私は負けない

とあるネコ型ロボットのアニメを見始めたのは、丁度この時だった。

その子は小学五年生で、私よりも酷い虐めを受けていた。

私は自分よりも辛い思いをしている人もいるんだと思い、心強く感じ、彼のファンになった。

虐めが止んだ時、また眼鏡を掛けた不細工な女子が何食わぬ顔をしながら「あれからかっていただけじゃん。」なんて言いながらスンと済ました顔をしながら言っていた。

私は「はぁ?」と思った。

「助けるからね。」って言ったじゃん。

それで逃げたじゃん。

で?都合良くなったらまた来て、「からかっていただけ」?頭おかしいんじゃないの?

私は彼女をもう二度と信じないと心に誓った。いや、誰のこともだ。

私が信じられるのは音楽だけだ。

私が信じられるのは自分自身だけだ。

私と同じ立場にいるネコ型ロボットのアニメの彼を見て、私はネコ型ロボットの方になろうと決意した。

困っている人を助けられるようになりたいと思ったのだった。

それから人を助けるようになった。

そしたらとても嬉しい気持ちになって、私はそれから人を助けるようになった。

虐めが悪化してからもリコーダーを吹き続けていた私は、虐めが止んで、小学四年生の後期になった時、一気にリコーダーの能力がグンと上がったのだった。

音楽の先生と親しくなり、リコーダーを教えて貰っていたので、クラスで一番リコーダーが上手くなり、もう私をバカにする者はいなくなった。その頃だった。

私はやはり虐められ続けるのは嫌だったので、言い返したり、彼をビンタしてみたりして、自分なりに虐められないように工夫をしていた。

そして彼が私に惚れ込んでいることを知った時、私はその気持ちを利用し、自分の立場を守ろうと思ったのだった。

今考えると、あれは恋ではなくて、ただの情であり、私に好きになって貰えない彼が可哀想で相手にしてあげているような感じがした。

周囲の人達に話してみたらそんな感じがすると言われたので、多分、そうだと思う。

朝、教室に入り、私はクラス全員に挨拶をした。

笑顔で「おはよう!」と一人一人に挨拶をしてから席に付き、何事も無かったかのようにいつも通り過ごしていた。

その男の子とも、何事も無かったかのようにいつも通り「一緒に帰ろ!」と言われて、「イエス」しか言わないのだった。

私のイエスに価値はなかった。

何故なら私は誰に対しても「イエス」と答えていたからである。

だから深い意味なんてなかった。

私は嫌いでも虐めることはしなかったが、ビンタはまだ優しい方だったと思う。

もっとぶん殴っても良かったのに、そこをビンタにしたのは私の優しさだった。

私は毎日歯を食いしばり、今日も頑張るぞ!と意気込み、教室に入り、笑顔で挨拶をし、授業も真面目に受けるようになった。

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