第74話 いつものソフトリョナ

「拷問を受けた経験はあるか?あるよな?暗殺者だもんな、訓練なんかもしているはずだ」


俺はそう言いながら、力場の魔法で縛られている暗殺者女の身体に手を這わせる。


ふむ……、よく鍛え込んでいるな。


筋肉で胸は薄めだが、よく引き締まった腹に腰周り、太ももも太くてしなやか。


顔つきも美しく、切れ目の黒髪美女って感じ。


ホムンクルスのいい素材にもなりそうだが……、折角なら俺の犬にするか。


「……屈するとお思いですか?私は訓練所で何度も拷問の訓練を受けた精鋭です。やるならやりなさい!」


キッ、とこちらを睨みつけながら、強い言葉で拒絶する暗殺者女。良いねえ!これアレでしょ?「くっ、殺せ!」みたいなやつでしょ?テンション上がるなぁ〜!


「おーおー!勇ましいね!好きになっちゃいそうだ!」


俺はそう言いながら、ある魔法を展開した。


「君に受けてもらう拷問は二つ。『痛い』のと、『痛くない』のだ。説明はいるか?」


「いりません!」


「よぉし!じゃあ説明しよう!……まず痛いのだが、前置きとして、人間はどうやって痛みを感じると思う?」


「……」


「答えは、神経だ。身体中に痛みを感じる神経が血管のように張り巡らされていて、そこにダメージを受けると痛いという信号が、脊髄を通って頭に届く。そうして初めて、人間は痛みを感じる訳だな」


で、あれば。


「そこで俺は考えた!『人工的に合成した痛みの信号を、ありったけ脳に届けたらどうなる?』とな?つまり、身体は怪我ひとつしないが、心には無限の苦痛が、この世のものとは思えぬ苦痛がくるんだ」


「ひっ……!」


「さあまずは一分間!痛覚十倍で行ってみよう!」


魔法発動。


「あーーーッ……?!!?!?!ぎい、あああああああああああ!!!!!!!いぎいあああああああああ?!!!!うぎゃあああああああ!!!!!あああああああああーーーーー!!!!!!!」


おお、かわいそうに。


暗殺者女は、この世の終わりみたいな悲鳴を上げつつのたうち回り、失禁して白目を剥いて口から泡を吹いている……。


涙と鼻水で美しい顔はぐちゃぐちゃ。クールな切れ目も限界まで見開いて、クソまで漏らしている。


美人にこんなことをするのは辛いが、まあ、敵だからなあ。


一分で痛みを止めてから、俺は女の方を見た。


「どうだった?感想を聞かせてくれよ」


「はっ……、はっ……、ころ、し、てやる……!」


おー、まだ折れていないか。


訓練したってのはマジなんだな。


だが次はもっと辛いぞ?


「じゃあ次、痛くない拷問について説明しよう。さっきは痛みを与えたな?だが次は痛くないし、それどころか、臭くも痒くも何もない」


「……は?」


「人間には五感というものがある。視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚。これが、人間が感じる感覚の全てだ」


「……」


「今回は、それを全てなくす」


「な、にを……?!」


「そうすることにより、何も感じず、何もできない虚無の中に幽閉する訳だな。おまけに、時間感覚も千倍に引き延ばしてやろう。では行きましょう、まずは一分から」


「や、やめっ……!」


はい、脳神経遮断。


すると女は、ぴくりとも動かなくなった。


小宇宙でも感じれば出てこれるんじゃない?


その間に俺は、乱れた着衣を整えて、髪に櫛を通して身支度した。


そうすると、すぐに一分が過ぎる。


なので、起こしてやった。


「っあ……、あああ、あああああ!」


はっ、と。目を覚ましたかのように飛び起きた暗殺者女は、安心のあまりに情けない声を出す。


そして、キョロキョロと周りを見て、息を吸って、自分が生きていることを、感覚があることを確認しているようだった。


「どうだった?楽しかったか?」


「も、もう、やめて!やめてぇ!なんでも言うこと聞くからぁ!!!」


「おー!良いね!だがまだ頭が高い。なんでも言うことを聞くのは当たり前だろクズが。もう一周痛いのから行くぞー。痛みは二十倍!虚無の体感時間は一万倍にしてやるよ!」


「もうイヤァァァ!!!!」




そうやって美女を痛めつけていると……、最後には。


「えへ、えへ、えへへへへ……。わんっ、わんわん、わん……。マリーは犬です、マスターの言うことを何でも聞く犬ですぅ……!」


と、非常に聞き分けの良い犬になってくれた。


調教が完了したので、俺はマリーの頭を撫でてやる。


「良い子だ、マリー。俺についてこい」


「わんっ!分かりましたぁ、マスター!」


さ、て、と。


美人暗殺者女を虐めるのが割と結構楽しく、幹部共を見てなかったが……?


「う、動くな!こいつらがどうなっても良いのか?!」


おっと、黒豚。


見ると、黒豚は、フランちゃんを捕まえて喉元にナイフを翳している。


「どうなっても良いよ、直せるし」


俺はそう言って、歩みを進める。


「〜〜〜ッ?!!!い、異常者があああっ!!!」


そう言って、フランちゃんを投げ捨てて逃げようとする黒豚だが、逃す訳がない。


「行けっ、犬!」


「わんわんわーーーん!!!」


犬、暗殺者女のマリーが即座に捕まえた。


「き、貴様!裏切るのか?!」


「裏切る……?マリーは難しいこと分かんないですわん。マスターの言われたことをやれば、『いたいの』も『まっくら』もないって約束してもらえたわん。それ以上に望むものはないわん」


そうして、マリーによって捕まった黒豚に、俺は『首輪』をかけてやった……。


「この首輪は返礼だ、ありがたく受け取れ、黒豚」


「な、にを?」


おもむろに俺は、同じ首輪を机の上に置き……、指を鳴らす。


すると首輪は爆発した!


そう、『首輪爆弾』である!


顔を青くする黒豚に、俺は言った。


「じゃあ、館の権利書と商店の権利書、全部持って来ようか?」


と……。




そうして、俺、アウロラ団『導師』のエグザスは、黒豚上院議員に快く店と屋敷の権利の全てを譲ってもらった。


なので早速、店の土地を一つに集めて、大型のビルを建てた。


スーパーマーケット・アウロラ、プロキシア共和国支部である。


後は分かるな?

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