第38話 メシアの真実──そして始まりの合図
ドーラの言葉と共に、ライテルーザは漆黒のドームに覆われていた。
これは馬頭との戦闘を彷彿させる物であった。
しかしそれと違うのは、この漆黒のドームは魔力を抑制する物ではなく、術者である魔族側の力を増幅させる物であったのだ。
これを即座に把握したのはやはりメシアだった。
「皆さん!! ライテルーザが漆黒の
この言葉に感心したように言ったのは符魔法本体、ドーラであった。
「さすがだ、メシア皇女。この一瞬で感知するとはね。エミラ様が警戒するのも頷ける……。ついでにオマケを教えよう。この漆黒ドームは入ることは出来ても、出ることは不可能だ。ウチを倒すか、エミラ様を倒すかすれば消える。だがエミラ様は倒させない。ウチがお前達を殺すからなァァァアアア」
この言葉を言い放ったドーラに、自分の愚かさを悔いながら、ベルファは目を見開き大声で叫んでいた。
「──貴様! エミラは私を騙していたのだな! 姉君の娘が生きているなどと嘘を伝えなりすましたのだな!!」
これにドーラはケラケラ笑い始めると、馬鹿にしたように、見下すように、愚かな下等生物を見るように続けた。
「──嘘? 生きているのは事実だぞベルファ! 貴様は本当に馬鹿で愚かなのだなァ! 簡単に意思を制御されて、
ドーラの放った言葉の意味がわからなかった。
生きている? 本当の娘? メシアが?
直ぐに理解は追いつかなかったが、これまでのミリーザの言動や視線を思い浮かべながら姉に視線を向けた。
すると、静かに頷くミリーザの姿が目に入った。
これに声を振るわせ姉であるミリーザに問うた。
「──あ、姉上……。メシアは本当にあの時の赤子なの、か……?」
メシアに視線を送りながら聞いていた。
これにミリーザは──
「そうだ……。このメシアは私の正真正銘の実の娘だ……」
このことにアイルはやはりという気持ちがあった。
ミリーザの視線はやはり母親たる物であった。
アイルはメシアに視線を向けると、メシアもその視線に気付き、説明するように口を開いた。
「──ふぅ。それは事実です……と言っても、私自身直ぐには気付きませんでした。気が付いたのは私が〈
「それが、ミリーザ陛下だったのか?」
アイルはメシアに聞き返した。
これに応じるようにメシアは肯定した。
「私も最初は驚きました……ですが、陛下……お母さんが私を抱きしめて言ったの……『──生きてくれていてありがとう』て……」
メシアは涙を流しながら答えていた。
ベルファはメシアからミリーザに目を向けた。
その目には、──なぜメシアが実の子だと判断できたかその答えを待っているようであった。
だが、ミリーザから出た言葉は、全くもって魔力などと関係ない物であった。
「──自分がお腹を痛めて産んだ我が子を、間違えるわけがなかろう……。私は母親だぞ……?」
この答えにベルファは後悔に押しつぶされそうになっていた。
騙されたとはいえ、本来なら守るべき姉の実の娘に暗殺者を向けたこと──
今のこの場所に結果的に敵を招き入れてしまう原因を作った事に──
「すまない……姉上。そしてメシアよ……私はなんてことをしていたのだ……」
この後悔を軽くするように、メシアはベルファに向けて落ち着いた表情で言った。
「仕方ありませんよ……。全てエミラが企てた事ですし、それによく分かりますよ。得体の知れない冒険者が皇女になるだなんて、普通じゃあり得ないのですから。それに、産まれたての私を逃してくれたのは、私とお母さんのためだったのですから、恨んではいませんよ。だからベルファおじさま、これからよろしくお願いしますね」
この器の大きさ。騙されたとはいえ、命を狙っていた者にでも配慮する気持ちといい──
そして、その落ち着いた表情はミリーザの子供の頃そっくりであった。
これにベルファは確信した「──ああ、この
この雰囲気を壊すようにドーラは言った。
「──さぁ! 最後の挨拶は終わったかな?」
その言葉と同時に、ドーラを連れて来た騎士は黒に覆われその姿が3メートルほどの
そしてドーラは──
「エミラ様! 準備が整いましたァ! ライテルーザへの送り込みをして下さい!!」
この言葉に反応する様にどこからともなくエミラの声が聞こえて来た。
《──よく時間稼ぎ出来たわねェ……
じゃあ潰す事にしましょうか──》
このエミラの言葉を合図に、ライテルーザの各所から、アンデッドの集団が進行したのである。
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