第32話 メシアの成長
どう話そう……。
最初に浮かんだのはその言葉だった。
たった今、圧倒的な力で馬頭を始末したメシアの目には涙が見えていた。
──だけど、その涙とは裏返しに、眉は怒りの形を取っていた。
「──と、とりあえず、順を追って話そうと思うけど、まず──」
と、言いかけた時に、剣崎先輩が口を挟んできた。
「
そこに、ちょうどスケルトン共を倒し終えたユイ先輩とミヤさんが合流し、同じ事を言った。
俺は咄嗟に気付き、(──そりゃあそうだよな……)と思いながらまずは、メシアにそれを伝える事にした……。
──エミラを誘き出す為に、剣崎先輩とユイ先輩、そして俺の魔法を合わせて動くダミーを造ったことを。それを聞いたメシアは、「ちょっと待ってくださいね──」そう言うと、目を瞑り何かを探っているように見えた。
俺は、それが何か聞こうとしたが、ユイ先輩はそれが分かったらしく、驚きながら口を開いていた。
「──これは凄いわね……。普通の魔力感知じゃないわね……光り魔法を最大限に変化させたものだわ……」
ユイ先輩の言葉に俺は続けて聞いた。
「光り魔法の変化ですか?」
「そう、私も多少の光魔法を使えるからその感覚が何となく分かるけど、これは次元が違うわよ……これだったらダミーも見抜けるんじゃないかしら……」
感知を終えたのか、目を開いたメシアがユイ先輩のこれに答えていた。
「──お姉さんの言う通りです。この魔法は私が光魔法で感知能力を書き換えて創った〈光極感知〉です。なので今、現状が分かりましたよ」
メシアは感知の結果を教えてくれた。
「正直──ここまで精巧に造られたダミーは凄いですね。私の感知を使ってもじっくり観測しないと間違えそうです……。だから、エミラは最初は気付かず、森から離れた場所まで誘き出されていますね……でも、今は気付いています。だけど、敢えて破壊していない様ですね……」
「気付いたのに破壊してない……? 何でだ……」
「恐らく、私がお馬さんを消した事で、警戒をしているんですよ。私に気配を探られる事を……。これだけのダミーを壊そうとすればそれなりの魔法が必要となります。だけど、その魔法を発動してしまえば、自分の居場所を知らせる事になると……。まぁでも、私は分かりますけどね」
笑顔で言っている。
メシアは一体どこまで強くなっているのか? と言う疑問が浮かばずにはいられない。
そして続けてメシアは言った。
「やっぱりこの裏には、色々エミラが関わっているのですね」
『やっぱり』と言う言い方に、メシア達もエミラについての何らかの情報を得ているのだと思った。どこまで知っているのか聞こうとしたが、メシアは──
「ここでは何なので、城の会議室まで行きましょう。陛下にも聞いていただきたいので」
そして足を向けようとしていたメシアにユイ先輩が慌てて言った。
「あの、メシアちゃん! このままエミラを放っておいたらいけないんじゃ……」
そう口にしたユイ先輩の頭をミヤさんは叩いていた。
「──
「あんたはバカかい!? 第一皇女様だよ! アイルは元仲間だからいいとしても、あんたは会ったこともないんだろ! それに名乗ってすらないじゃないか!」
「……そう言われれば……」
ミヤさんにそう言われ、ユイ先輩は自己紹介をしようと口を開こうとした──だけど、それより先にメシアが笑顔で言っていた。
「お姉さんはユイさんと言うのですね」
そう言うと、メシアは右手を胸に置き、軽くお辞儀をすると言った。
「では、改めまして──、私はアイルさんの仲間であり、現在はこの〈光帝都ライテルーザ〉第一皇女メシア・ライテルーザと申します」
そう返されて、ユイ先輩ではなくミヤさんが慌てて頭を下げて聖女である事と自己紹介をした。
これにユイ先輩も続けた。
「私も、初めまして。
これに驚いたのメシアであった。
「そうですか、お姉さんが最年少で聖女になったあのユイ・サンクトゥリアさんでしたか……。以前、〈聖教会リサル〉に行った際、ユイさんの姿が描かれた物を見させてもらったのですが、お姿が違うので気付きませんでした。ですが、かなりの聖属性の魔力を感じましたので、なんとなく聖女であるのだろうとは思っておりました。それに、アイルさんと同じ様にその姿の変化……ひょっとして転生されたという事でしょうか……?」
後で俺に聞くと言いながらも、すでに答えに辿り着いているメシアの思考に驚いていた。
ユイ先輩も驚きながら続けた。
「──すごいわ……。そこまで予想がつくなんて……それにしても、私ってそんなに有名だったのかしら?」
「それはそうですよ、聖教会リサル史上で10歳にして聖女になるなんて過去に無かった事なので」
やっぱり、ユイ先輩は有名だったらしい。
そしてさらに、剣崎先輩も自己紹介をすませると、ユイ先輩の疑問に答えた。
「──さっき、感知した結果からすればエミラはすぐに行動には移さないでしょう……。恐らく何か準備をしているのかと思いますが、現状ではそれが何か分かりません。なのでこちらから無闇には動くことはしない方がいいでしょう。ですが、何かしらの対策を取らないといけませんね」
メシアはそう言うと、魔法を構築し始めていた。
「──おいで、
メシアのひと言で、先ほどの騎士と同じ様に白いそれが現れた。
だが今度は、騎士ではなく、一体で国一つを消すことのできる、ホワイトドラゴンが姿を現していた。
「──マジかよ……。メシアお前、ドラゴンも喚べるのかよ……しかも、3体……」
「──これ、ホワイトドラゴン!? 嘘でしょ!?」
俺に続きユイ先輩も驚いていた。
ミヤさんは唖然としていた。
「──えっと……光属性を極めたらホワイトドラゴンに懐かれちゃいまして……。喚べるようになりました。まだ子ドラゴンですけどこの子達すごく頑張り屋さんなんですよぉ♪」
剣崎先輩は気を失う寸前で耐えている。
このメシアのとんでもない成長に驚くばかりだ。
そして、メシアはライテルーザの警備を言い渡すと、ドラゴン達は、──クォン! と返すと、空へと飛び立った。
「──じゃ! お城いきましょうか!」
平然と言うメシア……。
俺もメシアに、──聞くことが増えたな……そう思っているとは知らず、メシアは俺達を案内するように城へと向かったのだった。
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