第71話 さっそく来たよ
「で、白酒とかはないの? おひなさまなのに?」
MCのアナウンスをしていたゆかゆか
いちばん近くにいた
「あ、
結花里は勝手に話を進めている。こんどは市辺正実も
「さあ、なんででしょうね?」
などと言っている。わからないらしい。
そこに、放送の音響調整をやっていた、小柄でセミロングの髪の子が小走りで来た。「二大お嬢様」のもう一人、
結花里はだれも来なければそのまま話を続けるつもりだったようだが、夏子が来たので、話を止めて待っている。
夏子が結花里の耳に何かささやく。小柄な大お嬢様と、ゆかゆかと。なんか。
……なんか、絵になる。
友加理ではこんなに絵になれない。
夏子とでも、ゆかゆかとでも。
ちょっと、嫉妬。
で。
「ああ。はい? ……はい。えっと、前にやってみたことはあるけど、あんまりおいしい感じにできなかった? そういうことでいい? ……あ、はい。ということだそうです」
それにしても、夏子、なぜそんなことを知ってるんだ? 学年は一つ下なのに。
お嬢様ならばいろんなものごとの由緒を知っているのだろうけど、ホワイトチョコレートを使わない由緒なんて……なぜ?
「あ、それから、業務連絡ですが、開会式のファンファーレの演奏をご担当くださる吹奏楽部メンバーのみなさま、本部テントまでお越しください。繰り返します。開会式のファンファーレの演奏をご担当くださる吹奏楽部のみなさま、本部テントまでお越しください」
あの吹奏楽部、存続できるのかな、とかいう心配は、いまはしないことにする。
しばらく間をとってから、蒲池結花里は
「では、開会式まで、いましばらくお待ちください」
と結んでマイクを離れた。
蒲池結花里は低いけれどよく通る声でアナウンスしている。しかも、場内の案内を具体的にどうやるかなど、蒲池結花里に渡したアナウンス台本には書いていない。たぶん
まして、白酒がだめな理由とか、ホワイトチョコレートのココアが失敗した話とかは、明珠女の生徒ならばけっして思いつかなかった。そして、瑞城の子の反応もうまくいなしてくれた。
この子に頼んでよかった。
それで蒲池結花里が畳のほうに戻ろうとしているところへ、市辺正実が寄って来た。
「さっそく来たよ」
だれが、というのは、顔を上げただけでわかった。
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