第113話 新式の教導

「エグザス様……♡」


この、語尾にハートマークが付いている黒髪の美形は、アラン。


俺の部下で、獣人である。


頭からは獣の耳、腰には尻尾、半獣と呼ばれる部類の亜人種だ。


俺の手を、指を絡めるようにして握り、頬擦りするように身を寄せてくる、可愛らしい子供……。


因みに、男である。


「エグザス様、資料のまとめが終わりました。お手すきの際にご確認いただけますと幸いです」


こちらはベティ。


茶髪の半獣。


ハンサムな顔立ち。


スラリとしたモデル体型でありつつも、格闘ができるであろう骨格と筋肉を持つ。


因みに、女である。


今日はこの二人……、この国では卑しく低能とされている亜人に、新式魔法を教えるための技術公開をやらせる……。


方や、幹部とはいえ俺の男娼でもある男の子。方や、男尊女卑の中世世界で差別される女。


どちらも、最悪の人選だ。


だから、愉快だった。




さて。


ずらり、と。


国内の有力な貴族の方々が、雁首揃えていらっしゃった。


俺はそれを、玉座……もちろん、この国の王が座るような古いだけのそれとは違う、黄金と赤革でできたギンギラギンの悪趣味なそれに座りつつ、出迎える。


俺の側には、侍従のように控えるベティと。


俺の膝の上に座り、胸や下半身を撫でられて絶頂しているアランがいる。


「あっ♡あっ♡エグザスさまぁ♡♡♡」


一神教、それも、同性愛を罪だとする宗教を信じる者達の前で、穢らわしい亜人の少年を弄びつつ……、俺は言った。


「どうした?貴族諸君。こちらの二人の亜人は、お前らに新式魔法を教える教師だぞ」


唖然とする貴族達。


が、言葉を理解すると、すぐに怒りで顔を赤く染めた。


「こちらの男娼と、こちらの女。お前達の教師役に相応しいと思ってな。こんなしょーもない国の、しかも時勢に乗り遅れたバカが、今更『助けてくだちゃい♡』と虫のいいことを言うんだ、お似合いの格じゃあないかねえ?!!!」


うーん、久しぶりに気持ちがいいぞ。


やはり、他人を加害するのは気持ち良く、加害する相手に失点があると気持ち良さは更に倍。


素晴らしい……。国なんて良くなってもらわなくて構わない、雑魚のカスの馬鹿共は、俺に罵られて悔しがって辛い思いをするだけのサンドバッグであるために、永遠に愚かなままでいてほしいな。


使えそうなのは全て配下にする、使えなさそうな奴らは、俺に虐められる為だけに存在してほしい……。


「きっ、貴様ぁ!図に乗るなよ、男爵風情が!」


「お?」


早速、なんか湧いて出たな。


「貴様のようなものが力を持つのは間違っている!下賤な者がたまたま力を得たからと言って、何様だ!」


「なるほど」


「力だけの下衆が、貴族を何だと思っている?!私は認めんぞ!」


俺は、アランに服を脱ぐように命じた。


因みに、今のアランは、こう……、アラビアンな踊り子風の、シースルーな女物の服を着ている。


ベールで口元を隠し、シースルーのビキニ。シースルーなので当然、乳首やアレは見えちゃっている。


ついでに言えば、ベティの方は黒スーツに黒手袋の執事ルック。こっちの方が男っぽいな。まあ、こっちも定期的に抱いてるが。


とにかく、全裸になったアランを抱き上げて、俺は一言。


「おい、屑共。そこの頭の悪い豚をここから追放しろ。さもなくば、新式魔法は教えてやらん」


絶句する貴族共。


ああ、顔が綻んでしまう。


気持ちいい。


俺の嫌がらせで、我が儘で、逆らった者が叩き潰される……。


悪だと思うか?


だが、やっていることはこれも、ネット小説の「ざまあ」だの、「スカッとジャパン」だのと同じ。


他人に危害を加えて黙らせる、人間が根源的に一番気持ちいい行為だ。


皆、正義という棍棒を持っている時には気付かないようだが……、他人を叩き潰すことが一番気持ちいいんだぞ?


正義が気持ちいいんじゃない、何かの大義を掲げて、それを棍棒として振り下ろし、他人の泣き顔を見た時!それが、その時が一番気持ちいいんだ、人間って生き物はな。


そんなことを考えながら、期待で瞳を潤ませるアランを抱き抱え……、『行為』を始めた。


本当に、そこの、俺に逆らった間抜けをここから追い出さない限り、俺は何もやらない。何も教えない。


それが分かったらしく、貴族達はその馬鹿を退室させる。


もちろん、喧々諤々の話し合い、いや、論争はあった。


本当に追い出すのか?あんな奴の言うことを聞くのか?だがこのままでは本当に教えるつもりはないぞあのガキは!と、色々とな。


もちろん、その議論の最中に、少しでも俺を軽んじた奴には同じく退室を命じる。


そして、今後は、この国の貴族の作法……まあ、礼儀が色々とあるのだが、それの内で王族同等の上位者に対する最高の礼を払う作法を要求した。


俺だけではなく、アランとベティにもそうしろ、と。


この辺りで、十人くらいの貴族が怒りのあまり卒倒してリタイア。我慢しきれず退室させられたのも十人。そして、バレないと思ったのか貴族の作法を守らなかった奴ら六人も追い出す。俺が礼儀作法を知らない訳ないだろ、知ってて礼を払ってないだけだ。


アランが俺に跨って十分、壊れた噴水となって三十分、動かなくなって十分。やっと話はまとまったようだな。


「「「「失礼……致し……ました……!!!我等一同……、エグザス……様に……、新式魔法を……教わりたく……ッッッ!!!」」」」


「ああ、もちろんだ屑共。教えてやるよ、俺の上でイキ散らかしてるこの男娼と獣人女がな。……どうした?喜べよ。お前らにお似合いの敏腕教師だぞ」


「「「「ぐっ、がっ、あっ……!!!あ、あ、ありがたく、ぞ、存じます……ッッッ!!!」」」」


うわーすごい。


人間って怒り過ぎると鼻血とか出るんですねえ。


あんなに必死になっちゃって、かわいそ……。


「よし、じゃあアラン、ベティ、頼んだぞ。俺は仕事をしているから、何かあれば言ってくれ」


「はひぃ♡」「はい」


「ああ、もちろんだが。やる気のない生徒は、お前らの裁量で追い出していいからな!」


「ひゃい♡」「はい」


さて……、こんなものだろう。




……ところで、新式魔法は基本的にバックドアが付いていて、作った術式は全部俺に筒抜けって知ったら、こいつらどうなるんだろうな?


もちろん、俺は前戯はしっかりやるし、夏休みの宿題も初日に終わらせるタイプであるから、いきなりのネタバレは避けるつもりだが。


ああ、でも……、新式を覚えれば俺に勝てるという思い上がり!どうやって潰して、どうやって心をへし折り、虐め殺すか?それを想像すると、仕事のストレスなんて速攻で吹っ飛んじゃうね♡

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