第80話 二人で写してもらっていいですか
いつもの、穏やかな「
けれど、本部前テントを中心に盛り上がってしまった以上、そこにもそのMCの子を連れて行かないと不公平だ。
蒲池結花里がいないあいだ、自分の出番が終わった
その伝言は
新聞部員ではない青葉里枝を引っ張り回すのもよくないし、本部にこの子がいてくれたほうが心強い。もしまたあの三人組がらみの何かが起こったら、いや、それ以外で何かあったとしても、この子なら的確に判断して、知らせるべきことを友加理に伝えてくれるだろう。
友加理が蒲池結花里といっしょに歩いていると、写真部員が寄って来た。
江戸時代からの
梅と蒲池結花里の写真を撮ったあとに、写真部員は言い出しにくそうに
「あの……蒲池さんと二人で写してもらっていいですか」
と言い出す。これもOKすると、ほかの写真部員に写真を撮ってもらう。そうすると、こんどはその写真部員がまた蒲池さんを撮りたいと言う。だったら違う場所がいいんじゃない、と友加理が言うと、いい場所を探して移動して、蒲池結花里を撮り、そして自分が蒲池結花里といっしょに写る。それを撮った別の部員が……という繰り返しだ。
こういうのを芋づる式というのだろう。その芋づるの途中で、だれかがレフ板やフラッシュを持って来た。すっかり撮影会だ。
深沢李咲も新聞部の写真担当で、この子は自分が蒲池結花里といっしょに写りたいとは言わず、写真部員といっしょに写真を撮ったり、レフ板を持ったり機材を運んだりして写真を撮るのの手伝いをしていた。
感心なことだ。
撮影班を引き連れての公園歩きになり、しかも撮影班の人数が増えていく。
こういうときに、だれも
「じゃあ生徒会長もいっしょに入りませんか?」
と言わない。女の子とは残酷なものだと思う。
そのほうが気楽でいいからいいけど。
すぐには戻れそうもなくなったので、
純音の出番が終わった頃に純音から
「おっけー」
「でもわたしも行きたかった(+「ぶすっ」を表現するらしい絵文字が二つ)」
というメッセージが来たので
「おみやげ買って行ってあげるから」
と返事して、ついでになだめるような笑顔のスタンプをつけておいた。
最初に友加理といっしょに写真に写ってくれたのは、あの、
そうするとほかの同年代の子も集まってくる。瑞城の制服の子も私服の子もいた。私服の子は、その二人の知り合いらしいけれど、瑞城の子かほかの学校の子か見分けがつかない。
そこに、「二大お嬢様」の一人の
蒲池結花里ほどではないけど、安野夏子も人気で、
瑞城の子といっしょに写真を撮って、あとで悪用されないかな、と思わないではなかったけれど。
いいか、と思った。
朝から瑞城の制服を着ている子はちらほらと見かけている。それで明珠女の子とトラブルになったという話は本部に来ない。生徒会長の自分のところにも来ない。
それに、写真のファイルは明珠女の写真部が持っている。もしその不純学校間交遊なんとか委員会とかいうのが瑞城に実在するならば、そのファイルを送りつけてやればここに写っている瑞城の子たちはたいへんなことになるな、と悪いことを考える。
写真部員も乗り気になってきて、普通に並んで撮る記念写真ふうの写真だけでなく、梅の花に顔を近づけているところのアップの写真とか、一人ひとりのスナップ写真とかも撮ってくれた。
安野夏子は仕事があるのですぐに離れて行ったけれど、写真部員は入れ替わりながらずっとついてきた。
そのうち朝にいた商店街のお兄さんおじさんたちとも会って、友加理と蒲池結花里と写真部員と瑞城の子たちとで、このグループとも記念写真を撮る。
そのグループと別れて、やっと
暗闇門というのは昔は城門があったところだ。いまは両側が深い竹藪になっていて昼でも暗い。ほんとうは別の名まえがあるのだろうけれど、みんな「暗闇門」と呼んでいる。その向こうが華道部と陶芸部の展示のある集会所だ。
その暗闇門を出て写真部員の攻勢からようやく解放された。
ゆかゆか蒲池結花里と友加理と、新聞部の里絵と李咲の四人に戻る。
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