第75話 ショッピングモール(プロキシア支店)
音速飛行の魔法で空を飛び、ホムンクルスを連れてきて、店員をやらせる。
店は、なんと中心街にある大店だった。
デリートマジックで全て完全に消去して、ジェネレートマジックで超高層ビル型のショッピングモール・アウロラを設置。
電気や上下水道を通して、人員も配置し、商品も置き……。
即座にオープンしたぞ。
売る品目は当然、この街の名産品である「スパイス」「砂糖」「毛皮」「織物」「陶磁器」を中心に、この街に必要とされている「麦」や「獣肉」など。
……これらを、この街の商人が売る額の、十分の一以下で売る。
『ダンピング』と言うやつだな。
利益は少ないが、この街の商人全員を商業的に殺せるので問題ないでーす!
更に言えば、ジェネレートマジックで作った製品は、全てが均一で高品質!船の上で何ヶ月も放置された腐りかけのスパイスや砂糖より、新鮮で高級で高品質で、しかもバカみたいに安い!
他にも、便利なマジックアイテム……まあ家電の類と、娯楽本やゲーム機に新作ゲームソフト、飲食店の類も開く。
さあ、プロキシア共和国の商人共よ。
お前達の大好きな商業で、勝負しようじゃないか!
一週間が過ぎた。
まあ、うん。
流行らない訳がない。
満員御礼、なんて言葉が馬鹿らしくなるレベルで人が来た。
確かに、地元の商人は来たがらないだろう。議員をやっているような商人連中はプライドもあるだろうしな。
だが、ここは港街にして、商業都市。
船からやって来た外国の船乗りや、行商人の類は遠慮なくやって来るし、漁師だの冒険者だのの一般市民達は「安くて品質がいいじゃん!」と、当然のようにこちら側を選んだ。
ネガキャン?無駄無駄。
人通りがとにかく多いからな。
悪い噂を広めようにも、一度客が店に入れば……いや、店構えを見ただけで他とは違うと気付くはずだ。
何せ、平屋や二階建て程度が殆どのこの街で、百五十四階建ての摩天楼。
見た目はドバイにある世界一高い高層ビルのブルジュ・ハリファに似せているが、魔法によるARビジョンで空にクソデカいオーロラとか広告とかそういうのを出しているからな。
まあうん、目立つ。目立つし、こんな凄い神話の建物としか思えないところに、いくらネガキャンされたところで、好奇心を持たない人間はまずいない。
そして、入れば最後。
この店の圧倒的高品質かつ低価格な商品と、素晴らしいサービスに魅了され、誰も帰って来れなくなるのだ。
他にもエグいギミックはバッチリある。
例えば、二十四時間営業。
今までは商人の国だ!と殿様商売をやってきたプロキシア共和国商人達では考えられないだろうな。
昼も夜も明るく光る摩天楼で、二十四時間店舗が開いているだなんて。
ホムンクルスは、俺に来た刺客や、その辺でキャプチャーした盗賊や蛮族を素材にして、魔石を埋め込むことによってできる人型の人造魔物……ある種の召喚獣である。
そのホムンクルスは、モンスターの魔の要素によって、老いることがないのだ。
そして、疲れることも眠ることも、食事も排泄も必要ない。
一種のフレッシュゴーレム(人肉人形)である訳だからな。
そんな社畜……いやホムンクルス達が、徹底的に笑顔で、下手に出て、テキパキ働いているのだ。二十四時間、ずっと。
ホムンクルスは女性型も男性型も両方あるが、どちらも美形にデザイン済み。
なので、この世のものとは思えない美形店員が、粗野な船乗りにも笑顔で応対していると評判だ。
もちろん、ホムンクルスは全員召喚獣で、魔石を埋め込んでいる為に、魔法も使える。護身も完璧、与太者が店に沸いたら魔法で叩き潰すぞ。
あとはアレだな、大食堂。
三十階分は食堂なんだが、そこは食券制の単なる食堂で……。
だがしかし、注文すればパンとスープ、バター、ジャムのお代わりを無料としている。パンとスープのみの注文も可!ウォーターサーバーの水は完全無料で飲み放題!
ジェネレートマジックで作る低品質のパンとスープなんて、地球で言うドリンクバー並みの原価率だからな。限界まで食われても、予算には何らダメージがない。
しかしこれは、貧乏人共の心をグッと掴んだ!
