第101話 白光

リムワールドやってたら遅れました。


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白肌の男。


顔は……、隠されている。


金のエングレーヴがされた鉄仮面。顔も耳も、頭も丸っと隠してしまうもので。


鉄仮面の顔は、ママンのデスマスクと言うか、人形(ドール)のような美しい女の顔を模ったもの。


よく見ると、後頭部から髪だけを出しているらしく、金髪のサラサラヘアであることが分かる。


何だろうか?殺人的な加速のトサカロボに乗ってくるタイプの人?火消しのウインド的な?


服装も、ギリースーツではなく、白い士官服。肩章……あー、肩に金の糸がいっぱい付いてるやつな?肩章が付いていて、色々と豪華だ。


まだこの世界の殆どの国は、夜のない世界のゲームで例えると「共通規格」を発明してないからな。いや、隣国からゴールドで買える訳でもないが。


だから、こういう、「揃いの制服」っぽいのを作れるのは、凄いことなんだよ。


ああ、話すのはこの鉄仮面一人だが、同じような格好の鉄仮面が他にも数人いるぞ。ただ、この将校服の鉄仮面が一番偉そうだ。


で……、そんな鉄仮面男だが、首は白い。


アドンの民は北方民族で、白肌。だが、アドンの民のそれとは違う白さに感じる。


体つきも、華奢だ。アドンの民は、もっとがっしりとしていて背が高い。


ふむ……?


「貴方が、あの、アウロラ団の長ですか……。なるほど、素晴らしい魔力の量ですね」


そう言って、くつくつと喉を鳴らして笑う鉄仮面。


……鉄仮面って呼ぶと、火消しのウインドさんってよりは人類の九割を殺そうとする人みたいだな。まあ良いか。


にしても、魔力?


俺は一応、隠しているはずだが。何らかの魔法で盗み見ているってことか?へー、凄いじゃん。


「退いてくれないか?お前らを殺すと面倒なことになる」


とりあえず俺は、要求しておいた。


紳士的に、腰を低くしてのお願いである。


「ふむ……、まあ、よろしいでしょう」


それを聞いて、軽く頷く鉄仮面。


よかった、無駄な死人が出ないなんて素晴らしいね。平和が一番。


だがそこに、空気の読めないバカが一人。


「そ、そんな!『白光』様!どうかお考え直しください!我々が、ここに橋頭堡を築き、維持する為に、どれほどの兵を死なせたか……!」


アドン魔導国側の、士官?いや、リーダー格?


髭を伸ばした、金髪の大柄な男だ。


ううん……?


白光?人の名前じゃ……、ないよな?


組織名か?


だとすると、軍とは別の、それでいて軍より上の権力を持つ別部隊的な……?


おいおい、さっきまで某ロボアニメのことを思い浮かべていたが……、これじゃ、ティターンズみたいな存在ってことかよ。


そんなのはまさに、アニメの中だから許される存在だぞ?実際の階級より二階級上として扱われる特殊部隊なんざ、本当の仕事の場面で役に立つどころか足を引っ張る。


アレでしょ?完成しているシステムに訳わかんない処理を割り込みさせろ!とか無理言ってくるクライアントみたいな……。カスじゃない?カスだな、カスだ。


で……、その、『白光』と呼ばれた鉄仮面共は、冷たい目で兵隊長を見る。


「お黙りなさい。あなた方雑兵は、私達の指示に従っていればよろしい」


おおっ、いかにも、嫌な感じの上司だ。


「し、しかし!」


「私は、『従え』と言いましたよ」


「ひ、ひいっ……!わ、分かりました……!」


ほーん?


どうやら、かなりの力の差があるようだな。


大の男が、ガチビビりしているってことは、白光とやらはそれだけの強さがあるらしい。権力か腕力かは分からんが。


「……失礼しました。では、今回は退却させていただきます。また会いましょう、アウロラ団」


一番偉そうな鉄仮面がそういうと、周囲の一般鉄仮面達が何事かの呪文を唱えて……。


「……消えた?いや、これは……!」


なるほど。




『転移魔法』か。




空間転移の魔法は、実は俺もまだ作れていない。


忙しいのもあるが、まだ安全性を担保できていないからだ。実験を殆どしていなくて、危険なんだよ。転移だけなら多分できるが。


まあ、なんと言い訳しても、白光だったか?奴らに俺は一歩劣っている訳だ……。


解析魔法もアプデできていなかったのも痛い。


この世界には解析すべき術式などないと思い込み、術式を解析するタイプの魔法はあまり真面目に作っていなかったのだ。


ただ……、うん。


「俺の予想外のことをするのは確かに凄いんだろうが、それを『分からん殺し』に使うんじゃなく、単なる示威目的で使ってカッコつけるのは、こう……、純粋にアホだな」


できるのかどうかは知らんけど、俺を外宇宙に転移させるとか、肉体をバラバラになるように転移させるとか、太陽に押し付けるとか……、やれば良かったのにな。


まあそのくらいじゃ死なないし、最悪、死んでもどうにかする手段はあるのだが、それはそれとして。


アレを見せ札にできるほどの存在であれば、俺なんてとっくに始末されていてもおかしくないし、そうでなくてもどこかで衝突していなければおかしい……。


つまり、そこそこの札を、わざわざ自慢する為だけに目の前で切ってきたアホ集団という結論になる。


魔法がそれなりにお上手でも、驕り高ぶったアホ集団ではなあ……。


まあ、カッコつけるだけで歯向かってこないなら、別に放置でいいか……。

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