嫌いなあの子

私は本当に彼のことが大嫌いだったけど、それを理解してくれる人は誰一人いなかった。

「あの子あんたのこと好きじゃん。」眼鏡を掛けた不細工な女子が言う。

「あんたね、小学生なんだから。」育て親はそう言う。

「そんなの知ってる。」心の中でそう思っていた。

ただ全く気づいていないかのように振舞っていたのは、本当に大嫌いだったからだ。

逃げなかったのは、自分の為だ。

虐められたからって逃げるような私ではない。

そのままそのクラスで卒業すると誓った。

寧ろ逃げるのは彼の方だと思い、私はそのまま忍耐し続けていた。

彼はとても酷い奴だった。

女の影が全く無いのも理解出来る。

虐めが酷くなったきっかけは分からないけど、虐めが酷くなったのは、小学四年生になってからだった。

私は誰に対しても親切だった。

それは良い事だった。

周囲から見ても私は優しい人だった。

それなのに何故か虐めの標的にされていたのだった。訳の分からない出来事が起きた。

私と彼は相変わらず同じクラスで本当に嫌だった。

ランドセルを持たなくなってから、私は一人で帰る日々が増えた。

気を使わなくて済むからその方が楽だと考えていた。

虐めが酷くなり、眼鏡を掛けた不細工な女子は「私は助けるよ。」とか言っていた癖に次の日になれば早速裏切っていた。

「人にしたことは自分に返ってくる。」私はその法則を知っていたので、裏切られたことに関して、特に何も言わなかった。

そしてその虐めはクラス中に広まった。

掃除の時も、帰る時も、その子はしつこく虐めてくるのだった。

「ねぇ、見て、菌が付くよ。」掃除の時にはそう笑われ、「ほら、菌、自分で持てよ。汚ねー!」と嬉しそうに笑いながら言ってくる。

そう言う隣で、大人しいけど面白い男子が「しょうもな」という顔をしながら躊躇いもなく、皆んな「汚ねー!」と言い、近づかない私の机を何も言わずに運んでくれていた。

多分彼は本当に私に興味がなかったのだと思う。それか彼は正常な人間だったのだろう。

それから虐めは一学期は続いた。

私は「負けるな。」と自分に言い聞かせて、そのまま何も言わず虐めが止むのを待っていた。

先生は「放っておけば、いずれ止める。」と言ったからだ。

だから私は文字通り放っておいていた。

だがしかし虐められたのだった。

皆んなきっと、あれが虐めだと理解していたのだろう。

そんな日がずっと続くわけないと思ってはいたけど、当初は助けてくれる人も誰もいなく、友達も一人もいなく、皆んな離れていき、クラスで孤立をしていたので、支えが一人もいない状況だった。

そしてこのことを育て親に相談出来るほど私は強くなかった。言えなかった。

育て親はいつも私の話を聞いてくれない。

そのことを知っているから、私は言えなくなってしまった。

その当時は、私の話を聞いてくれる人はいなかった。

「変わり者」そう呼ばれ、皆んな次第に離れていくのだった。

学校では、虐めは更にエスカレートしていき、廊下を通る度に「おい!菌が歩いてる!汚ねー!」と言われたり、ちょっと肩が当たっただけで、「うわー!菌が付いた!汚ねー!」と、汚いものでも見るような顔をしながら、私を見ながらそうやってまるで汚いものを払うようにシッシッとされるのだった。

心はボロボロで限界を超えていたが、学校には行かなきゃいけなかった。

休めなかったのだ。

帰り道一人で帰るのはいつもの事だった。

しかしその子はその帰り道でもぞろぞろと皆んなで帰りながら一人で帰る私をバカにした。

「おい見ろよ!一人で帰ってるよ!ぼっちー!」と言われても私は何も反応することなく、「無」だった。

だか正直、辛くはあった。

反応したら負けだと思っていたので、反応しなかった。

「学校に行きたくない。」そう言っても、職員さんには「行け!」と怒鳴りつけられるから行くしか無かった。

なんでも自分のせいだと思ってしまう私の思考は、彼の言う私の弱点を全て無くしてしまえば、彼は言うことがなくなり、黙るんじゃないかと考えた。

それから虐められながらも毎日コツコツと勉強をし続けるのだった。

毎日五時間は勉強をしていた。

軽度知的障害もあった為、このくらい勉強しないと追いつけなかった。

ストレスを集中力にしながら言われることを利用し、自分の能力を高めていった。

私は友達だと言ってくれた女子にまで裏切られ、「触るな!菌!」と言われた。

その時、私はとうとう押さえ込んでいた涙が溢れ出してきて、大きな声で「わー!」と泣き出した。

不細工な顔をした友達はドン引きしていた。

その声を聞いた担任の先生はようやくクラスで虐めが行われていることに気づき、クラスメイト達に厳しく注意をした。

「これは虐めです。辞めなさい!いいですね!」いつも優しい顔をした先生が厳しい顔をしながら厳しい口調でそう言っていた。

反省文までは書かせることはしなかったが、普通はそこまでする学校もあるらしい。

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