第33話 会議の始まり方!

 数分歩き、城の入り口を入って右側にある会議室へと着いた。


 内装はやはり立派だ。

 部屋全体に金や赤の刺繍が施された絨毯が敷かれている。


 鮮やかに装飾された長テーブルと、椅子は優に30人以上が同時に席に着くことのできる程揃えられてあった。

 中に入ると、数人の人達が席に着いていた。

 

 そして、部屋全体を見渡せる位置には女性が座っている。

 間違いなく女帝のミリーザ・ライテルーザその人だった。


 ひときわ立派に装飾された椅子に腰を落とし、俺達に視線を向けている。

  陛下から見て左前方には、メシアの椅子と思われる物がある。


 向かって正面には、白い髭を蓄えた、身長がありそうな老人がいた。

 その右隣には、額に大きな切り傷のある、銀の鎧を着た大柄な男と、すぐ後ろに控えるように黒髪の小柄な女性が立っていた。

 

 俺達はメシアはに促され、その向かい、つまりメシアの隣に俺、その隣にユイ先輩、次がミヤさん、そして一番端に剣崎先輩が座った。


 それぞれが席に着くと、騎士に拘束され連れられた、ベルファ公爵が入ってきた。

 テーブルを挟み、陛下の対面へと座らされていた。

 全員が席に着いたのを確認し終えると、メシアが進行するように口を開いた。

 

 

 

「皆様、ここまで来て頂きありがとうございます。これから皆様に聞いて頂きたいことと、聞かせて頂きたい事がございます。まずはそれぞれ自己紹介をお願いします。私は先程、自己紹介を済ませておりますので省かせて頂きます。それでは、すみませんがアイルさんお願いしてもいいですか?」

 

 そう言われ、俺はその場に立ち上がり自己紹介を始めた。

 

「俺……じゃなくて……わたし? ──えっと……」 

 俺が口籠っていると、メシアは俺の腕をちょんちょんと叩き、耳元で小声で耳打ちした。


(アイルさん、普段通りで大丈夫ですよ♪)

 俺の緊張した姿を見て少し口元が緩んでいる。

 そう言われ、ゆっくりと呼吸をし心を落ち着かせた。

 

「──俺は、メシア……皇女、様……の仲間の──」


 でもやっぱりこの呼び方、どうしてもぎこちなくなってしまう。

 それにため息を吐きながら、メシアが再度俺に言ってきた。

 

「アイルさん! ここには最低限の人しかいません。なので、呼び捨てで構わないですし、逆に皇女様とか付けられたらどうもムズムズします! それに私は今でも仲間のつもりですよ? 私とアイルさんの(一緒に旅した)ではないですか!」

 

 再び促され、口を開こうとした──が……


「──ねぇ? アイル君? メシア皇女様とはどんな関係だったのかしら?」


 今言うべき言葉ではない事をユイ先輩が言ってしまった。

 ミヤさんは隣で驚愕の表情をしている。

 剣崎先輩は頭を抱えている。

 

「──だから、以前話した通り一緒に旅した仲ってことですよ! それで準魔王と戦って──」


「──も入りましたよねぇ……」


「ちょっと待ってくれ! メシア! それは端折りすぎだぞ!? 変な誤解が生まれるだろ!?」

 

「──アイル君。どう言う事かな? 私ですら一緒に入った事ないのに! お布団では寝たけど!」


「お風呂の後、私も一緒に寝ましたよね?」

 

 いやいやいや! これは誤解されてしまう! 

 そう思い、目の前の老人に目を向ける──。

 目が怒っている。

 

 隣の騎士に目を向ける──。

 剣に手が掛かっている。

 

 後ろの女性に目を向ける──。

 軽蔑の視線で見ている。

 

 そして最後に陛下に目線を向ける──。

 口元は辛うじて口角を上げている……。

 でも、目が明らかに怒っている。

 

「メシア! ちゃんと説明しよう!? 確かにお湯には入ったよ! 入ったけども! あれは罠にハマって地面が崩れた先に温泉があっただけだよな!? それに一緒に寝たのは2人だけではないし、他の仲間もいたよね!?」

 

 必死に説明した。

 本当に必死に!

 

「アイルさん。後で、ユイお姉さんのお話し聞かせてくださいねぇ〜」

 

「──ぇ?」


「一緒に寝たんですよね?」

 

「私の体もよねぇ♡」

 

「──!!!? 揉んだとはどういう事ですか?」


「マッサージしただけですよね!?」

 

 恐る恐る周囲に目を向けると──


 

 ──あ……これもうダメかも……


 老人はテーブルを叩きつけ、騎士は剣を抜いている。

 後ろの女性も両手に刃を構えている。

 

 陛下は──


 メシアと一緒にお風呂に入り、一緒に寝たのならその責任を取れと言う……。

 お願いだからメシアの口からちゃんと説明して欲しい……。

 

 こうやって、とんでもない状態から始まった。



 

 

 

 


 

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