第7章:澄野 愛
第39話 樹理の部屋
樹理の部屋に入って最初に思ったのは、ああ、明るい、ということだった。
暗い色のものが何もない。
学校の教科書とかはしかたないが、ノートやファイルも白だし、持っている本にも白いカバーがかけてある。化粧台や引き出しはもともと白だ。熊か何かの大きいぬいぐるみがあったけれど、それも白い。
そして、ベッドもきれいにベッドメイクしてあって、白い枕カバーと白いシーツと白い布団カバーしか見えない。
愛の部屋は、最初から作り付けの調度は白いけれど、もっといろいろな色のものがごちゃごちゃしている。
だから、それに
樹理にはそんなことは起こらないだろう。
それにしても、毎日、こんなにきちんとベッドメイクまでしているなんて。
愛は、くっついてしまった髪の毛とかは掃除するし、シーツは敷き直すし、寝ていてへこんだ枕はたたいてかたちを整えるけれど、それだけだ。布団はかぶせたままにしておくと
それに較べると、樹理のベッドはきれいだ。
だから、座るのは
ベッドの端に紙袋が置いてある。それが、茶色っぽい、紙袋らしい色をしているのが、ここでは目立つ。
樹理も満梨さんのお店に行くんだと思う。
意外だった。
あの店には全体に
明珠女の生徒と瑞城女子の生徒とのあいだでは、満梨さんの店のなかやそのまわりでは互いに争わない、悪口も言わないという習慣ができている。あの店で言ったことやったことを店の外でとやかく言わないことにもなっている。しかも、愛には仲の悪い瑞城女子の生徒がいるわけでもなかったから、満梨さんの店にはよく行く。
でも、樹理は、瑞城女子の生徒を毛嫌いしていたはずだ。小さい口げんかや言い争いはもう何度もやっているらしい。
その樹理が、満梨さんのお店に?
何を買ってきたか興味はあったけれど、勝手にのぞき見するのはよくない。
それで、問題を解いている樹理の後ろ姿を見ていた。
きれいだった。
背筋をきちんと伸ばし、問題用紙と答案用紙をきちんと見ている。
考えるときには、右の
そして、ひとしきり何か書いて、また考えるときにはまったく同じ姿勢になる。
何度繰り返しても、それが変わらない。
自分ならどうだろうと愛は考える。
背を丸めて頭を低くしたり、顔を両手で覆ったり、鉛筆やシャープペンシルを置いたり、また持ったりを繰り返す。
樹理はそうならない。
あの妹なんかは、しばらく考えても解けないと、大きく伸びをして
「あー、わっかんなーい!」
と叫んで、そのまま畳の上にごろっと寝てしまう。樹理はもちろんそんなこともしない。
樹理の顔が斜め後ろから見える。
紙に手早く何かを書いている。その動きに合わせて、少し淡い色の髪の毛が揺れる。
樹理が机を照らすために使っている使っているランプも白い。その白いランプの色が、樹理の頬の産毛を柔らかく白く照らしている。
樹理の顔の
樹理って美人だったんだ、と愛は思う。
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