新たな春

中学三年生になる頃、私は似顔絵で金賞を受賞した。

特に上手く描けたとも思っておらず、不細工だなと思うような似顔絵だったが、何故か賞を受賞した。

こうして私は中学を上がってから当たり前のように毎年賞を受賞するようになったのだった。

良いことばかりでもないけど、悪いことばかりでもないこの人生を面白いとも感じていたのだった。

中学三年生に上がると、私は俳句で賞を取ったり、駅伝で賞を取ったり、書道で金賞を受賞したりしていた。

私は自慢げに賞状を部屋に飾り、「なんて素晴らしいんだろう。」なんて思っていた。

コンクールには参加することはもうなかったけど、入退場の時に皆んなと一緒に演奏することができて、私はとても心がワクワクしたのを今でも覚えている。

同期から見ても、音楽を演奏する時の私はとても楽しそうに見えたようだ。

実際にそうだったからそれは当たり前だ。

しかし私は緊張して、途中で何度かミスをしたことを帰りのホームルームの時に、他の部員に指摘されていた。

私は育て親に高校は普通級に行ってもいいんじゃないかと言われたが、「今更無理に決まってるでしょ。」と睨みつけて、普通級には行かなかった。

こうして高校も特別支援学校へと行くことになった。

それからも私は数々の賞を受賞したり、検定に合格したりしていた。

ただそれは簡単なことではなく、私自身の努力があってこそ、できたことだと思っている。

自分ではそんなこと思っておらず、努力=当たり前だったので、凄いとは思っていなかった。

今考えると十分凄いことをしているのだが、自分ではまだまだヒヨコだと思っている。

高校一年生の時に私は再び恋をした。

その子は前の席で私よりも背が小さく、無口で何も喋らない子だった。

多分緊張していたのだろう、それから私は毎日のようにその子に話しかけていた。

「ねぇ、〇〇君、この筆箱、ワン〇ース?私も見てるよ!ル〇ィカッコイイよね!でもゾ〇も好きだなー。」その子はただ頷くだけだった。

私はその子と仲良くなりたくて、始めてドラ〇もん以外のアニメも見るようになった。

数々のアニメを見るようになってから私は好きなアニメの模写を描くようになった。

そしてその絵を見てほしくてSNSを始めた。

高校に入ってからは友達もたくさんできて、楽しい日々を送っていた。

中学の時の交流会で仲良くなった女の子と再開して、毎日一緒に学校に行ったり、下校する時も一緒に下校するようになった。

しかしその子はとても可愛い子で、その後直ぐに彼氏ができて、一緒に学校に行けなくなった。私の好きな人と結ばれてしまった。

しかしそれはあくまで仮の人物なので、私の好きな人は他にいるのである。

だから私は悲しむことなく、その子に「おめでとう!良かったね!」と言った。

そして私はその子とその彼との仲を邪魔することはしなかった。

他の女子は妬んで邪魔している人は居たけれど、私には何故そんなことをする必要があるのか理解出来なかった。だからしなかった。

彼女は確かにとても魅力的な子だった。

素直で、裏表なくて、可愛くて、足がとても早い。私よりも早い。

負けず嫌いな私はそんな彼女が羨ましくもあった。

それでも彼女に不幸になってほしいとは思うことも無く、彼女が困っている時には普通に助けたりすることもあった。

何故なら私は虐められたことがあったから、同じように誰かに傷ついてほしいなんて思わないし、相当なことしていなければ何もしない。

彼女は明るく、天使のような子だった。

しかし私が彼女を助ける理由はただ単に困っている人を放っておけない性格をしているからというのもある。

あとは人に頼られるのは嫌いでは無いといった感じだ。

マウント取ってくるムカつくところもあるが、正直私は彼女を嫌ってはいない。

寧ろもっと仲良くなりたいなと思っていた。

そんな感じで、高校入って直ぐには人望は集められなかったけど、徐々に私を信頼してくれる人は増えていった。

最初は何を言っても信じて貰えなかった。

しかしとあることをきっかけに私に対する周囲の目が変わることになるのだった。

私にはとある弱点がある。

それは「押しに弱い」というところだった。

それに気づく人はどんどん押しまくり、私の気持ちなど考えもせず、私を困らせるのだった。

愛のない恋なんて、何が楽しいのだが…私はそう思っていた。

仲良くしているから好きとは限らなくて、付き合っているから好きとも限らない。

ただ互いにとって利益になる都合の良い関係だからってだけだった。

私はこう見えても手先は器用でも、性格はとても不器用だった。

つまりひねくれているといった感じだ。

あまりにも男子にモテるので、自分の恋に集中出来なかった。

しかし私にはずっとずっと好きな人がいた。

彼とは真逆の性格をしているけど、それが逆に居心地良く感じた。

お喋りな私と、無口な彼だからこそ、気が合ったのだと思う。

それでも私が彼に好かれることはなかったのだった。私はそのことに薄々気づいていた。

それでも自分の気持ちを伝えることは重要なのかと考えていた。

丁度この頃私の模写をしたイラストがバズって、フォロワーが三千人になっていた。

高校生だったからというのもあると思うが、描いていたアニメのキャラが人気なキャラクターだったので以外にも五十いいねも付いていた。

自分の絵を五十人の人が「いいね!」と思ってくれることがとても嬉しかった。









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