第18話 平松均美さんのこと
休日だからといって、朝遅くまで寝ていてはいけない。
それは
でも
樹理の家でも違った。
樹理の両親は二人ともふだんの日は朝早くから夜遅くまで働いていて、そのかわり休みになると昼ごろまで寝ている人だった。ときには、父親など、夕方、暗くなってから起きて来たこともある。
それに合わせて、樹理も弟も、休日は遅くまで寝る習慣が身についていた。
それで、樹理は
中学校受験の時、樹理がほんとうに行きたかったのは、県南のほうにある大学附属の中高一貫校だった。
その入学試験は日曜日だった。
さすがに両親もその日はちゃんと起きて樹理の支度につきあってくれたし、お父さんは県南の学校の前まで樹理を送ってくれた。けれども休みの日は朝遅くまで寝る癖がついていたからか、体が目覚めてくれなかった。試験中も何度も寝そうになった。そして樹理はその学校に落ち、明珠女学館に来た。
明珠女の中学校で、成績のよかった樹理は生徒会に推薦された。そのときの中学校の生徒会長から上の学年の生徒会長について話をきいた。
それは、
「さあ、みんな静かにしよう」
と率先して声をかけたという。
「何? いい子ぶって!」
と陰口をたたく先輩や同級生もいたけれど、そんな子も困ったことがあると均美さんのところにかならず相談に行ったという。頼りにされてもいたのだ。
中学生の樹理は上級生になったらこんなひとになろうと決意した。
まず生活をきちんとしようとした。家でも休日にも早起きするようにした。朝、早く起きて、家族が起きるまで勉強したり本を読んだりして待っていた。
でも、そのころから、樹理と家族とのあいだにはなんとなく溝ができてきた。
樹理が生活をきちんとしようとしたからか、それともそういう年ごろだからしかたがなかったのか、それはわからない。
ちょうど弟が小学校の高学年になって、「子ども向けの話」ではない話に加われるようになったころだった。両親と弟のあいだでは話がはずむ。そこに樹理は入って行けない。そして、樹理が話に加わると、とたんにみんなしんとなる。
樹理が高校に進学してから寮に入ったのは、そんな家族から離れたかったからでもあった。
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