第107話 資源の有効活用

「エルフって、ぶっちゃけアホでしょ?」


『何を……、言っている?』


何って……、正論を言っただけだが?


「この魔法の根源……『世界法則』の全てを把握した訳じゃないが、解析はできたし、アドミン権限も得て、M言語と言う名の不正ソフトもインストールした。バックドアも作らせてもらったし、他の存在への遠隔不正アクセスも可能にしておいた。後は演算リソースも勝手に使わせてもらっているしな」


『何……?何の、話だ……?』


んん?そのレベルの話は知らないのか。


俺は漫画に出てくる三流の悪役キャラではないので、ペラペラと全てを説明はしない。


だが、これらのキーワードに反応しないなら、こう、何というか……、拍子抜けだな?


「まあ、お前がこちらの情報を知る必要はないんじゃない?とにかくエルフは、俺を始末してない時点でアホ確定だよ。あー、あれだ、代替わりする時に知識を失ったとか、そういう話か?」


『……古代人から、エルフに転化し、繁殖を続け、もう初代は残ってい、ない、とは聞く。失われた知識……、ああ、貴様、エルフの智慧を盗んだか?なるほど、ククク……、いい、気味だ……』


ふむ。


エルフにも肉の器である以上、劣化や不慮の事故による死亡があり、年月もかなり過ぎている訳だから、本当の超越者だった「古代人」の頃の優れた知識は散逸している訳か。


肉の器に保管できるデータ量には限界があるからなあ。


肉体に記録媒体を埋め込むとか……ああ!それがモンスターの魔石か。


んん?いや、待てよ?


人間には魔石なんてないだろ。


俺は、エイダとか、その辺の盗賊とかを分解して色々と実験をしていたから、よく分かる。


人体には、魔石なんてない。魔法使いだったとしても、だ。


魔法使いの頭蓋に穴を空け、腑分けしてきた訳だからな。ないものはない。


で、人間が何故魔法を使えるのか?と言えば、それは『世界法則』による補助……『詠唱』をしているから。


だから、魔石という情報集積回路がなくても、外部で制御して……。


……あ?


ああ、そうか。


じゃあ、人間になった古代人達は、自分の体内から《魔》の要素を抜いて繁殖力を得たが、それはそれとして《魔》が行使できないのは困るから、人間でも《魔》を行使できるようにと世界側に《法》を定めた……?


なるほど、逆、か。


魔力を行使しにくい肉の器を持つ生命体に生まれ変わったので、肉の器でも魔力を行使しやすいように、世界の側を合わせてきたのか。


馬鹿馬鹿しいが、賢いな。悪くない考え方だ。


名前は、魔なる法則で、魔法ってか?センスも嫌いじゃない。


……とりあえず、俺は納得できた。


とは言え、大っぴらに周りの人間に説明するつもりはない。


Need-to-knowとまでは言わないが、伏せておいた方が有利っぽいんだよな、この情報。


黙っておこう。


で、ドラゴン君は……。


「ぺらぺら喋ってくれてありがとう!お礼に君は、我が社の『資源』として消費してやるよ」


『な、にを……?』


俺は、ドラゴンを魔法で拘束して、力場で持ち上げる……。


「なあに、魔石を摘出する為の、家畜になってもらうだけだ。そうそう、ドラゴン肉のステーキなんてのはどうだ?キャッチーなフレーズで儲かりそうだな!ドラゴンの爪の剣はどうだ?」


『き、貴様……!この、我を……!』


「エルフの実験体、大変だったな。同情するよ。これからは俺の実験体にしてやるから、楽しく暮らせよ!」


『や、やめろ!殺せ、ここで殺せぇ……!』


「心の方が壊れたら、肉体は俺のしもべにでもしようかなあ……?ドラゴンを従えているとか、ステイタスになって、会社の宣伝にもなりそうだし……。あー、後はアランにも分けてやるか?それと後は……」


『う、あ……!い、嫌だ!もう、あの時のような、実験は、嫌だァ……!!!』


そんな訳で、山の主、ドラゴンを手に入れたぞ!




「ゲットだぜ」


「………………は?」


「ゲットだぜ」


「いや……、は?え?……はぁ?!」


フランちゃんがいつも通りキレ始まる。


んん、相変わらず楽しい奴だ。


真っ先に見せて正解だったな。


フランちゃんが声にならない声を上げながら、常識について叫びながらのたうち回る姿を眺めつつ、俺は最近飲めるようになってきたブラックコーヒーを飲んだ。


あーーー、美味過ぎ。


無様なフランちゃんを眺めながら飲むコーヒーは、まさに甘露と言ったところか。苦いが。


俺は、フランちゃんを優しい愛のある目で眺めてから、コーヒーを一杯楽しみ、カップを置いた。


「あ、待って、その目やめて。その目の時のアンタ、本当に碌なことしないから……!」


「フランちゃん、このドラゴン、飼っていい?」


「ダメーーーッ!!!!絶対ダメ!!!!大騒ぎになるゥ!!!!」


お、出た出た。


フランちゃんが早速、音の鳴る玩具としての本領を発揮してきたな!


やっぱり俺も男の子だからな、音の出る玩具は楽しくて好きだ。


「ありがとう、フランちゃん。そう言ってもらえると思っていたよ。だからやります」


「じゃあ何で聞いたの????」


「い・や・が・ら・せ♡」


「ンモーーー!!!!」


これでヨシ、と。


とりあえず、山からはアドン魔導国の兵はいなくなり、無事に演習も終わって、帰路に着いた……。


実りある時間が過ごせたな!






×××××××××××××××


魔龍イシュマート

三千年前から生きる古龍にして、「古代種」の実験体だった存在。

アウロラ団に捕獲され、全身を素材として活用された。魔石を抜かれ、鱗を剥がされ、牙を抜かれ……、搾取の限りを尽くされたという。

死んだ後も肉体を再生され、素材を剥がれるという非人道的な行為が行われていたらしく、アウロラ団の闇の部分であると、後世においては批判された。

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