第50話 空間魔法──《空間崩壊》
私は〈
途中の魔物は2人が片付けてくれていたお陰でスムーズだ。
でも、足を止めざるを得ない事が起こった。
──それは空間に満ちる膨大な魔力量を感知したからだ。
知っている魔力。【
アイルさんが準魔王ゼディーと共にこの世界から消えた時の魔力量に近い。
アイルさんは二度と自分を犠牲にしないと言っていた。だから絶対しない。
そうなると──
(──特殊空間魔法……)
空間魔法は特殊だ。ある一定の条件を満たさなければ会得できないものがある。
ただ、それを使用することができれば、相手に対して絶大な効果を及ぼす。
これが、空間魔法が最強だと言われる所以だ。
アイルさんがこの世界から消えた後、私は空間魔法について調べた。
ありとあらゆる文献や歴史を。その中で分かったことがある。
アイルさんが準魔王ゼディーに使った空間魔法。
【
つまり、違う場所にいながら同じ事象が起こる。また、これは防御、回避不能な魔法である。
その代償として使用者の生命を消費する。
そして『ある一定の条件』とは、この【
つまり、この魔法を使い自分の生命を対価に支払うこと。
この条件を満たした場合にのみ会得することができる空間魔法がある。一度生命を対価に支払い、空間を共有した事により、空間を掌握することができるそうだ。これにより指定した空間を切り取ることができる。
(──確か、【
私はこの魔王を古い文献で見た。
二千年前の者だと────。
【零夜の魔王 アルジェント・イースベルテ】
氷結と空間魔法を使う魔王。それは少年の姿をしていたという。
銀の肩まで伸びた
そこに同じく空間魔法を使う人間アルテ・メシリスが現れた。
二人の戦いは
この戦いにより、大地を抉り、リスティラードの真ん中に、魔災大戦の戦場となった〈
この戦いの際、二人は同時に【
二人はこの世から消え、魔神に最も近い最強と称される魔王は消えたのだ。
しかし千年後、運命というものは二人を結びつけた。
転生を果たした二人は再び対峙するこことなる。
だが記憶も継承している二人は、前回とは違い互いを
『人でありながら最強魔王の一角である自分を死にまで追いやる強力な力を持つ人間。賞賛に値する』
『最強の魔王でありながら、ただ単に人々を蹂躙・殺戮をすることなく、法に則った魔族主体の世界を作り上げるという、争いを好まない考え方。嫌いではない』
だが、魔族と人は相容れない。
一部は話し合いを考える人間もいた。
しかし、多くの人々は魔王支配を認めるはずはなく、人々の流れは二人をぶつかり合わせた。
この二度目の戦いで、使われたのが【
しかし前回と違っていたのが、早々に決着が着いたことだった。
前回の戦いで世界に甚大な被害を出したことから、この戦いに於いては一撃で決着をつけようと言うことになった。これは、互いに世界の為にならないと判断したからである。
そして、魔王イースベルテは〈
しかしアルテは、再び〈
魔王の
だが、この代償は大きかった。一度目は生命を代償とした。二度目は魂を代償としたのだ。
生命だけを失えば、魂に記憶を刻まれ転生する。
しかし、魂を失えば記憶は刻まれる器をなくし無に還る。
そして転生ではなく、まっさらな魂に作り変えられる。再び生を受けることがあるのかも分からない状態として。
魔王イースベルテは寸前のところで判断を誤ってしまった。
魂の代償は、極めて大きい──。
次に生があるとして、それが人なのか? 魔族なのか? 魔物なのか?
あるいはこれに該当しない動植物なのか? 全く予想もできなければ確証もない。
生を受けなければただ無を彷徨うだけ……。
これを避けようと再び〈
この理由を長々と書かれた文献は、魔族側から流れてきた物だった。
そして回り回って私の手元まで来た。
この文献の最後には書いた者の名前が記されている。
──ルーデ・
(──この文献は転生を果たした魔王イースベルテ本人から聞き、二度目の戦いを見ていた魔族の少年が書き綴った物らしいけど……この名前……どこか引っ掛かるわ……この話を聞かされた魔族のルーデはどう思ったのかな? イースベルテと同じ様に法による支配をしようとしたのかな……? それとも……)
私はそんなことを考えながらアイルさん達の所まで急いだ。
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