第87話 新学期が始まるがそれより重要なタスク
休暇が終わり、無事進級。
学園の二年生になった。
年齢は、十三歳か十四歳ってところだな。
曖昧なのは、この世界では年の始まりに一つ歳を取ったことにする……要するに誕生日制度じゃないからだ。
なので、俺の年齢は十三か十四ってところなのだろうと、この世界基準では考えられる。いや、自分の正確な生年月日を知らないので……。
となると、六年制の学園を卒業する頃には、大体十八歳くらいだろうか?
この世界で十八歳と言えば、女は行き遅れちょい前、男は成人ちょい前と言ったところ。
何故か?
基本的に男尊女卑なのは言うまでもないだろうから、女は子を産める年齢になれば嫁ぐのが基本である。
一方で男の方は、自立して自分の家族を養って初めて一人前と見做されるのが、この世界の一般的な認識である訳だ。
なので、普通の夫婦は男の方が歳上になるんだよな。
男が成人で二十歳、一人前になって嫁をもらえるくらいの収入を得るのが二十代前半か?
農村とかだと学がなくても身体さえ出来上がれば良いから、二十前には一人前扱いだな。
で、女は、大体十五歳くらいには嫁ぎ、二十歳を超えると行き遅れ扱い。
まあ平均寿命も五十歳行かないくらいだし、こんなもんじゃねえの?
……男尊女卑だから男が有利なのか?と言ったらそんなことはなく、生活力というか稼ぐ力がない男は一生クズ扱いだからな。
ほら……、俺はシティボーイだからよく分からんけどさ。二十一世紀の地球でも、田舎の方では結婚もせずに子供もいないとなると異常者扱いだろ?
アメリカとかもそうで、よっぽどの理由でもない限り、家族を作っていないビジネスマンって変人扱いというか、一人前扱いされねーんだよ。
いや逆か?一人前の人間なら、当然、結婚してて子供もいますよね?みたいなノリ。
日本みたいにレストランに一人で入ったりすると変質者を見る目で見られるからね?
だから俺も嫌々結婚してたんだけどさあ……。
まあ、昔の女のことはどうでも良いや。
今手元に置いてる女達(一人男だが)の方が、人権ないから好きに扱って良い分楽だし。
いやー、やっぱり、こういう中世みたいな後進的な世界だと、力さえあれば大体のことは許されちゃうから楽で良いわー。
地球、バカは多かったがそれでもこの世界ほどじゃないもんな。
この世界、マジで田舎の方とか行くと、その……、口が悪くなってしまうのだが、正直言って土人レベルよ?
義務教育を広めた人間ってめっちゃ偉いね。
九年間の義務教育を受けて初めて、人間は、自らの権利を主張できると思うね。
教育を受けてない人間は猿に等しく、そいつらに権利を与えるのは不可能だし、仮にやっても碌なことにならんのは目に見えている。
人間の性善説というか……、善悪や道徳という感覚は、長年の教育の末に手に入れるもんなんだよ。人間にデフォルトでインストールされているアプリじゃないんだ、それらは。
「……これは仕事にも言えて、人員の平均的な質の向上はあらゆる職種における至上命題であり〜……、単価が〜……」
「「「「はい!」」」」
はい。
そんな訳で、こんな風に幹部を集めての勉強会を行っている。
うちはホワイトなので、この勉強会も出勤扱いだ。
……給料?衣食住の完全補償と、社宅提供と、会社の製品を無料配布で相殺しゼロだな!いや、欲しいなら金はやるが、アウロラで手に入らないものは世界のどこにもないから、金なんてあっても無駄だぞ?
とにかくそうやって、こいつらにもプロジェクト管理の手法や心得を少しずつ教えていっている。
今年のアウロラ団としての目標は、幹部達のプロジェクト管理研修で良いだろう。いや、その前に現場を知る為の研修もやるが。
事業としてはもちろん他にやることはあるが……、それはもう、うちでやることは全てブルーオーシャンで儲からない訳がないからなあ。
ついでに言えば、なんだかんだでプロキシア共和国の港を占拠したままだから、あの周辺の利権を勝手に使っちゃってるし……。
ビルトリアの王はなんか文句言おうとしてるみたいだけど、俺も貴族だし、貴族が切り取った土地を王家に寄越せとはなかなか言えんだろう。
戦国武将みたいなもんだからな。武将が得た土地にいきなり天皇がしゃしゃり出てきて寄越せ!なんて言わんだろ?
実効支配って言うのかねえ?厳密には違うんだが、そう思っておいてほしい。
とにかく、事業の方は圧倒的な技術格差と武力によって、何をやっても儲けは確実。だからそれは考えなくて良い。
で、再来年には実際に、幹部達にプロジェクトを任せたい。
その為の下の人員も、この一年でそこそこに育った。
無論、数百人いる孤児共は最低限の礼儀作法や道徳教育くらいしかできなかったが、学園で集めた手下?シンパ?が五十人くらいいるんだよね。
それと、孤児の中でも使えるのが二、三十人?
今年の教育と、新一年生の勧誘次第で、動かせるプロジェクトの数と規模が決まってくるなあ。
まあ、幹部達にやらせるプロジェクトは失敗しても良いような程度のものにする予定だし……、こっちでWBSを作って……あー、じゃあプロジェクトワークフローからか。
んー……、この子達はちゃんと全員、俺が選んだだけあって、頭に「超」がつくレベルの天才なんだけど、それでも流石に数年でプロジェクトマネージャーはキツそうなんだよな。
新人教育なんてあんましたことないから分からんけど、こういうのはちょいちょい遊びを持たせておいた方が良いはず。
こいつらの出来が良いから俺が逸っているだけか?
やっぱり、管理手法とかフレームワークの前に実務経験?
いやでも、結構できてるんだよ?議事録とかも書かせてるけど、最近はもう新卒より全然使えるなーってレベルだし。
あークソ、こんなことになるんなら、もっと真面目に教育手法とか学んでおけばよかったな。
最低限しか知らんわ。
……よし。
「今年は、お前達のマネージャー研修と共に俺が新プロジェクトを立ち上げて実際に動かすから、それを見て学んでほしい。分からないことがあれば、その場で質問して良いからな」
「「「「はい!」」」」
今年は、俺がプロジェクトを立てる。
「よーし、じゃあプロジェクト憲章と作業計画からだ!今回は大きなプロジェクトにはしないから、スコープ定義書は作らない!ではまず……」
俺は、ホワイトボードにペンを走らせた……。
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