第80話 子供らしい休日
休暇中。
朝起きたら、隣にエイダが。
ああ、確か昨日は抱いてやったんだっけか。
俺が起きると、エイダも起きて。
「ふぁ……、おはようございます、エグザス様♡」
と、俺に挨拶をしてから、優しく口づけをしてきた。
本当に可愛い。
俺の大切なモルモットで、実験結果の集大成だからな。
冷静に考えて、俺の今までの実験の集大成……機密データの塊であるこいつを、始末することも拘束することもなく隣に侍らせているのだから、俺にしては相当に私情を挟んでいる。
俺は育ちが良いので、使った後の「道具」は、普段ならちゃんと「後片付け」しているんだぞ?
実際に、最近の実験は、その辺の盗賊とか俺に突っかかってきた刺客とかを使っているんだが、実験後はちゃんと処理してるもん。自分の不始末で逃した実験体に復讐とかされる流れとかやだし……。フランケンシュタインかな?ってなるじゃん。
しかし、エイダは傍に置いてやり、生かしてやり、それどころか改造をもまだ続けてやっている。お陰様で、かなり強くなっているな。
少なくともエイダは、実験の結果、老いることもなく、怪我や病気もすぐ治るし、毒の類も殆ど効かない。
前に睡眠薬を盛られた時?
あの時はナチュラルに昼寝してたそうだ。アホであるが、そこがまた可愛いな!
しかし、子供の休みか……。
このくらいの年齢の頃、前世では何してたっけ?
ICを使わずにトランジスタだけでクソデカいコンピュータを構築したり、オリジナルのプログラミング言語を作ったりして遊んでたような気がするが……。
もちろん、人並みにゲームをやったり、ボーイスカウトに入ってアウトドアしたり、乗馬や読書をしたり……。色々やったが、特に思い出深いのはそれだった。
大人になってからは、産業システム組んだり、OS組んだり、ファイアウォール組んだり……。
……なんか、アレだな。俺の趣味って、基本的に、普段やってることがそれだな。
嫌だなあ、このままじゃ俺が無趣味な人間みたいになっちゃうじゃん。
仕事が出来る奴ってプライベートもやることやってたからなあ、アメリカでは特にそうだった。
非効率な残業だのバシバシやってる日本流のリーマンは無能で、仕事はガンガン効率化して、空いた時間で家族サービスに同僚と交流、パーティー。これが海外流よ。
……というか、俺が通勤してた会社は仕事の量と質がエグかったからな。残業でどうにかなるようなレベルの話ではなく、仕事用に自動化したプログラムを組んだり、他のメンバーをうまく使わないと終わらねんだわ。時間かけりゃどうにかなる仕事じゃなくて、仕事できなきゃまずお話にならないね!
後は言われたことだけハイハイ言ってるのはダメで、自分から提案しないとならんのもある。いや、そうやって改善していかんと終わらんのだ、仕事が!
あー……、それを考えると、うちの子達もそろそろ本格的に鍛えないとなあ。
全員、寝ている間にこっそり肉体改造とかはしておいてあるが、中身……ソフト面もアプデしてやらにゃならん。
まだ全員十三歳?十四歳?ハイスクール生でもないんだから多少は手加減してやるが、二十歳までにプロジェクトリーダーくらいはできないようならリストラか。
「エグザス様?お食事ができましたけど……」
「ん、ああ、悪い。考え事をしていた」
「みんなのこと、ですか?」
「そうだな、次のプロジェクトのこともあるし、経験を積ませてやりたくて……」
「もう、お仕事のことは後で!今はお食事して、休暇を楽しみましょう?」
「……そうだな、家族サービスができないビジネスマンは三流だ」
そう言って俺は、エイダの作ったシリアルを口に運ぶ。
「お、美味いな!食感が良くなってる」
「えへへ、焼く時のオイルを変えてみたんです!そうしたらパリパリになって!」
「へえ、良いんじゃないか?アイスクリームなんかと相性が良さそうだ」
「本当ですか?今度、ショッピングモールでも出してみようかなー?」
食事中は、家族(笑)との大切なコミュニケーションの時間だ。
エイダや、他の女達の精神衛生の為、俺は日常会話をしてやっている。
今更ながら、よく考えれば、この子達ってまだまだ子供なんだよな。
親元を離れてよく頑張ってるよ、おーよしよし。
……こういう風に、マメにコミュニケーションを取ることが、人間関係維持のコツだな。
そりゃ、まともな人間なら友達や恋人を作れるのは当然。
しかし、本当にできる人間は、作った友人や恋人との関係を末長く続けられるのだ。
それで、食後。
二人で食器を洗って拭いて、犬にエサをやる。
そうそう、犬を飼ってるんだよ。
顔の可愛い犬でな、褐色肌のとか白肌のとか、色んな種類のがいるんだ。
前に、プロキシアでメスの犬を一匹もらってからと言うものの、犬を調教して侍らせるのにハマっていてな……。
「わんわん、ご主人様、ご飯ありがとうございますわん。マリーは優しいご主人様に買っていただけて、幸せですわん」
かわいい犬をわしゃーっと撫でてから、俺は外に出た。
元スラムのガキ共に顔見せをするのである。
エイダもついてくるみたいだ。
「「エグザス様、おはようございます」」
アランとベティが出てくる。
「新入りはどうだ?」
そうそう、この前潰したプロキシア共和国だが……。
政権は崩壊したが、港町としての機能は死んでいないので、自由交易都市?みたいなノリで首都の街そのものは存続しているな。
NPO団体と化していたショッピングモールも、有料に戻したぞ。
そりゃあ、嫌がらせの為に全品100%オフにしてやっていただけで、嫌がらせする相手が全滅した今、タダで店を開く必要はない。
当然のように、タダ飯タダ酒が当たり前になっていた現地民達は死ぬほど抵抗したが、「じゃあ死ねよ」ってことでホムンクルスに指示して半分くらいを始末した。
バカなことやってねえで働け!と、俺は言ってやったのだ。当たり前のことだろう、働くなんてのは。
するとまあ、ゴネても殺されるだけだと身をもって理解した住民達は、渋々働き始めた、と……。
と言っても、ショッピングモールではありとあらゆるものが安価で手に入るのは変わりがないから、雇用そのものを作ることに困っているようだな。まあ、俺には関係がない話だ。
「新入り……、とは、プロキシアの子供達、ですよ、ね?」
「そうだ」
「よくやっています。幹部候補、とまでは、いきませんが……」
ふーん。
「ダメそうなのは?」
「見込みがない、ようであれば、放逐します」
ふむ、こんなもんかな。
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こちらも毎日更新は無理。
書き溜めておきます。
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