? そんなの簡単な話よ。どこでドーラが実体化しようと、あれはもう私の所有物なの……だからねェ……こんなことも出来るのよ。おいでドーラ!」
エミラの呼びかけに、壁の向こうにいるはずであったドーラが黒い煙と共にエミラの後方に現れていた。
現れたドーラは恍惚な表情を浮かべている。
「──お呼びですカァ〜。エミラ様ァァんフ……」
「これからあの愚かな女を殺すからね。一緒に遊ぼうかァ」
「はァ〜イッエミラ様♡」
ドーラは言い終わると、その姿を漆黒の煙に変え、エミラの中に吸収されその姿を消えさせた。
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