第102話 本題に戻ろう

昨日、この小説で初めて日間PVが一万行ったので、感謝の更新。


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なんか、俺を完全に置いてきぼりにしたまま、謎の黒幕ムーブをして変な人達が去っていった。


割と結構訳の分からない動きをされて、悔しさよりも困惑の方が強いな。何だあの雰囲気だけ黒幕で頭と実力はそこそこな感じの人達?逆に怖いな。


まあでもあのくらいの気狂いは、アメリカどころか日本にもいたしな。ロスじゃ日常茶飯事だぜ!って感じか。


直接噛み付いてきた訳でもないし、とりあえずスルーで。


それよりも、学校の演習に専念する。




「行くぞ!『ヒートハウザー』!」


ゼスが手のひらから放った火球は、物理学的な放物線を描いて中空を飛ぶ。


質量がない火球を、質量弾のテクスチャを貼り付けて、挙動を制御しているらしい。


下手に、「正面方向に等速で直線的に射出する」とかだと、制御できなくて危ないからな。


射程範囲外に弾が飛んで行くと、その前に地面に着弾して爆発する方が、兵器として見れば使いやすい。コントロール範囲外に出ると自壊するってのは楽だ。


あと純粋に計算しやすいんだよね。


この程度の速度で射出して、重力の影響を受けて減速し地面に落ちる。そして、何かに触れたらその時点で全処理を中断して爆発し消滅する……。


これならば、プログラム初心者でも簡単に書ける、単なる弾道計算プログラムだ。


ああ、常人だと真っ直ぐ進み続ける!みたいなことをすると、魔力切れまで延々と魔力を吸われちゃうってのもあるか?一応、強制終了はできるんだが、すぐにできるもんじゃないからな。


その点、この術式は、放った時点で演算の全てが終わり、ユーザー……術者の制御下から離れるから、武器として考えると凄く妥当な挙動。


で……、そして、まあ、着弾する。


『ギャガアアアア?!!!』


火球を受けて、爆発するオーガ。


その名の通り、榴弾砲のような爆発。全身が吹っ飛んでジ・エンドだ。


オーガって言えばアレだぞ、オークより更にワンランク上の人型モンスター。


三メートル強の上背と鋼の肉体を持つ化け物。


国で必死に訓練している非魔導師の騎士様が、オーク一体とトントンくらいの強さで……、オーガだと騎士数人が死ぬ気でかからなきゃ無理な感じ?


それを一撃だ、やっぱり魔導師のパワーバランスおかしいだろこの世界。


「おいおい、ゼス!演習だからっていきり立つなよ、派手にヤり過ぎだぜ?」


「ホルマン!お前も戦え!」


「こっちは防御してるんだよ!『オブシディアンウォール』!」


黒曜石の防壁を前に出し、迫り来るモンスターを押し留めるホルマン。


「『ゼログラビティ』『オフライン』……っと。はいはい、帰ったよー!空中遊泳は面白いねえ」


ベクトルを操作し、重力をかき消し、空を飛ぶヘクター。


「ヘクター!手が足りん!戦え!」


「えぇ……?僕、暗殺系の術しか作ってないから、正面戦闘はちょっと……」


「でなければ死ぬぞ?!」


「あーもう!じゃ、秘密にしといてね……、『ブラッドコンヒューズ』!」


『『『グギャアアア!!!』』』


全身から血を流して死ぬモンスター共。


あれは……、血液の流れを、一瞬だけ全部逆流させたのか。


心臓や血管が破れたらしく、穴という穴から血を吹き出し、様々なモンスターが倒れていく……。


「おー、やるもんだ」


俺は、頑張る学友達を褒めてやる。


「「「戦え!諸悪の根源!!!」」」


んー?


「お前が無理矢理に山の奥へと連れてきたんだろうが?!」


「山にはドラゴンが出るんだったか?……眉唾だぜ、そんなの」


「もう帰りたい……!」


ああ、うん。


噂によると、この山にはドラゴンが出るらしくてな。


山型のダンジョン、ボスはドラゴンって話だった。カーレンハイトのジジイがゆってたのよ。


とりあえず、そのドラゴンとやらを一眼見てから帰ろう!と、俺は提案した訳だ。


「お前らも同意したじゃん?」


「断ったら殺すと……」


「ジョークだよ」


「お前の『殺す』が冗談で済んだことがあったか????」


まあそれはそう。


「って言うか、デリートマジック使わんの?教えてやったじゃん」


「あれは……、あまりにも完成度が高過ぎて、お前の門下の魔導師は全員対抗魔法を構築しているからな。逆に使えないんだよ」


へえ。


そんなゾルトラークみたいな話になってたんだ。


「じゃあ……」


「あらかじめ言っておくが、お前のは防げないからな?お前は魔法を放つ時に、波長や構成を微妙にランダムパターンで変更する変数を組み込んでいるだろう?アレのせいで、対抗魔法が全く無意味になる」


そりゃ、耐障害性……防がれる時のことを考えて、プログラムに冗長性を持たせるのは当然の対策では?


相手に魔法を当てるってのは、インターネット通信みたいなもんだからね。


ファイアウォールたる対抗呪文を突破しつつ、どうにかして相手のサーバ……肉体に、こちらのデータ……術式をお届けしたいのだから。


それを言えば、例えば精神に作用するような術なんかは、繊細だから少しのファイアウォールにも影響されるから通りにくいんだよな。冗長性を持たせてデータ量を増やすと、転送に時間がかかって、前提条件である相手の精神状況が色々と変化してタイムアウトしてしまうから難しい。


……ああ、そう言えば、アドン魔導国には精神操作の魔法がある見込みだったんだっけか?


精神を破壊された「お人形さん」を異様にたくさん持っているから、何か凄い精神系の魔法を……、あー、アレか?それもさっきの白光とかいう連中がやっているのか。


なるほど、色々と繋がってきたな。興味はないけど。


「その辺りはまあ、まだ先だな。とりあえずそれよりも先に、まともな術式を書けるようになってからだろう」


「モンスターを殺すには不足ないと思うが……、なっ!『ハイフリークエンシー』!うおおおっ!」


おっ、刀剣に高周波を流してモンスターを斬った。やるなあ。


とにかく、このヴェジェの山が、通過不可能なモンスターの巣、ダンジョンであるというその諸悪の根源。


ボスモンスター、ドラゴン。


それをこの目で見てみたい。

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