なおこれは、かの有名な、格安でソースライスを提供して貧乏人共の将来性に投資した関西の某百貨店に肖ってのことだ。ほら、「今ここで格安ソースライスを食べている人達も、将来家族を持ったら、ここでソースライスを食べたことを思い出して再来店してくれる!」ってやつ。
この街にもあるスラム街や、寡婦に物狂いなどの貧困層にも、俺は屑鉄貨一枚(日本円で百円未満)で腹一杯になるほどのパンとスープを与えたのだ!
こういう捨てるものがない弱者層を味方にすると、勝手に鉄砲玉になってくれたりしてアドだからな。
普段なら絶対助けないんだけど、今回のメインターゲットはこの国の上位層である議員共なので、下層には優しくしてあげちゃう!
それだけじゃなく、ここのスラムからも、使えそうな子供達を回収している。使えそうなのはビルトリアの屋敷に運んで教育開始だ。
いやあ、カスみたいな原価率のパンとスープを安値で食わせるだけで、貧困層のクズ共は俺を神が如く崇めてきやがるな!面白いね。
他にも、大食いの船乗り達からも食い放題メニューは好評で、彼らは馴染みの店に行かなくなり、ショッピングモール・アウロラ以外での食事を控えるようになった。
当然だよな?アウロラの方が、量が多くて味が良いんだから。
しかも、朝晩の食事も、アウロラの惣菜パンなどで済ますようになりつつあるしな。
……そもそも船乗りは労働時間が安定しない為、二十四時間開いている食堂は大助かりってこともあるだろうが。
行商人への卸売もやっている。
高級な絨毯?織物?絹?全部うちが売っている。
この街の業突く張りな商人に高い金を出して買わずとも、高品質で低価格な奢侈品が山ほど手に入るのだ。買わないバカはいない。
仮に、知り合いとの関係がどうとかそう言う話があったとしても、利益が何倍にも上がるとなってくるなら、必ず裏切る。商売のパートナーを裏切って、安くて高品質なうちの商品を買っていく。この世界はその程度の道徳観しかないからな!
それと……、ショービジネスや風俗にも手を出した。
所謂、高級クラブとかキャバクラみたいなもんだな。
美形のホムンクルス達にバニーガールやら何やらのエッチめな格好をさせて、ネオンの薄明かりのついたステージでポールダンスとかやらせてんの。
この世界の人間……、特に俺に対しての刺客として送られて来たような奴らは、身体能力が高かったり、表向きの職業として歌手や踊り子だったりする奴が多かったから、覚えさせるのに苦労はしてない。元となるデータがあった訳だからな。
そうして、桃色紫色のネオンの光、エッチな雰囲気で歌って踊る美人ホムンクルス達、うまい酒とつまみを出すクラブは、船乗りとかそういう連中に大いにウケた。お忍びで外国の貴族やら、性欲を抑えきれないこの国の議員まで、幅広い連中が集まったな。
ビルトリア王都のショッピングモールは俺の本拠地のすぐ側だから、助平親父共に大量発生されたら嫌なんで、このいくらでも治安が乱れていい外国でそういうビジネスを実験的にやるぜ!ってことだな。
え?性奴隷を集めて娼館を……?
アホか?オーガニックな美女を探す為に奴隷ガチャ回すくらいなら、その辺の悪党という名の材料を使って全てにおいてパーフェクトなホムンクルスを量産した方が早いし安定するんだわ。
俺は悪いことがしたいんじゃない、最大効率で他人が吠え面かくところを見たいだけなんだ……!
そんな訳なので、しばらくこうしてこの国の産業を破壊して遊んでいたら……。
……「新しい法律だ!この国で外国の商会が営業する場合は、この国の議員の認可と、役員入りを認めなくてはならない新法ができたぞ!」
と、公示人……ああ、ニュース喋るマンさんが言っているのを見かけた。
ははーん?なるほどね?
中国みたいに、権利の半分以上を国に寄越して、国の人員を経営陣に入れないと、営業を許可しないぞ!ってことか。
資本主義国家が国是を曲げてまで、共産主義国家になってまで、俺を潰したい、と……。
死にたいらしいな。
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