第6話 招待される
――令和○年4月27日(火) 三時間目終了後の休み時間――
「せーがわ、さん」
教室近くの、女子トイレ。私はお花を摘み、手洗いする。そこに私を呼ぶ声。反応し、そちらに振り向く。そこには……ニコニコ笑顔の、早坂莉緒、さん。他の気配、探るけど、誰もいない。
「……な、に?……」
早坂さん、入学式の翌日から、何度か話し、掛けてくる。早坂さんに一度、探り入れるも、彼女は気にする、様子もない。勘は良いから、知らないふり、かも。おかげで私、緊張する。
「週末からゴールデンウィーク始まるじゃない?」
言われて思いだす。たしかにお休み、五日続く。だから、コクリ頷く。けど
「でね。連休の真ん中の五月三日。清川さん――お暇あるかな?」
何やらお誘いの話。でも、用事あると、断らないと。そう思うけれど、彼女への興味、あり過ぎで、お誘いの中味、知りたくて。
「……何を、するの?」
私が誘いに乗る――彼女は確信してるように、輝く笑顔で――
「女子会をするの」
女子会?……聞きなれない言葉。少し考え込み、反応遅れて。その様子から、途惑いに見えるか、早坂さん、言葉を足す。
「えっと、女子だけで集まって、おしゃべりするの。今のところ――小野夏実さんと津島恵子さんが来てくれるの。でね、場所は私の家なんだ」
なるほど、女子だけの会合。でも誘うのは、何故私なの、だろう。疑問が呟きになり……
「……どうして、私?……」
「昨日のお礼にってのが半分。もう半分は、時々、清川さんが、鈴城くんに伝えたくないこと、ありそうに見えてね。どうせなら、私に吐き出してみないかなって。どうかな?」
早坂さん、私の耳に顔を寄せ、小声で語りかける。昨日のお礼、そう言われても、彼女を尋ねる人物、ただ教えただけ。
それに水人に、伝えたくない事……それはないけれど、盗撮犯捕縛劇、あの水人に立腹中、お灸据えたい、と思ってる。だから、考えてみる……そうか、女子だけの会合、水人は場に――私の傍に、水人は居られない。それが罰に、なるはず。なら早坂さんに、返す答えは……
「……家の人に、聞いてみる。それから返事、で良い?」
「おっけーだよ。よろしくね」
早坂さん、言葉通りのハンドサイン、それと笑顔を見せ、トイレの個室へ、入って行く。私は見届け、家の誰に、この話をするか、考え始める……
――令和○年4月27日(火) 深夜――
「折り入ってのお話だそうだけれど、何かしら?」
ここは母屋、祖母様仕切る、お茶の部屋。学校から戻り、祖母様に内緒話、お願いと伝える。時間と場所、指定され、そうして今、正座で向かい合う。
「……同じ教室の子、お家へお誘い、あるの」
「あらあらまあ、お友達が出来たのね。婆は嬉しいわ。どなたかしら?」
祖母様にお誘い、打ち明ける。祖母様、ニッコリ笑み、上機嫌。お相手、尋ねてくる。もう友達、だろうか?
「……早坂、さん。それで、お誘いの日、あの用事の日、なの。祖母様、どうするのが、いい?」
「そう、早坂さんという女の子ね。でも、その日なのね。それは残念ねえ」
祖母様、早坂さんを、心に留め。でも、参加は不可能、そのニュアンスで、残念そうな顔付きに。やはり無理、だろうか。私も、顔が曇る。だから……
「まあまあ、一美は是非ともお誘いに乗りたいのね。なら、婆にお任せなさい」
祖母様、解決を買って、出てくれる。出来るのだろうか、疑問に思う、呟きが漏れる……
「……いいの?」
「ええ。そうね…………時間は午前十一時から一時間、あなたが参加できる時間が、この程度で良ければ、ね」
嬉しさの余り、祖母様のお膝、飛びつく私。
「……ありが、とう」
「まあまあ、昔に戻ったみたいに」
祖母様、頭を撫でてくれ。私は喜びに、満ちる。甘えつつ、早坂さんに、明日伝えよう、そう心に決める……
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