第46話 死神の君主〈ロードオブグリムリーパー〉
【前回のあらすじ】
スタルとミヤの前に現れた骨竜はリルアによってあっという間に倒された。だが、その頃アイルとユイ、メシアは最上階に向かう途中、《
──── ◇ ─────🔹 ───── ◇ ────
最上階に向かう途中の広い廊下。
白い光沢のある床は、壁に設えてある明かりを反射している。
その中で、アイル、ユイ、メシア達の目の前には、漆黒の外套を羽織り同じく漆黒の
眼光は赤く、口元からは黒い霧を吐いている。
その光景を見たメシアは2人に告げる様に声を張った。
「アイルさん! ユイさん! あれはまずいです! 〈
アイルとユイはメシアの言葉を理解し、目の前の敵に対して身構える。
鎌が届かないギリギリのところで間合いを取り、相手の動きを見ていた。
メシアは口の霧に警戒し、自分を含め光魔法の膜を施していた。これは状態異常を防ぐ効果があるのだ。
「一応膜を纏わせましたが、完全に防げるかは分かりません。相手の強さが分からない以上警戒はして下さい!」
3人は相手の出方を窺っていたが一向に動こうとしない。
ただ、赤い眼光はメシアから視線を動かしていなかった。
(私から視線をお動かさない……──!? そう言うことですね……)
これに気付いたメシアは2人に言った。
「アイルさん、ユイさん。これの相手は私がひとりでします」
これにアイルとユイは慌てて言った。
「メシア! 何言ってんだよ!? 『あれはまずい』と言ったのはお前だろ!?」
「メシアちゃんには悪いけど、あれをひとりで相手にするには結構キツイと思うわよ……」
2人の言っていることは分かっている。
だが、メシアには確証があった。
あれはきっと自分を殺すことはないと。
なぜなら、ドーラは最上階の〈封印域〉にある【
その封印を解くには、皇族の生き血が必要。しかも、確実に封印を解くことのできる膨大な魔力量を保有する血族の者が。
「封印を解くには皇族の血が必要です。さらに言えば、私のように膨大な魔力を持っていれば封印を解ける可能性を大幅に上昇させます。ドーラはエミラから死魂魔法を奪う事を言われているのなら私を死に追いやる様なことはしないでしょう」
「死なないとはいえ重傷を負う可能性はあるんじゃないのか?」
このアイルの言うことは当然だと言える。
いくら殺されないと言っても強力な相手に対してひとりで向かうのはあまりにも……。
だがこれに続けたのはメシアだ。
「私はこれまでエミラに何度か命を狙われていた様ですが、直接手を加えることはありませんでした。直接手を下せば私を殺せたかもしれないのにです。恐らくエミラは封印を確実に解く方法を知ったのです。ですから膨大な魔力を保有する私を生きて捕らえる方向へと転換したのだと思います。しかし彼女も分かっていたはずです。私を捕えることは殺すことよりも難しいと。なので、回りくどくおじさまを利用したのでしょう。だとしたら、手加減された相手に私が重傷を負わせられることなどあり得ません!」
メシアの自信に満ちた言い方にアイルとユイは互いに顔を見合わせ頷くと、先に行くことを告げて進み始めた。
──だが……!
それまで動こうとしなかった〈
そして、漆黒の
「──くっ!」
「──ぅわっ!」
アイルとユイは小さく声を上げると元の場所まで飛び退いていた。
すると、またしても動きが止まり3人に目を向けていた。
「どうやらコイツは俺とユイ先輩を通す気はない様だな……」
「そのようね……。どうするメシアちゃん?」
問われたメシアは自身が一歩前に出ると言った。
「私がアイツを引きつけます。その間に進んで下さい! 絶対に手出しさせませんから!」
そう言うと光魔法を構築し始めた。
右手を掲げ魔力を収束させると周囲も白く輝きを放っていた。
そして──
「──
そのメシアから発せられた言葉の先には純白に輝く大鎌が出現し構えていた。
「──え!? 何で聖属性なの!?」
驚きの声を発したのはユイだ。
聖女でもない者が聖属性を使う……。
聖女以外でも全く使えないわけではない、だがそれを遥かに上回る膨大な聖魔法であった。
「光魔法を極めたら使える様になりました! 因みにリルア達ホワイトドラゴンは光も聖属性も扱えますけどね。さぁ! 行って下さい! 私がアイツをぶっ飛ばしますから!!(見られたくない物もあるし……)」
そう言うとメシアは、一瞬にして
これに対応しようと
それがぶつかり合った瞬間にアイルとユイはその横をすり抜け最上階に向かい、足を進めた。
死神がそれに視線を向けるが、防ぐ余裕はなく見送るだけであった。
〈ノガシテシマッタカ……。メイレイデナケレバキサマを殺していルところダ〉
「──あなた話せたのね……。でも、命令されていたとしても、私はあなたには負けませんよ!」
アイルとユイの姿が消えるのを確認すると目の前の死神を見据えて言った。
「さて! やるとしましょーか……。あまり見られたくなかったからしなかったけど──」
──龍人化を……!
メシアはそう言うと、全身が純白に輝いていた。
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