第2章:澄野 愛

第10話 優

 「がんばれ」と、心から言うことができない。

 あの子はがんばらなくても合格する。だから気は楽だ。

 けれども、あの子が合格してこの学校に来てしまったら、と考えると、憂鬱ゆううつだ。

 いっそのこと、この雪で調子を崩して、落ちてくれたらいいのに、とふと思う。

 あの子のことだ。明珠めいしゅ女学館じょがっかんに落ちたら、もっと偏差値が高くて、それにもっとあの子にふさわしい高校に合格して、そちらに通うことになるだろう。それだったら心から応援してあげられる。

 でも、すぐに、実の妹についてそんなことを思ってはいけない、という思いが、その気もちを抑えこむ。

 もちろんゆうにはがんばってほしい。

 優が落ちるところなんて想像もしたくない。できればトップの成績で入学してほしい。その実力はあるのだ、あの子には。

 でも、優にいつもそばにいてほしいと思うかというと、どうだろう?

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