夕暮れに染まる涙
ひつじの部屋
心がキラキラするモノ
キラキラしたものが好き、ビー玉のキラキラ、光に当てると輝きが増す。
ビーズのキラキラ透き通る感じが綺麗。
匂い付きの消しゴム、イチゴの良い香り。
そして音楽の奏でる音は私の心をキラキラさせた。
一音一音丁寧に吹く、キラキラと輝き出す音はどれも綺麗に鳴り響いていた。
小学三年生の私は昼休みの教室で一人、「モルダウ」を練習していた。
この頃は友達が一人もいなかったから音楽が私の友達だった。
いじめっ子と仲良くしたいと思うほどアホでもなくて、だから私は孤立している方がまだマシだと考えていた。
そういう人間と一緒に居たらいずれ自分もそういう人間になってしまうかもしれない。
そう考えていた私は、いじめっ子のグループに群れることなく、いつも一人で帰るようになったのは、丁度音楽と出会った時だった。
持たされていたランドセル、いつもより長く感じる帰り道の中で、重かったランドセル四つをゴミ収集車のところに置き去りにして、「何すんだよ!」と慌てふためくいじめっ子達を睨んでこう言った。「自分で持てよ。」
そう言うと私は何事も無かったかのように、真顔で家に帰った。
こうなることは分かっていた。
それから私は誰にも誘われることもなくなり、一人ぼっちでいる時間の方が増えた。
でも大丈夫。私には音楽が居る。
誰もが敵に見えた幼少期時代だった。
「出来ない」それが育て親の口癖だった。
児童養護施設で育った私は愛なんて、知らなかった。愛されているって知らなかった。
私はその一言が全ての可能性を奪うこともできる恐ろしい言葉だと知った。
どんな事でも、挑戦や、失敗をすることは大事なことだ。
味方か誰一人いなく、私の支えは音楽だけだった。
同じ施設に住んでいた、同い年の眼鏡を掛けた不細工な女子も、いつも乱暴ばかりしている男子も、虐めが始まってから私を避けるようになっていった。
何故か分からないけど、私は虐められる頻度が高かった。
家に帰る前、夕暮れの中、リコーダーを握りながら「大丈夫。」と心に唱えて泣いていた。泣き止んだ後に家に帰っていた。
「心配かけないようにしなきゃ。」「私がしっかりしなきゃ。」育て親はいつも「ちゃんとしなさい。」と言っていた。
だから「ちゃんとしないと。」と考えるようになり、私は段々と真面目な良い子になっていった。何を言われてもいつも黙っていた。
悪口を言った相手も傷ついていることを私は知っていた。しかし本人は気づいていない。
最初は悪口だけだった。
しかし私はそれがアプローチだと信じることも無く、(当然だが。)その子を好きになることも無く、避けるようになっていってから徐々に虐めになっていった。
関わりたくないのにいつも困っている時に助けに来るから嫌いだった。
放っておいてほしい時に世話焼いてくるから嫌いだった。
彼の何もかも嫌いで、嫌で仕方なかった。
適度に距離を保つようにはしていた。
何を言われても反応しないようにして、言い返すこともしなかった。
関わる方が嫌だから、親密になる方が気持ち悪いから、その方が良かった。
虐めれている方がマシだと思うほど、私は彼を嫌っていた。
だって虐められている間は彼と関わらずに済んだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます