第24話 どこかでお茶を
「寮に上がる?」ときかれて、
ほんとうはこの寮には入ってみたかった。
姉の
それに、と、優は、朝に見かけた姉の同級生か上級生のことを思い出しそうになって、思い出すのを止めた。思い出すとよけいに心が苦しくなる。
「じゃ、優さえよければ、どこかでお茶とか飲んでいかない?」
「え、でも」
ほうっておいたらひとりでに「いいよ」という断りのことばが出るはずだった。
ほかの受験生のほとんどは、この学校に姉妹が通っているわけではないのに、自分だけが……という理屈が続くはずだった。
でも、それで有利になるのは試験前だからだ。試験が終わってからはその理屈は通用しない。
いまの疲れ切った頭では、優は姉の理屈をはね返す理屈を考え出すことができなかった。
「うん。じゃあ、さ」
優は、だから、条件をつけることでせめてもの抵抗をすることにした。
来るときに、降る雪のなかで見た店の姿がよみがえってきた。
姉は、たぶん、行き慣れないお店ならば、ためらうに違いない。
「駅の斜め前のケーキ屋さんか何か、あるでしょ? そこに連れてって」
「うん? ああ」
姉はこのままとまどったところを見せてくれるのかな、と優は思う。でも、愛は言った。
「
優しい笑顔で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます