新たなステージ
こうして私は中学に上がってから特別支援級のある中学に行き、それ以降、その彼と関わることもパタリとなくなったのだった。
残ったのは、恨みと、憎しみと、抱え込んだ寂しさだった。
悲しみに解放され、思わず涙が溢れ出してきた。
「ようやく、終わったんだ。」そう思うと安心して涙がポロポロと溢れ出した。
虐めのことは育て親に相談することが出来ずにいた。
いつも私の話を聞いてくれず、一方的に価値観を押し付けてくるだけだから、一方的に虐待してくるだけだから、言えるはずなかった。
また「良くあることよ。」と言われるだけなのか、その事すら信じないと思う。
「好きだから、何をやっても許されるのか。」そう思っていた。
好きにならないのは、私のせいではないし、好きになれないのも仕方ないことだと思うが。
虐めが起こっていたことは、小学五年生の時の担任の先生も知っていた。
知っていて、何もしなかったんだな、全て私のせいかのように押し付ける。
私は学力を上げることにより、自分の身を守るようになった。
中学に上がり、私は心臓の病気があることをようやく職員さんに信じて貰えたのだった。
それまでは全く信じて貰えなくて、発作になっても「苦しかったら死んでいるわよ。」と言われて冷たくあしらわれたのだった。
私の心臓病は治らない病気だった。
悪化したら治療法はなく、死んでしまうのである。
中学では、先輩達からとても可愛がられるようになって、今度は上手くやろうと、自らコミニュケーションを取ってみたりするようになった。
先生は「貴方が来てからクラスが明るくなった。」と言っていた。
中学では上手くやれていた。
中学一年生の時には、生徒会で書記を勤めていた。
字が綺麗だったので、「見やすい。」と褒められた。
しかし上手くいっていたのは、それは最初の方だけだった。
私は体育の授業があまり好きでは無かったのだが、とある先生との出会いにより駅伝にも参加するようになった。
そしてバスケで優勝したりもした。
ボールを取るのが得意だった私は、ボールを取りまくってシュートが得意な先輩にパスをする係だった。
先生はとても喜び、盛り上がっていた。
しかしその直後負けた相手チームは、私の方を見て、「六番死ねよ。余計なことするな。」と聞こえやすいように言われた。
六番は私の番号だった。
私はそれ以来、本気で勝負することを辞めた。
私は本来の自分を見せず、ずっと隠し通し続けて、その場を上手くやり過ごそうと思うようになった。
明るく、優しく、強く、そういう自分を演じていた。
その場限りの社交辞令を演じるために、偽物の自分を用意していた。
本当は腹黒いし、本当は大人しいし、本当はとても繊細で、それほど強くもない。
ただもう虐められるのが嫌だからそういう自分を演じていた。
でも大人しくなくても虐められるんだと知った。世の中は理不尽にできている。
様々な駅伝に参加するようになり、この時再び一位を獲得した。
こういう時は「死ねよ。」なんて言われないので、無我夢中になり走っていた。
私はそれがとても嬉しかった。
夢中になって走っていた。
インタビューも受けて、楽しい時間を過ごせた。
しかしできるようになっても、今度は妬みで同期に嫌味を言われるようになったのは、先輩達が卒業してからだった。
かなり私のことを恨んでいたようで、時に殴り掛かってきた時もあった。
「尊敬している。」と言われたはずだが、理不尽だと思った。
もはや憎しみになってしまったのだろう。
私はその子にずっと嫌味を言われ続けていたが、聞いているフリだけしていたので、ほとんど覚えていない始末である。
そもそも元々私は他人に関心がないのである。
そこまで人に言われたことを覚えていられるような脳みそではない。
中学二年生に上がってから、音楽の先生が変わってからだった。
先生は私がリコーダーが上手いことをとても褒めてくれて、吹奏楽部に入ることを許可してくれた。
そして担任の先生も許可してくれたのだった。
こうして私は吹奏楽部に入部することになった。
私はどの楽器も得意げに吹くことが出来たのだが、リコーダーが得意ということで、リコーダーと形が似ているクラリネットを担当することになった。
クラリネットは他にも種類があって、オーボエもある。
クラリネットよりも音は低く鳴る。
吹奏楽部では先輩達に可愛がられていた。
恋バナをしたりもした。
丁度この時彼氏が出来たのだが、同期が私の彼氏を好きになり、呆気なく取られ、私よりも長く続いているようだった。
私は彼のことが本当に好きだったからまたアプローチをして、取り戻した。
そしてそれ以降はその同期と寄りを戻すことはなかったので、私の方が長く続いた。
クラリネットは毎日のように練習を積み重ねていた。一日三時間程は吹いていた。
金曜日になると必ず楽器を持ち帰り、休日の時に家でも練習をしていた。
そしてそんなある日、スターウォーズをコンクールで吹くことになって、私も参加出来ることになり、とてもワクワクしながら相変わらず毎日のように練習をしていた。
しかし当日になる前に、調理実習で指を深く切り、出血も酷かったので、よく見たら中の肉が見えるほどかなり深く切ってしまって、しばらく演奏は出来ないことになり、参加出来なくなってしまった。
私はショックで部屋で一人泣いていた。
頑張って練習していたのに、報われなかった。
それ以降、私がコンクールに出られる機会はなかった。
中学に上がって、思ったことがあった。
どんな結末になろうと、努力することはとても楽しいことだ。
それからも私は様々な音楽の本を読みながら、他に音楽を学べる道はないかと探していた。
そうやって寂しさを紛らわしていたのかもしれない。
そういう時はキラキラ、ワクワクしていて、寂しさなんてなかったことにできたから。
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