第58話 友加理に任せよう!
「文化祭の英語スピーチコンテストでは、
新治附属は県南の名門校だ。
「ああ、あれ?」
文化祭実行委員長の
「それは、英語部が出るコンテストの司会を英語部に頼むわけにはいかなかったからだよ」
それに英語部には問題の三人娘の一人
友加理が押す。
「つまり、司会とかはほかの学校の子に頼んでもいい、ってことだよね?」
「うぅんんん……」
純音は長い
「あれは文化祭のなかの一イベントだったし、文化祭全体の、ってわけじゃなかったから……」
スピーチコンテストのばあいもほんとうはやりたくなかった、ということだろう。
友加理がさらに押す。
「でも実行委員会主催だったでしょ? それに、明珠女のスピーチコンテストといえば、文化祭でもいちばん目立つイベントのひとつだよ?」
「ああ……うん……」
純音だってわかっている。
純音は代案を出せない。しかも、ここまでいろいろな案を出してきたのは友加理で、純音はそれを却下し続けた。
ひとつやり方はある。それは「おひなさまだからって、着物にこだわることないじゃない?」と言い、純音自身がやるか、友加理にやらせるかだ。洋服でならば、純音だって着くずれを心配することなく役割を果たせる。
でも、
動きがとれなくなっている純音のかわりに、
「ほかの学校の子で引き受けてくれそうな子がいるの?」
ぼそぼそぼそと言ってから、志穂美は友加理の顔をじっと見ている。
「うん……もちろん、頼んでみないとわからないけどね」
そう言った友加理から志穂美は目を
少ししてから、心配そうに顔を上げる。
「着物は着られる?」
「それは問題ない。半日ぐらい型くずれさせずに着てられると思うよ」
「でもいまから頼んで引き受けてくれる?」
「うん……」
友加理は少し考える。
「うん、たぶん、だいじょうぶ」
「それ……」
志穂美がまた口ごもったところで、
「よし。友加理に任せよう!」
と純音が言った。
有無を言わせない言いかただった。
たぶん、このまま志穂美に質問させ続けると、志穂美が慎重論を言い出すと思ったからだろう。たしかに志穂美にはそういう慎重すぎるところがある。
「ありがとう」
友加理は言って立ち上がった。志穂美のほうは見ないで、コートとマフラーを手に取る。
「うまくいってもいかなくても、
言いながら手早くコートを着、マフラーを巻き、鞄を肩にかけて部屋を出る。
笑顔で見送る純音と、不安そうに振り返る志穂美と。
……後悔はなかった。
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