第109話 自慢の社員達

ドラゴンのホムンクルスができたが、だからと言って他のホムンクルスの製作をやめることはできない。


人型が一番使いやすいからな。ここは人の世だし……。


むしろこれからも多様なパターンのホムンクルスを増やして、人材問題の解決を目指していきたい。


いやもうホント、この世界の平均的な人類は教育レベル低過ぎて、マックジョブもできん有様だからな。


都市だとまた勝手が違うんだが、総人口の話をすれば、八割の人間は畑で鍬を振る以外に何もできない無能だ。


農家が科学的知見を以て色々と改善され、効率が上がったのなんて近世くらいからの話。今のこの世界のノーミン共は本当にマジで鍬を振るしか能がないぞ!


なので、密偵とか暗殺者を捕まえて再利用するのがお得なんですね。


「よーし、ペット共!集まれ!」


「「「「「はい!」」」」


ここにいる四人の男女は、俺が飼っているペットだ。


そして、全てのホムンクルスのデータ元になっている。


まず、犬。


これは、プロキシアで譲り受けた女だな。


苦痛を与えるタイプの拷問と、何もしないタイプの拷問を繰り返して壊した。


次に、鼠。


こいつは間諜。犬はメイドに擬態した暗殺者だったが、鼠は市井の民に紛れて情報収集をしたり、毒を盛ったりする感じ。


こいつは、休まずに機械で快楽を与えて、赤ん坊を孕ませて産ませて、産まれた赤ん坊を目の前で踏み潰すことを繰り返していたら、簡単に壊れた。


もちろん、俺は優しいので、産ませた二十人の赤ん坊は本当は殺さずに保管してある。


俺の精子を使って作った、遺伝子どころか存在のデータファイルをも組み替えて作った子なので、そもそも「ヒト」とは言えないのだが。


この作った子供達は、孤児の赤子と同じところで養育し、何かしらに使おうと思う。


男の方は、まず、猿。


こいつは魔法使いだった。インテリで、離縁されたとは言え貴族出身らしい。


なので、何もない空間に閉じ込めて、体感時間を一万倍くらいに引き延ばして、数日放置してみた。自害したら即復活させてやる機能付きで。


すると簡単に壊れたな。


最後は雀。


商人を兼ねた間諜らしい。猿の知識は学術に寄っているが、雀は実学的な話や商売に工芸などだ。


雀は、脳の神経を弄って、逆に「幸福」を過剰に与えてみた。


まあ普通に壊れた。


そんな訳で完成したこの道具人間達から、脳をコピーし、そのデータを使ってホムンクルスを作っている訳だな。


脳というハードも、その中身のプログラムも作れると言えば作れるが、こんな容量がデカ過ぎるデータを一から作るのは無駄だからな。


肉体という器は作れても、そこに「歩き方」とか「喋り方」みたいなソフトは、デフォではインストールされてない訳で。


そういうデータを一から作ってダウンロードして……とやるのは馬鹿らしいので、こうやって元あるデータをコピペさせてもらっている訳だな。


……「世界法則」もそうだが、俺自身が人間で人間の演算力と記憶力しかないから、そういう詳細過ぎるデータは作れないのがなぁ。


何億兆テラバイトの演算を一瞬で終わらせる超スゴイ量子コンピューター!とかがあったとしても、それを操作するのが人間という低スペックな生命体だと活かしきれない……みたいな話だ。


まあその辺の解決策もできてはいるんだけど、まだ(エイダを使っての)実験段階で、実装はしてない。


なんにせよ、今後も色々な脳を手に入れてデータを収集していきたいな。


……人格を壊すのも割と面倒だが、壊さないとコピペした時にエラー吐くし、大変だ。


ああ、エラーというのは、人格が崩壊して廃人になる感じのやつだな。さっきから人を壊していると言っているが、アレはある種の「加工」であって、完全な破壊ではないんだよ。その辺りが難しくて、何人もダメにしたもんだ……。


で……、まだ、人格と知識の明確な差が分かっていないから、脳データのファイリングができていない。


もっと一杯人間を壊して、サンプルを増やさなきゃダメだなあ。


幹部共も、謀反とかしてこないかなあいつら……。そしたら、罰と称して人格破壊して道具人間にするのに……。


……いや、良くないな。社員に対してそんな邪な念を抱くのは。信用してやらないと。


それに、幹部達のデータも、研究が進んで人格と知識を分けられるようになれば、知識だけを分けてコピーすれば良い。コピーは、壊さなくてもできるからな。


だが今は、とにかく使える人材がいなくてなあ……。


幹部は俺も含めて、毎日激務で、その上勉強勉強また勉強。


いやまあ、地球のビジネスマンの時と同じようなもんだが、社長の経験はないからな俺も。


プログラミングの勉強ならまだしも、今は経営の勉強もやりながら会社を動かしていて、もう大変。


軌道に乗るまではこの忙しさが続くだろうし、頑張らなきゃなあ……。


「はあ……、大変だよ全く」


「「「「はい!」」」」


「お前達の面倒を見るのも、中々に手間だ」


「「「「はい!」」」」


「なので死ね」


「「「「はい!」」」」


全員が、思い思いの方法で自害した。


犬は舌を噛み、鼠は腹を裂き、猿は床で頭を割り、雀は喉を潰した。


うん、よし。


性能は維持できているな。


ホムンクルスがいるから、こいつらはもう不要なんだが……、一応、原本のデータは持っておきたくてな。


別で保存はしているけれど、こっちがマスタだから、こいつらを更に鍛えることで更に性能がいいデータを抽出できるんだよね。


ホムンクルスからの二次生成は、あんまりやりたくない。そういうコピーのコピーみたいなことをやっていると、完全性が毀損されるんで……。


ただでさえ、「ヒト」という精密な機材をコピー生成している訳だから、ちゃんとマスタからコピーしたいんだよ。


「おっと、考え事をしていた。悪いな」


俺は、即座に死んだ道具人間達を再生する。


皆、嬉しそうな笑顔だ。ニコニコ社員ってか。


うーん、アットホームな会社というやつだな。

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