第3話 愛の証
ーー……ゆいちゃん、こよみはね、ゆいちゃんのことがだいすきだよ!だからね、ひっこししてもこよみのことわすれないでね……!
肌寒い春の日、目にいっぱい涙を溜めながら私は結ちゃんとお別れをしていた。
ーー……こよみ、またかえってくるからっ、かえってきたら、ゆいちゃんのこいびとにしてください……っ!
ーー……また会ったとき、わたしに好きな人がいなかったらね。
ーー……むー。こよみのことそうやってこどもあつかいするー!こよみはほんきなのに!
ーーごめんごめん。将来のことはわからないからさ。暦だって引越し先で好きな人が出来るかもしれないじゃない?
ーーっ!できないもん!こよみはゆいちゃんひとすじだもん!
私がわがままを言うものだから、結ちゃんは困ったように笑っていたことをよく覚えている。
別れから8年後、私はこの街に帰ってきた。
そしてその1年後ーー。
「まさか、教師と生徒として再会するとは思わなかったな」
私は引越しをしてからもずっと結ちゃんのことが好きだった。最初はキッズ携帯でメッセージのやりとりをしていたのだが、携帯を水没させてしまい、連絡先がわからなくなっていたのだ。
「……結ちゃん、私の気持ち覚えてるかな……?」
切なさに胸が絞めつけられる。
なぜなら。
「……薬指の指輪は、ペアリングだよね……?」
そう。
薬指には“愛の証”が輝いていた。
☆
「おはよ、千夏!朝ご飯出来てるよ!」
「おはよう、結。いつもありがとね」
「いえいえ。晩ごはんは千夏が作ってくれてるんだからお互い様だよ」
わたししか知らない千夏、その1。低血圧で実は朝が苦手。目覚まし5個とスマホを駆使している。
しっかり者の千夏のイメージとギャップがあってかわいらしい。
「うーん、お弁当も結だからしてもらいすぎな気がするんだけどな〜」
「いいのいいの。千夏はゆっくり寝てて」
「朝活できる結がちょっと羨ましいな」
わたしは早起きして毎日ジョギングと筋トレをしている。これは高校からの習慣だ。だから、わたしはスリムな身体を維持出来ている。
実はと千夏がわたしに耳打ちをする。
わたししか知らない千夏、その2。かなり着痩せするからわかりにくいけれど、千夏は胸がかなり大きい。そして未だに成長中だ。
「……じゃあ、週末下着買いに行こっか!」
「うん!」
また、ブラがきつくなってしまったらしい。
正直、ちょっと羨ましい。
わたしたちは朝ご飯を平らげ、仕事に出かける支度をする。
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
今日も1日が始まろうとしていた。
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