プロムナード
第48話 愛はかわいそう
桃っぽいジュースとおまんじゅうとみかんと。
……甘いものばっかりだな。
でも、ぽっちゃりと言ったって、けっして目に見えて太っているというわけではない。同じ学年の生徒たちのあいだでは、お肉のつきぐあいはまん中ぐらいだろう。
ただ、
そういえば、あの愛なんかも
千枝美は、締め出し事件のあと、樹理とも積極的に話すようにした。
寮を出る以外に樹理を避ける方法はない。千枝美自身が樹理より成績がよくなり、寮委員長とか副委員長とかになれるならともかく、そうでなければ、いまのままの樹理を受け入れるしかないのだ。
そうやって、話をしたり、選択科目の理科の実験で協力したり、地歴の授業でいっしょに発表材料を作ったりを重ねた。
それで樹理も「悪い子ではない」ということはわかってきた。前に何かで気まずい関係になった子が相手でも、次の機会にはまず普通に相手にするところから始める。もっとも、根に持っていないかというと、持っていそうなところ、それもものすごく持っていそうなところがすけて見えるのだけど。要は、その「根」が表に出るところに上がってこないように気をつければいいのだ。
でも、あの愛は、苦手とわかったらできる限りぶつからないようにするだろう。
澄野愛はもともと寮のなかでどこのグループにも入れないで浮いている。それに、さらに樹理を避けないといけないなんて。
かわいそうな愛……。
けれど、まあ、愛は成績いいから、いいか。
あの子なら、成績で樹理を逆転して寮委員長になれるかもしれない。
いや、いまからは無理でも、後期は委員長は必ず交替するから、樹理が一番のままでも二番の愛が委員長になる。
確実に。
そして、委員長になったら、やっぱり苦労するだろう。
ああ。
かわいそうな愛。
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