第39話 【極光聖鐘】

 アイル達の目の前には、鎧人形アーマードールと化した2人の騎士が、ドーラの前に出ると戦闘態勢を取っていた。

 一体の騎士はベルファを切り裂くように素早く剣を薙いでいた。

 

 ──が、咄嗟とっさに動いたのは剣崎スタルだった。


 雷魔法で創り上げられた〈雷剣ライケン〉で、一瞬の内に鎧人形アーマードールの腕を剣ごと切り飛ばしていた!

 

 その隙にまたしても壁と窓をぶち破り、ホワイトドラゴンの長女リルアが一瞬の内にベルファを拾い、女帝ミリーザの側に下ろし、人の姿になっていた。

 

 その光景を見て、ユイは驚きながら言った。

「──なんでリルアちゃんが!?」


 リルアはこれに答えるように『──メシアお姉様のライバル』と言わんばかりの薄目をユイに向けながら言った。


「不穏な気配がしたので、『メシアお姉様の身に何かあるかも!』と思って向かっていましたら、窓からお姉様のおじ様に剣を刺そうとしてるじゃないですか! で、全速力で向かいました。まぁ、その前にそこの剣士さんが防いでくれましたけどね」

 

 この答えに、メシアはリルアに抱きつき頬を擦りながら頭を撫でている。

 リルアも満面の笑みで喜んでいた。

 

「──リルアにケンザキよ。我が弟を助けてもらい感謝する」

「メシアお姉様のお母様は私のお母さんと言っても過言ではないので当たり前です! 私は2人のお母さんがいるみたいで嬉しいです♪」

 

「僕は咄嗟に動けただけです……。結果、助かってよかった。あと、リスティラードではスタルでいいので……」

 

 リルアとスタルの返しに、ミリーザは笑顔で再度感謝を伝えた。

 

 腕を落とされた鎧は黒いもやを伸ばし、再び定着させていた。

 

「一瞬でその反応はすごいねェェ、お兄さァァァン。でも、この漆黒のドームの中ではいくら落としても無駄だよォォォオオオ! さっき教えてあげたでしょゥゥウウ! ってねェェェエエエ! だからさァァアアア! 追いかけっこしようかァァアアア? お前達にはエミラ様の位置は分からないでしょゥゥウ? だったら、ねェェェエエエエ!!」

 

 そう叫ぶと、ドーラのカラダはゆらめき、空間に沈むように消えようとしていた。

 これに気付いたメシアは──


「【白の裁きホワイトジャッジメント】!」

 

 これと同時に、ドーラを捕えるように無数の純白の鎖が伸びたが間に合わず、ドーラはそのまま空間へと消えていった。

 

「──! 間に合いませんでした……!」


 悔しそうにそう言うメシアにリルアは「──まずは目の前の鎧人形アーマードールを倒しまいましょう」と言った。


 これに同意するように、アイルは言っていた。

 

「リルアの言う通りだメシア。ひとまずあの鎧をなんとかしないといけない。中途半端なダメージじゃすぐに元に戻る……。だから、消滅させる程のダメージを与えて跡形なく消さねーと!」

 

 これを聞いたユイはアイルに同意した。

 

「──じゃあすぐに終わらせようか……確実に……!」


 この言葉と同時に膨大な魔力がユイから溢れ始めていた。

 アイルとスタル、そしてミヤは──。



「「「──え!!!?」」」



 同時に声を上げていた。

 メシアもこの異常な魔力に、「え?」と言っている。

 騎士団長も、大臣も、その部下も、そして、ミリーザもこの異常な魔力に気付いている。


 

「──聖 槍ロンギヌス──」



「──!? ユイ先輩! それちょっとやりす、ぎ──」


 アイルが言った時にはすでに遅かった。


 轟音と共に純白に輝くそれは、鎧人形アーマードールはおろか、リルアが壊した壁と窓どころか城の4分の1を破壊していたのだ。

 

 しかし、ドームは破ることはできず、漆黒の壁に当たった瞬間に消滅していた。

 これを見たユイはひとこと言っている。

 

「──やっぱり無理なようね……(壊せないかなぁと思ったんだけどね……)」

「あの、ユイ先輩? ひょっとしてあわよくば『壊せないかなぁ?』とか思ってましたか?」

「──えっ♡ やっぱり私とアイル君は相性いいね〜」


 これを見ていたメシアは「──今はそんなことは言わなくていいのですよ! ユイさん!」頬を膨らませながら怒っている。

 ミヤはため息を吐きながら、言っている。


 

「──で? これからどうするんだい? あのドーラとかいう奴か、エミラを倒さないと消えないんだろ? このドーム……」



 そう言っていると、リルアが唐突に口を開いた。

 

「──メシアお姉様! ライテルーザの街に大量のアンデットが侵入しているようです! リルとルルから思念が飛んできました! 今は2人が、これ以上侵入されないように食い止めてるようです!」



 この報告に、アイルは「──くそ! 後手に回ってる!」と叫んでいた。

 スタルはこれに落ち着くように言い、言葉を続けた。

 

「──今即座に動かないといけないことは、住民や現在、帝都内滞在している者達の安全確保だ!」


 これに即座に反応したのは騎士団長のティグ・レイバーンであり、「──直ちに騎士全員を向かわせます!」と言い陛下に許可をもらい部屋を後にした。


 続けてスタルが言った。

 

「僕とミヤは急ぎ向かう! ユイとアイルはドーラの行方を探してくれ!」

 

 スタルは叫ぶと、ミヤに「──行くぞ!」と言った。

 これをスタルに言われ少し不服そうにしていたが、2人は部屋を後にした。

 

 2人を見送ったアイル達は全く見当がつかないドーラをどうやって探すかを考えていた。


 だがユイが、「──その前に」と言うと、さっきと同じ様に膨大な魔力を練り上げていた。


 そのユイの全身を白い光が包み込み、光の衣を纏っている様な姿になっていた。

 これに、メシアが尋ねていた。


「どうするのですか? ユイさん?」


「さっきメシアちゃんが言ってたでしょ? 『──この漆黒は』だって……。だから、どこまで役に立つかわからないけど、私の聖魔法で少しでもって思ったの……」

 

 ユイはそう言うと──



「──極  光  聖  鐘オーロラホーリィベル──」



 この発せられた言葉により、漆黒のドームの効力を下げる光輝くカーテンがライテルーザを覆っていた。

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